姫様の夢 その6
詳しく聞くと、ある日お父さんが敵に捕まり人質にされてしまって、勿論政宗様は助けようとしたんだけど、結局は敵ごとお父さんを討たなければならなかったそうだ。
他に道が無かったのだろうか、そんなことを考えただけでも、政宗様を傷つけてしまう。
仕方が無かったんだ、生きるか死ぬかも分からない、厳しい時代なんだから。
でも、気が強いお母さんは政宗様に責任を押しつけたんだろうな、と想像する。
オレの行為はおせっかいだったのかな。
どちらもトラウマになっておかしくない話なのに、それを他人が勝手に掘り返すなんて…過去の克服以前の問題だ。
「桜…、ごめん、無理言って悪かった」
「…いや。物事は良い方向に進んでいるはずだ。今は、な」
「……、」
桜って、自然に笑えるんじゃん。
ぎこちないけど、はにかんだような笑みを浮かべてくれる。
繊細すぎたんだよ、桜は。
それでいて臆病で、寂しいくせにガードが高いから近付けない。
わざわざ誤解されるような態度をとり続けて、自分の心に嘘をついて…、ずっと、苦しかっただろうな。
「政宗様さ、幸村様のこと好きなんだってね」
「…ああ。独眼竜は哀れだな。いくらでも相手はいるだろうに…幸村様のような鈍い方に恋をしてしまったのだから」
おっ、否定しないのな。
しかも政宗様に同情している。
いや、オレもそう思ってしまうんだけど。
「あの独眼竜が、どのようにして幸村様の心を掴むか…それこそ見物だと思わぬか?」
「一方通行なのが目に見えるんだけど…」
「それもまた良かろう。すぐに結ばれては面白味がない」
何て言うか、意外だ。
桜も恋の話が好きなんだな。
他人には興味が無いと見せかけておいて、実は人間観察が趣味ですって感じ?
恋は難しいな、専用の教則本も無い。
身分も、性別も…、ちょっとしたことで障害が生まれて上手くいかない、思い通りにならなくてもどかしいのが、恋なんだ。
政宗様達は身分と置かれている立場のせいで、自由な恋愛を望むことは出来ないはずだ。
愛も恋も二の次で、国の繁栄のため、相手を選ぶ権利も無しに、結婚をしなくてはならない。
オレは、考えが甘いのかも。
でも、みんなに笑っていてほしいんだ。
つらいことばかりじゃなくて、生きていればたまには良いことだってあるだろ。
これだけは言える。
政宗様の幸せには、幸村様が必要なんだ。
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