3
日向に、飛び出してしまう。
「あなた、は……私とは違う。日の下に生きる方……ですから」
「ならばお前も出れば良い。恐いなら、俺がしっかりと手を握っていよう。何があっても、お前を守ろう。だから、俺と共に洛陽を出よう。右北平に、戻ってくれ」
親指で、いつの間にか濡れていた目元を拭われる。
けれど涙が堰(せき)を切ったように溢れ出してしまうのだ。
私はこの人のものになりたい――――……。
それが、胸を、頭を占めていく。
嗚呼。
駄目だ。
もう。
想いが膨れ上がっていく。
抑えられない。
抗えない。
「俺の名は、趙雲。お前の名前は?」
「……○○、です……」
「○○。俺はお前を、妻に迎えたい」
彼が――――趙雲様が、顔を寄せてくる。
私は、逃げることが出来なかった。
逃げるには、私はもう、自分の想いに雁字搦(がんじがら)めにされていたから。
日向の存在に包まれる感覚を、涙を流しながら享受(きょうじゅ)する――――。
‡‡‡
その日。
数人の下女と共に商家の妻が洛陽から姿を消した。
報せを受けて急遽帰宅した夫は髪を振り乱し、必死の形相で洛陽の街を妻の名を叫びながら走り回ったという。
妻は、とうとう見つからなかった。
→後書き+レス
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