▼露乃様
地獄のような夢を見た。
いや、これは夢ではない。
現実だ。
由々しき事態である。
現実で、憧れの師匠が十三支の男と隣り合って街中を歩いているのである!
その仲睦まじい様子に足下が崩れていくかのような絶望を味わわされた。
偶然目撃してしまった夏侯淵は、即座に夏侯惇にもとへ走った。
夏侯惇は、師匠が常々十三支に偏見を持っていないことで頭を悩ませていたが故、夏侯淵程の動揺は見せなかったが、二人のことが決して気にならない訳ではない。
すぐに職務を放棄して市街に駆け出した。
敬愛する主、○○はすぐに見つかった。未だ、十三支の男――――張世平と並んで店を回っている。
何ということだ!
二人は見た瞬間に間に入って中断させようとした。
が、しかし。
「ちょぉっと待った!!」
「ぐっ!?」
誰かが、夏侯淵の襟首を掴んで引き止めたのである。
勢いそのままに首が絞まり、夏侯淵は一瞬意識が飛んだ。解放されて崩れ落ちたのを夏侯惇に支えられた。
夏侯惇は夏侯淵を引き止めた人物を眼光鋭く睨めつけ、唸るような声を上げた。
「十三支……まさかあれは貴様らの差し金か!?」
夏侯淵を襟首を掴んだのは張飛。
その後ろには関定、蘇双、そして何やら申し訳なさそうな関羽がいる。
関定が何かを言おうとしたのを遮り、関羽が取りなすように説明した。
「ち、違うのよ。二人共。わたし達も張飛が見かけて、ついさっきここに来たの。○○のことだから大きな問題にはならないと思ったんだけど……」
「いよいよ世平に春到来! かもしんないのに、オレ達が覗か――――応援しないなんて有り得ないだろ!!」
「今まで関羽や劉備様の為にばかり気を配ってきた人だからね。手遅れにならないうちに」
「皆が、こんな調子で……わ、わたしはそんなのじゃないって言ったのよ。でもどうしても見届けに行くって聞かなくて……」
もし夏侯惇達が居合わせたら衝突してしまうのではないか。関羽はそれが心配で関定達についてきたらしい。
関羽は二人がどうして街の中を並んで歩いているのか、関定達のような都合の良い自分勝手な妄想をしてはいない様子である。
だが、そんなことは関係ない。
どのような理由があろうと十三支と師が共にいて良い訳がないのである。毎度口を酸っぱくして諫めているというのに、○○はちっとも聞き届けてくれない。
問題が極まって十三支に加わるなんてことになれば――――嗚呼、想像したくもない。
嫌な未来が頭に浮かびかけて、夏侯惇はゆるりとかぶりを振った。
「ともかく。貴様ら如き賤(しず)の種族が我らが師――――いや、人間と対等であるなどと思い上がるな。俺達は認めない」
「……んだとぉ? ○○のあれこれを勝手に決め付けんじゃねーよ。そっちだって思い上がるなとか頭が堅いとかって○○にいっつも拳固食らってるじゃんか!」
「しかもこの間は女装させられてたよね。良い年した男のくせに」
嫌な記憶を冷たい顔で呼び起こされた。
夏侯淵は顔を真っ赤にした。
「ぐ……っう、う五月蠅い!! それは○○様がオレ達の精神を鍛える為に……!」
「いや、違うって言ってたけど。なあ、張飛」
「そろそろ本気であいつら破門するべきかって悩んでたけど。なあ、蘇双」
「頭が堅すぎて広い見方もろくに出来やしないのが、嫌なんだってさ」
「な……っ」
わざと抑揚を消し、流れるように代わる代わる放たれた猫族の言葉に、頭に岩をぶつけられたかのような衝撃を受けた。
夏侯惇は青ざめ、無意識に剣の柄に手をやった。
それに張飛が反応。体術の構えを取り闘気を漲(みなぎ)らせる。
一気に緊迫する空気に関羽は慌てて間に入り街中を指差した。
「ほ、ほら! こんなことをしている間にも二人が行っちゃうでしょう!」
二人が丁度角を曲がるところであった。
○○の横顔は、いつになく和んだ笑みで、夏侯惇達もあまり目にする機会の無い類の表情であった。
全身が、冷えていく。
まさか、本当に……!?
