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凌賀を探しに俺の元を訪ねた形で、俺の部屋にて睦先輩と榊原会長は合流し、生徒会室へと戻って行った。そして、会長の菓子もちゃっかり受け取った旗中は「フムフム、今日も大収穫」と満足気に頷いている。

凌賀のメッセージはあの一件から止まっており、生徒会室で仕事をしているようだ。しばらくはメッセージが来ないな、とスマホを安心して閉じた。

それにしても1日のうちに一気に3人もお尋ね者が来るのは珍しい。何か大事な用件でも生徒会で行われているのだろうか。


相馬は鯖本を読み終え、食事も済ませると、ベッドへ戻る。先輩たちのお菓子はありがたく食べさせてもらった。旗中は相変わらず株券を見てるようで、俺はさっさと寝ることにする。

明日も何も起きなければいいな、そう思って相馬は目を瞑った。




ジリリリリという音で目が覚めた。
耳元で鳴るスマホを手に取れば、兄から通話がきているようだ。半分寝ぼけながら応答すると、朝の5時なのに兄はハイテンションに号泣していた。

『相馬ぁ…やっぱり無理だよぉ』
「…なんの話?」
『恋人の件!どうあがいても会長がめちゃくちゃ邪魔してくんのぉ』
「はぁ。それなら会長とくっつけばいいんじゃ」
『やだよ!あんな俺様!!相馬みたいなかわいい子じゃないとやだ〜』
「結構です」
『なに?冷たすぎん?いつから相馬はそんなにお兄ちゃんに冷たくなったん?』

…眠い。こんな朝早くから頼んでもないモーニングコールされた俺の身にもなってほしい。

「用件はそれだけ?切るよ」
『えっ、待って待って!相馬、お兄ちゃんと朝ごはん食べに行かない?』
「今から?」
 
どうやら寝ぼけすぎて、変なことを聞いてしまった。
今は朝の5時である。まず食堂はやっていない。

『違う違う〜8時ぐらいに!もう相馬ったら眠いんだろ〜?寝ててもいいぞ!お兄ちゃんが迎えに行こっか〜?』
「いやいらない。絶対部屋の前で騒ぐだろ」
『それは俺じゃなくて他のやつらのせいじゃん!……無視しないで!ねえってば相馬〜〜!』

その他の人間セット(凌駕も含めて)がうるさいのだ。しかもその人間セットも人気者が多くて、周りの寮生たちが騒ぎ立てるし…。悪の相乗効果だ。

『相馬、お兄ちゃん迎えに行くからね!準備しててね!じゃあね!』

俺が断ろうとしていた雰囲気を察したのか、凌駕はそうまくしたてると無理矢理電話を切ってしまう。兄はこうしていつも勝手である。
俺は頭が痛くなるようなことを考えたくなくて布団にもぐることにした。



********

ドンドンドンドン。
荒っぽく部屋のドアを叩かれる。
居留守にしようか迷ったが、寝起きの悪い旗中が起きて機嫌悪くされても溜まったものではないから大人しくドアを開けた。

「相馬!ちゃんと起きてたみたいだね!いい子いい子」
「兄ちゃんは相変わらずだね」

頭を撫でようとする凌駕の手を軽く避けて、部屋の外へ出る。財布もかばんも持った。部屋の前でギャーギャー騒がれても困るため、速やかに部屋から出たのだ。
外に出てみれば、凌駕は兄貴大好き人間セットをもちろん引き連れてきたようで、榊原会長、鮫原先輩、そしてチャラチャラとした見た目の満木(みちるぎ)先輩と堅物な印象を与える河上(かわかみ)先輩が待っていた。生徒会のお出ましである。

「りょうちゃん相変わらずそうちゃんに相手されてないね〜〜。俺が慰めてあげよっか?」
「満木、触るなボケカス。お前のせいで相馬に変な勘違いをされたらどうする!」
「別にどうもしないけど」

あれほど新しい恋をしたいとほざいている兄のことである。どういう大恋愛をしようとも俺は別に引き止めもしないし干渉もしない。
とりあえず無難そうな鮫原先輩の近くに引っ付く。凌駕は俺様榊原会長にもちょっかいを掛けられているようで、俺の様子は目に入らないみたいだ。そして河上先輩は無言のまま俺らの後ろを歩いていく。他の役員がうるさいせいなのか、この人自らあんまり喋ろうとしない。そのせいでより寡黙キャラが目立ち、何を考えているのかよくわからない。

「ねね、りょうちゃんってセックスする時ネコなの?タチなの?俺的にはネコであんあん喘いでるのが好みなんだけど」
「お前、なんで相馬がいるときにそんなこと聞くの〜!?ちなみに俺はネコじゃない!猫のほうが弱そうじゃないか!」
「はぁ?凌駕はネコだろうが」
「あのさぁ、会長。俺のプライベートに入ってこないでくれる?昨日も会長のせいで失敗に終わったんだけど!俺のプライベートとお布団に入ってきていいのは相馬だけだから!」

俺は鮫原先輩を盾にした。凌駕が余計な事を言うせいで、たまに榊原会長は俺を強く睨むのだ。会長には俺のことは大して嫌われてないと思うが、好かれてるとも思わない。
鮫原先輩は凌駕のことを気にかけながらも、俺の頭をポンッと叩いて、「俺で逃げるな」と怒った。鮫原先輩も凌駕信者だった、すみません。





それから凌駕を中心にギャーギャーと騒ぎながら、食堂へついた。ちょうど朝飯時で人が多かったようだ。食堂へ入るなり、人気の生徒会一群を見つけては生徒たちが叫びだした。


「やっほー!皆元気してる〜?」

我が兄ながら、アイドルばりの挨拶に感無量である。生徒たちはギャー!!元気です!!と大声で返事した。彼らをまとめ上げる統率力は凄まじい。

「なになにりょうちゃん。他の子とイチャイチャして俺を嫉妬させたいの?」
「満木お前は最初から論外なんだよ、どっかいけ。俺の恋愛は俺が決めるの」
「それだったら、そうちゃんにもいちいち相談しなくていいじゃん」
「は?!相馬は別だから!お前らと一緒にすんな!相馬は俺のラブリースイートキューティな弟だぞ!相馬はきっと俺に運命の人を見つけてくれるに違いない!」
「凌駕、なに勝手なことしてんだよ。お前は俺が許可するまで動くなって言っただろうが」
「わ、出たー会長の横暴論ーー今どき俺様はモテないらしいですよー」
「は?うるせえぞ満木、ぶっ飛ばされてえのか」
「ッうるせえーーッ!お前らどっか行けよ!!!」
「あ、わかった」
「え、まって!?相馬違う!相馬のことじゃないのッ!ねえーッ!!!」

俺を引き留めようと凌駕は必死に手を伸ばすが、生徒やら会長や満木先輩たちに揉みくちゃにされて埋れていく。
こちらもあんな大集団引き連れて歩くのは迷惑極まりなかったので1人になれてちょうどいい。俺はそのまま食券を買いに向かった。

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