はらから夢主がDrrr!!
2014/01/26 16:32


※夢主デフォ名です。



「嫌だな。俺は人間を愛しているよ」


 軽薄の奥に潜んだ鋭利な刃物は、幽谷に真っ直ぐ向けられる。

 幽谷は色違いの目を細め、彼を静かに見据える。
 この男――――折原臨也は得体が知れない。
 呂布は勿論、曹操とも違う、こちらは安定されているようで不安定な危険な存在という印象を与える。
 人間を愛していると豪語しながら、彼は人間を弄(もてあそ)ぶ。人間を知る為に。


「そのように仰るのならば、静雄さんも博愛対象なのでは?」

「まさか。寒気がする」


――――平和島静雄。
 この世界に放り出された幽谷の面倒を見てくれる優しい男性だ。
 彼とこの臨也は天敵同士。一度顔を合わせようものなら周囲は阿鼻叫喚だ。

 静雄は臨也の予想をことごとく裏切るし、臨也自身理屈が通用しない相手が嫌いであるらしい。
 だからなのか、静雄を博愛対象から外し徹底的に排除したがる。

 そうしながら、静雄を恩人とする幽谷に接触したがった。……静雄よりも、幽谷の方が遥かに人間離れしていると思うのだけれど。
 幽谷がこの世界の事物の大半を知らないということ、猫族というこの世界では一切記述の無い一族の娘に従っていたこと、そして化け物と恐れられる平和島静雄以上の身体能力――――岸谷新羅から聞き出してより、彼は幽谷の全てが気になって仕方がないらしい。なんとも迷惑な話である。


「俺が知りたいのは君のことさ。君は面白い。とても興味深い。是非とも君の全てを教えてもらいたいね」

「お断りします。静雄さんから、あなたとは関わるなと命じられております故に」

「命令? シズちゃんは君のご主人様かい? だったら鞍替えをお勧めするね。あんな奴の下にいるなんて、気狂いのレッテルを貼られてしまう。俺の好奇心をこんなにも駆り立てて止まない魅力的な君が、化け物の付属品のように扱われるのは、我慢ならない」

「その演技がかった科白、いつまで聞かなければならぬのでしょうか。私は静雄さんに命じられた買い物を済ませなければならぬのですが」


 正直、会う度会う度――――実際は今までで両手で数えられるくらいしか会っていないのだが――――同じことを似たような抑揚で言われていれば飽きてくる。
 幽谷は呆れの混じった吐息をこぼし、身体を反転させた。

――――その直後だ。
 背後に突風を感じた。

 右に向き直ればそこにはサングラスにバーテンダーと言う職の男性が身に付ける衣装を着た金髪の青年が。底の見えない激情を顔だけでなく周囲を取り巻く空気にまで滲ませ、辺りを圧倒する。
 大きな何かを投げたような姿なのは、多分幽谷の側にひしゃげて転がる物に関係があるのだろう。
 静雄に教えてもらった、飲み物を自動で販売するキカイ。
 本来そこにいた好青年の姿は無かった。キカイの下敷きになったのでは決してなかった。


「危なかったねぇ、幽谷」

「……」


 幽谷の背後に立って爽やかな笑みを浮かべる臨也に、幽谷は一発殴り付けてやろうかと拳を握った。


「いぃぃざぁぁやぁぁ……!」

「静雄さん……」


 幽谷は眉間を押さえた。

 根は優しい平和島静雄は、しかし、とかく短気な性分だった。一度キレると手に終えない。臨也と会うと必ずと言って良い程我を忘れて臨也を排除しようとする。二度程、幽谷がもう手段が無いからとぶん殴って止めたことがある程だ。

 ……ああ、面倒だ。本当に面倒だ。
 自身の肩に、静雄へ見せつけるように腕を回してくる臨也の首に、幽谷は無言で匕首をあてがった。


「消えて下さい。それとも、《また》三日間腹を下し続けたいのですか?」


 声色低く、脅かす。
 するとぴくりと臨也が震え、幽谷から離れるのだ。


「それだけは勘弁。あれは二度と体験したくないね」

「そうですか。失敗から生まれたものとはいえ、作り方は覚えていますから、いつでも《差し上げ》ますよ」

「それはつまり、盛るってことだね。本当に……幽谷ってば、シズちゃんの影響を受けすぎてるんじゃないかなぁ……」

「あなたの影響を受けるよりは遥かにましで――――」


 そこで幽谷は一旦その場に屈み込む。

 臨也に真っ直ぐ飛来したのは、道路標識。辛くも避けられてしまった。

 幽谷なら簡単に避けられると分かっている故に、静雄は容赦なく投げ付けてきたのだった。
 臨也が幽谷から離れた隙にと静雄が大股に近付いて腕を掴んでくる。


「あの……」

「お前は離れてろ」

「……はい」


 駄目だ。
 完全に目がイってしまっている。
 幽谷は臨也に向かっていく恩人を見送り、頭痛を覚えてこめかみを揉んだ。



○●○

 衝動的に書きましたが、キャラが掴めてませんね。



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