「○○様……!!」
「ね? 早く行かないと見失ってしまうわ!」
「大丈夫、オレ達がしっかり見守っとく!」
「そっちは勝手にやってれば」
「え? あっ、こら、待ちなさい! 二人に気付かれたら怒られるわよ!」
先に駆け出した関定と蘇双を、関羽が慌てて追いかける。関羽だけは、何とか事態を荒立てないように必死の体である。
遅れて張飛も身を翻して追いかける。
完全に後れを取った夏侯惇達も、狼狽(うろた)えながらも追いかける。
角を曲がったばかりの二人は、雑踏に紛れて所在が分からなくなってしまった。
悔しがる関定に、関羽は「やっぱりそっとしておいた方が良いんじゃないかしら」と。
しかし、関定は首を縦に振らない。
「関羽だって世平が嫁を取ったら嬉しいだろ!? 特に○○と関羽は仲良いんだし、関羽だってこの二人がくっつくんだったら応援したいだろ!?」
「う……っ」
関羽は言葉に詰まり、視線をさまよわせた。
その側で「そんな過ちがあってたまるか!」夏侯惇が怒鳴るが、関羽の耳には入らず、難しい顔をして考え込む。
「そ、それは……確かに、二人が恋人同士になれるなら凄く嬉しいし、その……応援したいなとは、心から思うけど……でも、」
「ほら! 関羽だってそうなんだから、このまま見届けようぜ!」
「ちょ、ちょっと関定!」
「おお、世平と○○発見!」
ずびし、と前方を指差した関定は、何かに驚いたように動きを止めた。
ある建物から出てきた二人。
○○が、布に包まれた細長い物を世平に手渡している。
夏侯惇と夏侯淵の顔と聞いたら、とても言葉では形容しきれない。
目の前の光景を見ていた蘇双が、呆れ返った。
「うわ……○○から贈り物って……世平叔父、無い。それは、無い」
「普通贈り物は男からだよなぁ……」
「ふ、ふざけるな! そんな汚らわしい物、○○様に持たせられるか!」
夏侯淵が吠える。
「世平からは駄目で○○からなら良いのかよ」
「あれは○○様の温情だ。哀れな十三支に同情して、贈り物をされたのだ。十三支は優しくしてやればすぐにつけあがるから困る」
「何だとー!?」
「ああもう! 二人がまた何処かに行ってしまうってば! それに、こんなに騒いでいたら見つかるでしょう?」
関羽が窘(たしな)めると、先程見失ったばかりの彼らはうっと口を噤(つぐ)む。
渋々、睨み合いながら○○達の後を尾行する。
関羽ははあ、と溜息を漏らした。
彼女の胸中には、疑念が渦巻いている。
○○は、関羽のことを良く気にかけてくれる。
混血だと見抜いていたところを見ると、猫族とは初対面なんて嘯(うそぶ)いてはいるが、きっと猫族について人並み以上に知識がある……と、関羽は思っている。
○○は不思議な女性だ。いつも飄々として、掴み所が無い変人として扱われるけれど、時折刃その物のように鋭く張り詰める。
かと思えば弟子達のことをいつも良く見守っていて、小さな癖さえ把握している面倒見の良さを持つ。
関羽に、○○は色んなことを話す。
その話の内容がまだ記憶に残っている関羽にとって、世平と○○が夫婦になってくれたら願ってもないこと、だからとても嬉しいと思う反面、どうにも納得出来ずに首を傾げてしまうのである。
これが気の所為だったらどんなに良いか……と人知れず溜息も何度も出ている。
関羽も、自分が思う以上に○○に懐いているのである。
でも、○○のあの話、嘘ではないと思うし。
でも、でも、でも――――。
ううぅ……と、心の中で板挟み。
「姉貴? 何かすっごい顔してるけど……?」
