俺も欲しいなぁ。
自分だけのお星さま。
「きらきら〜ひかる〜〜おそらの〜ほし、よ〜〜」
こんな真昼間っから大声できらきら星を歌う高校2年生は俺ぐらいだろう。
外はカンカンと太陽の光がさして、星は見えないどころか真っ白の月すら浮かんでいない。
まあ、頭のおかしい奴という一言に尽きる。
「きぃらぁきぃらぁ〜〜」
「フッ」
「えっ」
また大声で歌い出したとしたとき、誰かの笑い声が聞こえてきた。
急いで草むしりのために向いていた下から目線を上にあげて周囲を見渡す。
笑い声の主は案外すぐ見つかった。
「っく、は、ははっ、ハハハッ」
キラキラと金髪が靡いて、男はお腹が痛いように腹を手で抑えては身体全身を震わせて笑っている。
この男、見たことない………いや、見たことがあった。
顔が整っていて学年でも人一倍目立っていた男子生徒だ。でもクラスは違って話したことはないし、喋っているのも見たことない。ただなんとなく認識だけしていた存在。廊下とかで見かけるぐらいの…。
「っはは、あは、あははっ」
「わ、笑いすぎじゃないっ…!?」
俺がしばし思い耽っていても、まだ笑い続けている美少年に、思わず恥ずかしくて声をあげてしまう。
その美少年は頬にまでかかる髪を、綺麗な人差し指でかき上げながらこちらを見た。
「ご、ごめん。なんか、あまりにも、似合わなくて」
「に、似合わない…?!」
「あ、いや、なんか、だって…時間帯とか、選曲とか、男子高校生なのにとか、いろいろバランス取れてないっていうか」
「あ、あー……うん、そうかも…」
まあ、言いたいことはわかる。
星空が出ていない真っ昼間に中庭の草むしりをしながら男子高校生がきらきら星を熱唱する光景。確かにアンバランスだ。
「でも、そんなに大笑いしなくたって…もしかして、ツボ浅い?」
「ふふっ。いや?むしろあんまり笑わない方だけど…」
「……そんな笑い堪えてる顔で言われても説得力がないよ」
この美形男子生徒にはよっぽど、俺がおかしく映ってたらしい。やっぱりごめんといってまた笑い出した。
恥ずかしさでだんだん顔が熱くなっていく。そこまで笑わなくたって、さ!
「あは、は、ごめんね。俺の名前は春山聖坡(はるやませいは)。よろしくね」
聖坡はそう言って綺麗な顔で笑った。