狂った夢主
2012/08/11 18:30
猫族の為になること。
それは蔑む存在が消えて無くなることだ。
嗚呼、どうして気付かなかったのだろう。
こんな簡単なことなのに。
「が……はっ」
「……今一番排除すべきは、あなた」
曹操。
○○は足元に転がる男を見下ろし、くっと口角をつり上げた。
こいつがいなければ、猫族は人間の世界へ無理矢理連れ出されることは無かったのだ。
諸悪の根源は、この男。
○○の身体は赤黒い。暗器も服も肌も髪も、全てが血で濡れ、乾き黒く変色してしまっている。
彼女の後ろには辛うじて形を残す二つの遺体。その更に後ろには無数の床を埋め尽くす肉片。それらはまともに見れぬ程破壊し尽くされていた。
「あなたを殺したら、また別の人を殺しに行かなくては」
○○は曹操の胸の上に匕首を持っていった。刃を下にすれば、ぽたりぽたりと血が滴り落ちる。
○○は艶然たる笑みを浮かべ――――匕首を落とした。
それは曹操の胸に突き刺さる。
彼の黒の双眸が見開かれた。徐々に徐々に、命を失っていく。
その目を見、○○は笑みを消す。屈んで、手を伸ばす。
――――彼の目に。
「あなたの目は、関羽様と同じ黒……」
許せない。
○○の手は迷いが無かった。
かつては碁を打ったというのに、躊躇い無く眼窩(がんか)に指を突き入れたのだ。
ぐちゅり。
†††
その光景を見た関羽は絶望に茫然とした。
この屋敷に生きている人間は誰一人としていない。
――――否、遺体という形を保っている人間がどれだけいるのかすら分からない。
「あ……ぁ……っ」
○○がしたのだと、すぐに分かった。
だって今、屋敷から出てきたのだ。
血塗れの○○が!
○○は関羽に気が付くとふっと笑った。優しい笑みだが、見てくれとはあまりに不釣り合い。
「○○……!」
「……関羽、大丈夫だから」
あなた達は私が守るわ。
そう言って、彼女は関羽の脇を通り抜ける。
関羽は何も言えなかった。
何も出来なかった。
○○が立ち去った後、彼女はその場に座り込む。黒の瞳から、涙が溢れ出した。
ただ、ただ。
○○が恐ろしかった。
わたしじゃ、○○を止められない。
もう、何も出来ない……。
数日後、袁術が何者かに殺されたとの報が届く。
兵士や民すら、ことごとく無惨に殺されていたと言う――――。
○●○
雰囲気的には関羽で夢主ルートのバッドエンド、かな。彼女が狂うとなったらこんな感じかと。
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