「え? そ、そう?」
張飛に指摘されて、咄嗟に顔を押さえる。
そこで、はたと関定や夏侯惇達の姿が側に無いことに気が付き青ざめた。
「ちょっと、張飛……四人は何処に行ったの……?」
「丁度今夏侯惇と夏侯淵がもう耐えられないっつって飛び出したのを、関定達が止めに行ったぜ? オレもついて行こうと思ったけど、姉貴が何か変な顔でぼーっとしてたから……」
……。
「……ご、ごめんなさい! わたし達も急ぐわよ!」
関羽は大わらわで、張飛と共に駆け出した。
が――――。
「なぁにこそこそやっとんじゃ馬鹿弟子共がああぁぁぁっ!!」
「あっ」
「あー……」
○○の怒号が轟き道行く人々が驚いて身体を震わせた。
それだけで関羽と張飛は足を止め、一度顔を見合わせた。
行きたくない。
だが、行かない訳にはいかない。
怖いが仕方がない。見捨ててもどうせあの二人には分かることだ。大人しく降参して姿を現した方が無難である。
二人は渋々再び四人を追いかけた。
追いついた先。
夏侯惇と夏侯淵が地面に伏し、蘇双と関定が正座させられている。
その奥には、腕を組んでこめかみを痙攣させている○○と、呆れ顔の世平が立っていた。
関羽は、頭を抱えた。
‡‡‡
自分達をつけている気配には、どちらも気が付いていた。
しかし○○は面倒だからと無視することとし、そのまま自分の用事を済ませようと街中を進んでいた。
そして用事を終えた今、○○は遠慮無く四人に拳固を落とした。特に弟子には死なない程度の加減しかしていない。
「ったく……毎度毎度、あたしの逆鱗に触れやがってよぉ……何遍言ったら分かるのか。難しいことなんぞ言ってねえぞ、あたしは」
「あ、あの……○○……」
「ああ、どうせこいつらが世平殿と歩いてるのを見かけて、恋の逢瀬だとでも勘違いしたんだろ? 残念ながら、あたしは一生、誰ともそういう仲にはなりゃしないよ。関羽にも、あたしが生涯武将一筋だって言っただろ?」
茶化して言う○○に、関羽は残念そうな色を残しながら納得する。
「そ、そうよね……わたし達の勘違いだったのよね……ごめんなさい。迷惑をかけてしまって」
「良いよ。気にすんな」
○○は肩をすくめ、にっこりと笑って見せた。
「じゃあね。関羽。また今度、劉備と一緒にのんびりお茶でもしような」
「あ、え、ええ!」
○○はひらりと片手を振り、弟子達の首根っこを掴み引きずりながら曹操の屋敷の方へ帰って行く。
関羽は謝罪を込めて彼女の後ろ姿へ頭を下げた。……ちょっとだけ、色んな場所に身体をぶつける夏侯惇達に、同情した。
「……まったく。お前達は……」
「悪ィ……おっちゃん……」
「ようやっと世平叔父に春が来たと思ったのに……」
世平はこめかみを押さえて溜息をついた。やれやれと言わんばかりに首を左右に振る。
「誘ってきたのは○○だが、それは夏侯惇達とお前達の乱闘で折られた俺の剣を、あいつが買って返してくれるからだ。そのことは前以て相談されていただろう。お前達の目の前で」
呆れながら言うのに、関定と蘇双、そして張飛はばつが悪そうに顔を歪め視線を逸らした。
「あ……あー……そう言えば、そんなこともあったようなー……」
「……忘れてた」
また、世平の溜息。
「わ、悪い……」
「まあ、○○はこの程度で気分を害す奴じゃねえ。が、今度、お前らからしっかり謝っておけよ」
「「「はい……」」」
四人揃って、世平に頭を下げる。
世平は、苦笑を浮かべ最後は全員の頭を軽くはたくに留めた。
