凍れる人形



「アンタは自分で居場所を無くした。今更愛を求めるのか?お優しい誰かさんに縋るって?反吐が出る!俺も真田も、アンタのことが嫌いだ」


確かな一言を、突き付けられてしまった。
ここまでくると信じられない。
相手が傷付くと分かっていて、どうしてそんな台詞が言えるんだ。
政宗様は本気で桜のことが嫌いかもしれないけど、この状況で幸村様の名前出すなんて、卑怯じゃないか。

襲ってくる気持ち悪い感覚をやり過ごすため、手のひらに爪を立て、痛みで気を紛らわせる。
桜、違うんだよ。
こんな酷い言葉の羅列、戯れ言だって笑ってやれよ!

桜は変わろうとしているんだ。
個人の感情で邪魔するな!
オレが桜に協力するのは自分の意思。
誰かに頼まれたからじゃない、オレが桜といたいと思ったから…!


「さっ…最低だべ!あおいおさむらい、見損なっただ!」


突如響いた、方言が特徴的な少女の声。
見れば、ミニスカート(に見えたけどよく見たら違う)の可愛い女の子が、政宗様の股間目掛けて跳び蹴りをくらわせていた。
オレも男だし、その痛みをよく知っているから、少し政宗様に同情してしまった。
どんなにムカつく人が相手でも、そこを狙っちゃいけない。


「っ…いつきか?」

「女の人を泣かせるなんて最低がすることだ!ねえちゃん、何されただ?い、いやらしいことか?」


な、何をおっしゃる!されてたまるか!

確認するように目元に触れたら…ぼろぼろと涙が流れていた。
指摘されるまで気付かなかったのは、これが桜の流した涙だからだ。
オレは怒りで血管が切れそうになったけど、桜は…悲しかったんだな。


「そう、政宗様にいじめられたの。酷いよねぇこの人」

「いじめられただか!?ねえちゃん、可哀想だべ!やっぱりおさむらいは…」

「shit!いつき、その姫の言うことは嘘だ。俺を信じろ」

「いやだ!女の子の敵はおらの敵だ!」


いつき、ちゃん?君はなんて優しい子なんだ…!

嘘じゃないもんな、一応。
桜を泣かせたんだから、少しは反省するべきだ。


 

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