茅捺様
†リクエスト内容
趙雲。
愛し過ぎた夢主。
それを愛する趙雲。
若干狂愛。 私は欠陥品だ。
物心いた頃から親に耳が痛くなるくらいに言われたし、自分でも自覚している。
だって、普通の人間は。
人を絞め殺すその感触に興奮を覚えたりなんてしないでしょう?
だって、普通の恋愛は。
相手をこの手で絞め殺してしまいたいなんて思わないでしょう?
私が彼――――趙雲さんと出会ったのは、私の精神異常を恐れた親に冀州を追い出され、徐州の下邱に辿り着いた時。
飢えと疲労で門の前で意識も朦朧として倒れ込んだ私を抱え上げ、医者に見せてくれたのが趙雲さんだったのだ。抱き上げられた時の腕の感触は、今でもはっきり覚えている。
何日も昏睡状態で、目覚めた瞬間彼が私の視界に入った瞬間、私は生まれて初めて恋に落ちた。
恋がこんなに心を縛るモノなのかと初めて知った。
以来、私の頭の中は趙雲さんで一杯だった。
その真ん中にあるのは、いつだって狂った《欲望》。
この人を殺したい。
この人を殺したい。
殺して興奮したい。
きっと未だかつてない興奮を得られると思うの。
それが知りたくて実感したくて身体が震える。
そんな私を、彼は知っている。
奇異な話もあるものだ。
狂った欠陥品の私を彼は妻に乞うた。
彼も随分と思考のおかしい人間だったらしい。
「お早う、○○」
「お早う、趙雲さん」
「俺はまた、絞められようとしていたらしいな」
「ええ」
そっと、しかし強めに手を彼の首から離される。
清々しい朝だ。
外では小鳥が梢に停まってさえずっている。
そんな光景が窓から見える寝室で、私は寝台に寝る趙雲さんに馬乗りになっていた。
――――彼を絞め殺す為に。
趙雲さんは苦笑混じりに上体を起こす。長い髪がさらりと動く。女の顔負けの艶を持ち、指通りも滑らかな髪が、私は好きだ。ああ、絞め殺したらこの髪は切り取って保存しておこう。毎日見たって飽きないし、何より彼の一部なのだ。
「死ぬ前に起きれて良かったよ」
「私は残念」
「だろうな」
にっこりと笑って、まるで悪戯をした子供を叱るように額を小突く。
本当に、変な人。
私は異常なのに、欠陥品なのに、隙あらば殺そうとしているのに、どうして妻にしようと思ったんだろう。どうして私なんか好きになったんだろう。
本当に、不思議な人。
「朝餉、出来てるよ」
「ああ。すまないな」
「ううん。美味しくなくてむしろこっちがごめんなさい」
「そんなことは無いさ」
扼殺(やくさつ)以外は嫌いだ。
毒殺は殺したって感触が無い。
刺殺は身体が血で汚れる。
溺死なんて論外。
他も色々あるけれど、やっぱり手で絞め殺す方が良い。絞める時の抵抗と、喘ぐ顔、咽の感触――――全てが私を興奮させる。それが趙雲さんだったらどんなに素晴らしいことだろうか。
だから、彼は私が調理した物は警戒せずに口にする。
「そう言えば、今日は関羽達と遊びに行って来るんだったな」
「ええ。劉備さんが花を摘みに行こうって」
猫族の人達も、大概変だ。
彼らも私の精神を知っているのに、何故か友達だからって色んなことに誘ってもらってる。お陰様で、人を殺す暇も無い。動物を絞め殺して無理矢理自分を満足させる日々だ。けれど、それすらも最近は出来ていない。こうして、毎日のように遊びに行くからだ。
でも私が本当に殺したいのは趙雲さんただ一人。
殺したい。
殺したい。
殺したい。
「確か昨日は関定達と釣りに行っていたんだったな」
朝餉前に趙雲さんの着替えを手伝っていると、不意に思い出したように問いかけてきた。
「何も釣れなかったけれどね。それがどうかした?」
「いや、最近○○と過ごす時間が減っているような気がしてな」
「……ああ、言われてみれば」
でもそれは多分私に趙雲さんを絞め殺させない為。
好きな人を自分の手で絞め殺すのって、とっても素敵なことだと思うんだけどな。どうして理解されないんだろ。
ふと趙雲さんを見上げ、その首に手を伸ばした。
が、直前に握られてしまう。
「何で私を娶る気になったの?」
「○○を愛したからに決まっているじゃないか」
「じゃあ、どうして絞め殺されてくれないの?」
「それは俺が困るからだ」
ぐいと引き寄せられ、視界が回る。
直後背中に感じた衝撃に息が詰まった。
ついさっきとは逆の状況だ。
趙雲さんが私に馬乗りになっている。
私はまた彼に腕を伸ばそうとして趙雲さんに握られ床に縫いつけられていることに気が付いた。ああ、まだ解放されていなかったみたいだ。
趙雲さんは笑って、私に噛みつくような口付けを落とした。
「んっ」
「確かにお前の手に掛かるのも悪くはないが、死んでしまったらこういうことも出来ないだろう?」
「あ……」
手が解放される。
彼の手は私の腰を撫で、足を撫でる。
昨日したばかりではないか。
そう言おうとした口はまた塞がれる。
「俺も、相当お前に囚われているらしい。だが俺は、簡単には殺されてはやれないな」
「……絶対に絞めてやる」
「ははは」
彼は笑って、私の首筋に顔を埋めた。
ああ、これでは関羽達と遊びに行けないかもしれない。
震える吐息を漏らしながら、私は手を伸ばす。
今度は首を絞めるのでなく、背中に回した。
そして意趣返しのように、爪を立てるのだ。
●○●
茅捺様リクエストです。
好きすぎて趙雲を殺したい夢主ですが、それも理性のうちです。
趙雲も上手くかわしています。
……ちゃんと愛のある夫婦ですよ。ちょっとズレてるだけです。夢主の頭の何処かがちょっと。
茅捺様、この度は企画にご参加いただきまことにありがとうございました。
お持ち帰りは茅捺様のみとなります。
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