悄然(しょうぜん)とする彼らから視線を外し、いまや小指の先程にも小さくなった○○の後ろ姿へと向けた。
世平にとって、この機は有り難かった。
ずっと胸中にくすぶる疑問を払拭出来る絶好の機会だと思った。
何故、○○は猫族に親しく接するのか。
単に偏見が無い、柔軟な思考を重んじる、などと言われてもこちらは納得がいかぬ程、彼女は猫族に寄り添う。彼女の性格が性格だ、何か裏があると勘ぐってもいた。
この疑問を、世平は道すがらそのまま○○にぶつけた。○○相手に遠回しにする意味も必要も無い。
○○は、意外とさらりと答えた。
その時のことを、世平は思い返す。
‡‡‡
「あたしが、どうして猫族贔屓なのかって? そりゃあ、哀れな混血の子供を知ってるからだろうねえ」
あっけらかんと答えた○○は、肩をすくめて意地悪げに口角をつり上げて見せた。
世平は思いの外簡単に得られた回答に軽く肩透かしを食らった心地だったが、彼女の答えに引っかかるものがあった。
「哀れな混血の子供……? 関羽の他にも混血がいるのか?」
「ああ。いるよ。ただ、事情が事情だから教えられないがね。……まあ、他にも、夏侯惇達の視野拡大の為っていうのもあるけど」
「それは、お前が頻繁に夏侯惇達に言っていたから、俺達も耳にしている」
夏侯惇と夏侯淵は頭が堅すぎる。視野が狭すぎる。
彼女はよくそんな愚痴を言う。
自らが猫族に接していれば弟子達も絡む。そして接触の果てに師の望む成長をしてくれれば――――と、○○は求めているのだ。
師匠として、弟子の将来を見据えて指導する。当たり前のことだが、これが難しい。
師匠も人、弟子も人。思うように事が進まない。
夏侯惇と夏侯淵が、望むような成長を遂げるのは、世平の目からも遠い未来だ。永い時をかけて人間社会に刷り込まれた偏見は、そう簡単に拭い去れやしない。
「諦めたらどうだ。猫族に対する認識は、そう簡単には消えないんだぞ。それに――――」
○○は片手を挙げて制した。
「だからこそだ。だからこそ、あいつらは柔軟に、視野を広くして世を生きなければならない。家臣は皆、同じ方向を向いていてはいけない。それぞれありとあらゆる方向を見渡し、どんな情報も受け入れ正しく精査する。そして同時に、主と同じ方向も向いてはいけない。主の過ちは家臣が咎めなければならん。ただただ付き従うだけならそれは忠義ではなく妄信。二人が操ちゃんの家臣として乱世を生きていく上で、この違いは確実に未来を分ける重要な選択肢となるだろう」
「だがその時はお前が正してやれば良いだろう。長い目で見てやった方が……」
「あたしが死なないとどうして断言出来る? 病で死ぬかもしれない、戦場で討たれるかもしれない、……操ちゃんや弟子に首を斬られるかもしれない」
最後は一際低い声で告げられた。
世平が顔色を変えるのに、はっと鼻で笑う。
「この乱世、何が起こるか分からない。なら、何が起こっても不思議じゃあないのさ。あたしが曹操の生き方に異を唱えて殺される、そんな未来も、有り得ない話じゃないだろう?」
「お前は……」
○○は、にやりと笑った。
「こちとら、この道行く為に色んな宝を自分の手で壊してきたんだ。あたしが選んだ道が間違っていないと彼らに証明する為にも、命を懸けて徹底的に操ちゃんの覇道の為に生きていく所存さ――――と」
ぼぎり。
そこで彼女は拳を鳴らし手足を止める。
その動作で、世平は察した。
そろそろ後ろの団体の相手をするようだ。
溜息をつき、身を翻して駆け出す○○を見送る。
「なぁにこそこそやっとんじゃ馬鹿弟子共がああぁぁぁっ!!」
