はらから双子ネタ
2013/04/26 17:33





 自分と瓜二つの顔がそこにいる。
 自分と違うのは、髪の長さと漆黒の衣服のみ。
 左右で違う瞳の色すら同じだなんて!

 ○○は夢でも見ているかのような心地だった。今まで呂布を警戒していた彼女の双眸は、今やその女に釘付けになっている。
 目が離せない。まるで眼球その物を見えない手で鷲掴みされたような……。

 女は、ふっと口角を弛めた。
 ほんのりと頬を薄く染めて、扇情的に、挑発的に○○を見つめ返す。
 弧を描いていた紅唇が、開かれた。


「ずっと、ずっと会いたかったわ――――《姉さん》」

「姉……さん? ○○、あなた妹がいたの?」


 関羽が女を警戒しながら○○に近寄ったその刹那であった。

 女が眉根を寄せ、姿を消した。

 あっと声を発する暇も無かった。


「きゃあぁっ」


 関羽が何かに弾き飛ばされた。
 彼女に駆け寄ろうとした○○はしかし、後ろから腰に回された腕に戦慄する。
 いつの間に、背後に……!?

 背後からの攻撃に、○○は昔から過敏に反応する。条件反射で攻撃をするように犀家で教え込まれたが故だ。
 その○○が、抱きつかれるまで気付けなかったとは、由々しきことである。

 ○○は右の頬をひきつらせて首だけを巡らせた。
 自分と全く同じ位置に、自分と全く同じ双眸が笑っている。
 だが、その奥には黒々とした狂気が宿っていた。

 恐ろしいと、本能が警鐘を鳴らす。逃げろと急かす。
 されども、女の腕ががっちりと捉えて逃さない。

 女の濡れた唇が耳に寄せられた。


「わたし、ずっと生き別れた姉さんを捜していたのよ」


 姉さんと一つになりたくて。
 直後、彼女は首筋に噛みついてきた。

 強烈な痛みに思わず肘を上げる。避けられた。

 女は○○から離れると何かを咀嚼する口を拭った。
 そっと噛まれた場所に手を這わせば、そこだけがぼこりと凹(へこ)んで濡れている。ぬるりとした感触にぞわりと寒気がした。

 『一つになる』――――彼女はそう言った。
 まさか、その方法は。

――――理解が出来ない。
 彼女の思考が。
 否、彼女の存在自体理解も許容も出来ぬ。

 ざわざわと胸を掻き乱すのは恐怖。
 かつて、他人にこれまでの恐怖を抱いたことがあったろうか――――いや、無い。
 呂布以上の驚異のように思えてならなかった。


「ねえ、姉さん。わたし一つになりましょうよ。……いいえ、わたし達は一つになるべきなのよ。わたし達は元は一つだったんだから」


 ○○は後退する。
 董卓を追わなければ。
 呂布や張遼などに悠長に構っていられる場合ではないのだ。

 だのに――――。


「○○っ!」

「あ……!」


 関羽が○○の前に立つ。偃月刀を構えて女を睥睨した。

 すると、女は嫌そうに顔を歪めるのだ。


「ブス猫が、わたしの姉さんに近付かないでもらえるかしら」

「まあ、●●ちゃん。ブス猫だなんて、子猫ちゃんはとっても可愛らしくてよ」

「わたしは姉さんしか要らないもの」


 呂布の言葉につんとそっぽを向いた女――――●●は、汚い物でも見るかのように関羽を流し目に見た。

 そうして徐(おもむろ)に圏を構えて腰を低くする――――。



○●○

 洛陽董卓襲撃の時です。

 夢主の双子妹はカニバリズムになりました。
 ●●表記ですが、名前は幽静ってしれっと決めてたり。

 二人が分かたれたのはあの地仙が妹に不穏を感じて道すがら谷底に落としたからだとか、
 後々犀華を消そうと色々えげつないこと仕掛けたりするとか、
 ちょいちょい重い話ばかりで私の気も重い←

 ちなみに夢主に傷つけられると非常に悦びます。



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