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結局朝からヒコたん宅でヒコたんと一緒に二度寝までかました俺たちは、学校に2人で遅刻した。
「ひ、ヒコたん待って、こ、腰が」
「裕里、頑張れ。急がないと、欠席がまたつくぞ。せめて最後の授業ぐらいは受けないと」
「で、でも、昨日の中出しで、お腹も…!」
「あ、そっか!」
全速力をぶっかましていたヒコたんは急停止をしてこちらに振り返る。
恐るべしサッカー部(サボり組だけど)。元気と体力は半端ない。
俺はヒコたんの元へ、ヘロヘロになりながら鈍痛に見舞われる下半身で走る。
ヒコたんがこちらに駆け寄ってきてくれて、とりあえず置いて行かれずには済んだと安堵していると、ヒコたんに腕を軽く掴まれれば、そのまま身体を引っ張り上げられる。
なぜか屈んだヒコたんは少し浮いた俺の体の背後に回ると、膝裏に腕を軽やかに通した。
「ひ、ヒコたん…!」
「裕里、これで急いでいくぞ!」
ヒコたんと俺との身長差はそんなにないはずだけど、ヒコたんは軽々と俺の身体を抱きあげて
、お姫様抱っこをするとそのまま走り出す。ニッと笑った爽やかな顔に胸キュンは爆増だ!
(ヒコたん、これは惚れちゃう…!)
内心、クソ絶倫野郎め…!とキレかけていたが、ヒコたんによる王子様プレイに俺は「たまには激しい中出しプレイもいいかも」なんて数秒で絆されていた。
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ヒコたんと最後の授業には間に合ったものの、担任の先生に大遅刻をかましたのがバレてしまい、呼び出されてしまった。
「ッチ、あのクソ野郎。いつもは生徒のことなんかほったらかしのくせに、教頭がきたら態度ころころ変えやがって」
苛々としながら、職員室を出て階段を駆け上がっていく。
ヒコたんと慰めプレイかまそうと思ったら、今日は練習試合だからと、突然現れた駿喜にヒコたんは連れ出されてしまうし、ホントツイてないわ。
俺はそのまま、階段を上り終えて教室の方へと曲がる。本当無理すぎ、精神安定剤パキっちゃおうかな。
そう思いながら、空き教室の前を通り過ぎようとした時。
「ウッ………」
突然変な呻き声が聞こえた。
「えっ、なにおばけ……?」
ホラーは苦手な俺は思わず立ち止まってしまう。怖くてキョロキョロあたりを見渡せば、たまたま空き教室の中を見てしまい。
「はっ…?リスカ??」
中には血の滴るカッターを掲げて、蹲る男子生徒がいた。
この独特な匂いと、数量の血滴は経験上、手首を切ったリスカだ。死のうとしてると言うよりは精神的快楽を求めた軽いリスカの感じだ。
…どうせムシャクシャしたんでしょ。俺が構う必要はない。
たまにメンヘラ垢やってると、沢山の睡眠剤を飲もうとしたような写真やリスカ跡を見せつけてくる共有型メンヘラちゃんなどがいるが、俺的に正直めっちゃ鬱陶しい。自分は他人に見せたくても、他人からそう言うのを見せられるのはマジ気分悪い。俺にはヒコたんいるし、他のやつからメンヘラされるのは本当に面倒くさくて仕方ないから地雷地雷〜。
そう思って俺は、その教室から立ち去ろうとした。
しかし、まあ、今日は運悪すぎるでしょ。知らないフリして立ち去ろうとしたのも束の間、たまたま目の前にあった空き缶に気づかなくて思いっきりそれを蹴飛ばしてしまった。
ガッゴーン、なんて言って空き缶が宙に飛んでいく。
「うわっ」
「誰かいるの…?」
まずい、と思っても、もう遅い。中で蹲っていた生徒はこちらに気付いて、顔を見て上げていた。窓を介してバッチリと目が合う。
それは大層綺麗な顔をした白髪の男だった。髪の毛はブリーチしまくったのか、ギシギシになってんじゃない?てかおじいちゃんか?ってぐらいに透き通った白色をしている。これはまずいことになったな、なんて思いながら冷や汗が垂れる。
ぼたぼたと手首からは真っ赤な血が漏れ出していた。