○○の怒号が、夏侯惇達の声を打ち消した。
世平は後頭部を掻き、その脇で怯む甥達へ近付いた。
‡‡‡
起きた夏侯惇達は、まず全身の痛みよりも全身に感じる冷たい殺気に硬直した。
恐ろしくてその殺気を辿れない。殺気の主が誰であるか分かるが故に、現実から目を背きたい心境であった。
しかし、ここで彼女を見なければそれもそれで恐ろしいことになる。
どちらがましか……などと、考えるまでもないこと。
夏侯惇は夏侯淵と顔を見合わせ意を決して同時に首を巡らせた。
直後、更に殺気が増した。
冷たいだけではない。これはもはや凶器だ。常人であれば確実に殺せる無情な程鋭利な殺気であった。
夏侯惇は乾ききった口を動かし、
「○○様……」
やっとのこと、師の名を呼んだ。
○○はそこで一旦は殺気を収めた。
が、代わりに浮かんだ微笑みは、身の毛も弥立(よだ)つ程におどろしい。
「いっつもさぁ……あたし言ってるよねえ。何事も偏った見方をするなってよぉ」
「しかし○○様! 十三支など――――」
「何の為にあたしがあんたらに言っていると思う? あんたらの将来の為だ。そんな風に常識に囚われたままだから塵同然に弱いんだといい加減自覚しろ馬鹿弟子共」
溜息をつき、うなだれる弟子を見下ろす。
されどもふと、「良いことを思い付いた」と口角をつり上げた。その笑みたるや、曹操すら退くであろう悪意の極み。
「分かった。じゃあ、二人に特別訓練を行ってやる」
「! ほ、本当ですか!」
顔を上げた夏侯惇は、次の瞬間血の気が失せた。
夏侯淵も、やや遅れて同様の反応を見せた。
「……○○様。何なんですか、その笑顔は」
「ん? だから、良い訓練を思い付いたから、二人が喜ぶだろうと思うとお姉さん、もう嬉しくて嬉しくて」
「いや、そんな顔してな」
「あ゛?」
「何でもありません」
○○の一瞬の睨みに、夏侯淵は口を噤まざるを得ない。
萎縮する弟子達に満面の笑みを浮かべながら、○○は告げた。
「明日から十日、女装して猫族の誰かと行動しろ。些細でも諍いを起こしたら猫族の陣屋から操ちゃんの屋敷までを百五十往復、猫族を侮蔑する発言をしたら腕立て背筋素振り各三千回。それ以外に猫族の迷惑になるようなことがあれば腕立て背筋素振り各五千回。監視と報告は関羽、張飛、関定、蘇双に任せることにする。分かったか? 分かったな」
「「……」」
師匠の決定に弟子に拒否権は無い。
そして師匠は決めた罰は必ずやる。
いつもそうだ。
分かり切っている。
分かり切っているが――――。
「……○○様、何とぞ」
「却下。夏侯惇、弟子が師匠に口答えか?」
「いえ。申し訳ありません」
「兄者……!」
「おっと、何だ。夏侯淵も何か言いたそうだなぁ……?」
「い、いえ! 何でもありませんっ!」
「それで良し」○○は手を叩いた。
「じゃあ、女官を集めて服や髪型を決めておかないと。いやぁ、楽しみ楽しみ。ああそうだ、夏侯惇んとこのあの絵が上手い家臣、あいつも呼べよ。描かせて操ちゃんに見せるから」
「な……っ!」
「そ、それだけは!」
青ざめ必死に許しを乞うも○○に聞く耳は無し。
心底愉(たの)しそうな笑顔で片手を振り、早足で立ち去っていく。
そこで初めて、ここが○○の部屋だと言うことに二人は気が付いた。
が、そんなこと、もう、どうでも良い……。
夏侯惇と夏侯淵は、頭を抱え長い長い嘆息をした。
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