ご一緒ですか?・1





「はー!やっと着いたな!」

大きなバッグを降ろして、肩をグルグル回したのはトリコくん。

「しっかし重かったな〜。燈子のバッグ」
「文句言うなら持ってくれなくっても良かったんだけど?」
「そういう意味じゃねーよ。何が入ってんのか気になるんだって。って事で・・・」
「ちょっと?開けないでよ?!」

早くも言い合いを始めた二人。だけどいつもの通り、楽しそうな二人の姿に思わず笑ってしまう。
アタシの親友の燈子は、トリコくんの彼女。トリコくんが猛烈なアプローチをしたのも、もう随分前の話。そして・・・

「結構かかったね。ナマエちゃん、疲れてない?」
「ううん。平気」

アタシの隣でアタシの荷物を持ってくれているのは、ココさん。アタシは恐れ多くもココさんの彼女・・・なんだ。

「ココさんも重かったでしょ」
「え?荷物?大した事ないよ」
「ホント?」
「中身は少し気になるけど・・・なんてね」
「もぅココさんは・・・ってアタシも実はココさんの気になってたの!」
「ちょ、ここで開けるの?!」
「ヘンな物入ってないかチェック!」
「変って・・・無いよ!無いって!!」

すっかり冗談も言えるようになったアタシたちをパシャリ。燈子がレンズを向けてフフフっと笑った。

「こら燈子!」
「だってナマエたちアツアツなんだもーん」
「自分を棚に上げて!」
「良いから早く、こっち来て!」



アタシたちは今、リゾートホテルの入り口に立っている。
そう。今朝、アタシたちは4人で初めての一泊旅行に出かけたの。時間に追われてバタバタと仕度したのが、昨日の深夜の話。
旅行のきっかけは、大学のランチタイム。ココさんは早くも卒業論文に取り掛かっていて、調査したい物が有るってトリコくんと話していたらしい。でもそれが日帰りでは無理な場所に在るらしく・・・


◇◇◇◇◇


『で、一人旅すんの?』
『まだ日は決めてないけどね』
『・・・』
『何?』
『つまんねーなココって』
『別について来ても良いけど?』
『分かった』
『・・・やけに素直だね』
『アレが近くにあるしな』
『アレ?』
『最近話題のテーマパークだよ』
『へぇ・・・』
『燈子も今月は予定無い筈だし』
『え?』
『ナマエも誘ったら?』
『・・・卒論の資料集めだよ?』
『とか言ってホントは誘いたいんだろ〜?』
『・・・』
『テーマパークがすぐ横なんだけどな〜』
『・・・』
『2人じゃ行けないだろーけど4人ならどーかな〜?』
『・・・・・・』


◇◇◇◇◇


・・・なんてやり取りが有ったらしい。
実際、資料の話はココさんから聞いていた。けれど、一緒に行きたいとはとても言えなかったアタシ。
だって・・・だって、ねぇ?

お泊り、ですヨ?!

別に、部屋をもう一つ取れば良いだけの話だけど・・・ねぇ?

お泊り、ですヨ?!

アタシの両親だって許す訳がない。仮に燈子も一緒だって言っても、はいどーぞ、って出してくれる訳無いと思っていた。
・・・そう思っていたんだけど、いざいざ『ココさんが旅行する』って話をしたら、お母さんったら『あら一緒に行かないの?』だって!その横でお父さんも『バッグは2階の納戸だったかな』とか言ってるし。思わず手に持っていた携帯を落としてしまった。
二人のココさんに対する評価は、アタシの予想を大幅に上回っていたみたい。『彼なら信用できる』って、両親揃って同じ事を言った。数回遊びに来ただけのココさんは、アタシの知らない内に絶大な信用を勝ち取っていた。
そして『思い立ったが吉日!』が持論のトリコくんがテーマパークのすぐ近くのホテルに電話して、次の週末、キャンセルで部屋の空きが有るって言われたのが一昨日の話。そして何故かお父さんが『お得意様がくれた』とそのテーマパークの招待券を持っていたり。とっとと旅行に行くべしとカミサマが言っているような状況の下・・・
大慌てで荷物を詰めて、今朝。始発の電車に4人で乗り込んだの。



「ナマエ、こっち見て!」
「あ、ゴメンゴメン」
「はい、撮るよ〜?!」

思わず1ショット。今日お世話になる建物を背景に4人で記念撮影をして、アタシはココさんと手をつないで門をくぐった。
道路から一歩、中に入ると南国風の庭園が広がっていた。シュロの葉が海風に弾かれている。門から真っ直ぐ続いている道の、その先に見える白い壁の建物は、これでもかってくらい光を反射して見えた。途端に外の車の音が一気に聞こえなくなったアタシ。不思議だよね。

エントランスに足を踏み入れたら、いつものように周囲がざわめいた。そう。アタシ以外の3人はとんでもない美男美女なんだ。アタシは半ば慣れっこになった光景に小さくため息をついた。そんなアタシを疲れたと思ったのか。『座ろうか?』なんて声をかけてくれたココさんの腕に、思わずギュッと抱き着いてしまった。

「ちょっと休憩しようか。フロントも混んでるし」

ココさんはそう言うと、フロントのすぐ側のカフェラウンジを指さした。
ラウンジのふっくらソファーに沈むように腰を下ろしたアタシは、そのまま大きく伸びをした。

「ちょっとナマエ、はしたないわよ」
「だって〜」

そう言ったアタシの隣で同じように伸びをするココさん。似た者夫婦だよな、とトリコくんが笑う。
頑張って始発に乗ったおかげで、当初の目的だった卒論の資料集めはお昼過ぎに終わっていた。つまり、後は遊ぶだけ。ココさんに付き合う形で企画した旅行だったけれど、いつの間にかテーマパークが目的のようなスケジュールになってしまった。最初はそれで本当に良いのかと心配だったけれど、ココさん曰く、立ち寄った資料館では予想以上の収穫が有ったらしい。そのせいか、ココさんはいつも以上に機嫌が良い。・・・と言うか開放的だった。

「そろそろチェックインしようか」

ココさんが時計を見て立ち上がった。慌ててソファーから起き上がろうとしたアタシを、ココさんはやんわりと止める。

「ナマエちゃんは燈子ちゃんとゆっくりしてて」

アタシの荷物を手に取って、トリコくんと目配せするココさん。

「でも、」
「いーんだよ、すぐ出るんだから。でかい荷物はオレたちが部屋に運んどくからよ」

トリコくんが燈子の荷物をひょいと持ち上げる。そう。すぐ先のテーマパーク、そろそろショーが始まる時間なの。部屋でゆっくりするのはもったいない。
アタシと燈子は顔を見合わせて、二人の好意に甘える事にした。






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