凌駕の身体が後ろから覆い被さった。

軍服を着た凌駕の黒い裾が目に入ると、白い清潔な手袋が性器へ触れた。

「…っ」

縮こまってしまっている己のモノに、凌駕は手のひらを丸みこむと、ゆっくり擦り上げられた。

ピリピリ、とした緊張感と、乾いた布の感触に快感と痛みが走る。
凌駕の手は性器の側面を擦り上げながら、時折亀頭部分の形を確かめるように数本の指先でスリ、と掠めていく。

柔らかい刺激もいつの間にか身体には慣れてきて、相馬の性器は硬度を持ち始める。
凌駕はそれをわかっているのか、弄る程度だった指を、中指と親指で輪っかを作っては、ピタリと性器を掴んで上下へ扱き始めた。

「…っやめ…」

どうして俺の性器に触れる必要がある。


屈辱的な辱めに、息が次第に荒くなっていく。凌駕の手の動きを止めようと机を掴んでいた手を離そうとすれば、「いつ手を離していいと言った？」と凌駕の声が耳元から聞こえてきて、それはできなくなってしまう。


「…んん…っ！」

結局硬く張り上がってしまった俺の性器は、凌駕の甘い緩急に快楽を求め始めていた。
自然と股の間が濡れていく感覚がし、凌駕のはめた手袋が濡れてグチョグチョと音を立て始めている。

「…や、やだっ…！やめ、ろ……んぃっ…！！」

気持ちいい。頭の中は次第に情欲の塊で埋め尽くされていってしまう。

(…いやだ、やめてくれ)
手を使えない分、首を振り、鼻から抜ける変な上擦った声を押し殺す。

「相馬、これはお仕置きだよ。俺に逆らった罰。恥ずかしい所を俺に見せるんだ」

そう言うの嫌いだろ？お前は。

そう言いたげにベロリと、耳たぶを舐められた。その感覚にも体がビクリと大きく跳ねてしまう。


(本当に嫌だ、こんな、心臓に悪い…)

的確に弱いところをついてドロドロに落とし込んでいく凌駕。
相馬の節々は熱で赤く染まり、頭には急に血管が開いて血が勢いよく上っていくように、相馬の脳みそはガンガンと揺さぶられていた。

意識が次第に朦朧と、おぼつかなくなる。


「っはぁ…ん、んんっ……」
「相馬、口開いて。ほら、唇切れてる」

凌駕のもう片方の手が顎に触れ、そのまま凌駕の方へ顔を向けられる。

嫌がっても、凌駕に自分の情けない顔が見られてしまう。
トロリとした眼球の奥、恥ずかしさのあまりまた強く唇を噛んだ。こんな、みっともない格好で…！

顔を凌駕から背けると、凌駕はこらこら、と笑いながら手袋の締まった指で下唇をなぞった。

「口開けてって言ったでしょ？まずは俺の手袋を取ってもらおうかな」

そういって、下唇を無理やりこじ開けられて、歯へと布が触れた。
刃先に布の独特な繊維のようなものがあたり、歯の形まで全て確かめるように口の中へと凌駕は指を入れていく。

吃驚して、これ以上入ってくるな、と口内へ入ってきた指先を甘噛みすれば、それに対抗するように、また手袋の指が歯先や歯筋を撫であげた。
…ゾワリ、と背中に電気が走る。

俺は居ても立っても居られなくなって、舌で指を追い出し、唇で手袋の先を挟んだ。

「相馬」
「やる、やるから…」

凌駕の声に、慌てて反論する。
上目遣いの形になって大変嫌だったが、凌駕の目に訴えれば、彼はすぐ満足気な笑顔を見せて「分かった」と唇を揉んだ。


遠慮がちに、歯を出して、少し潰れた布地を挟む。
そのまま、指を引っ掛けないように顎や顔を動かしながら、なるべく丁寧に凌駕の片手の手袋を外させた。


手袋の外れた凌駕の指が再度口内に入ってくる。
抵抗しようとする俺の気も知らないで、より舌や頬の粘膜へ指を絡めてくる。

「相馬、よく舐めてごらん」

舐めるも何も、凌駕の指は自分勝手に相馬の口の中を動き回る。口内に意識が持っていかれていると、唐突に性器の方にも刺激が走り、身体に自由がきかない。凌駕に主導権を握られたも同然。ここまで来ると、半ばされるがままに凌駕へ舌や性器を弄らせる。
脚はガタガタと震え、握られた性器は弱く震え上がることしかできないけど、じっと耐えるしかない。

口から唾液が漏れて、喉に伝うのも知らない。
早くこの拷問が終わらないか、と相馬はひたすら願っていた。


やがて半開きにしていた口内から凌駕の指が引き抜かれる。
性器は完全に張り詰めて、誘惑に負ければすぐにでも精液をぶちまけてしまうほどギリギリの状態だった。しかし、ぐしょぐしょになった性器に添えていた凌駕の手も同時に離れた。
力の入らない腰を無理矢理凌駕に引き寄せられ、脚は大股に開かれる。

「次は、なに、…！」

相馬の言葉は続かなかった。
尻たぶを大きく開き、口内に這いずり回った指が、無理矢理後穴に突き入ったのだ。


「っあ、！なに、なにして…！！」
「相馬はアナルが弱いなぁ〜。セックスはしたことある？」

そう言いながらグリグリとこじ開けるようにさらに肛門へ指を押し込んでくる。

「っぐ、ぁっ」
「相馬、答えろよ。ねえ」

俺はただ尻の痛みに呻き声をあげるしかできない。
凌駕は俺の顔から何か悟ったのか、尻の縁を淡く撫であげた。

「それじゃあ女とは？女の穴に突っ込んだことは？」

指の動きが一旦止まり、ふぁっ…と息が漏れて体の緊張が解ける。崩れ落ちかけた体を机の上に押し倒し、首だけで凌駕を見上げる。


「相馬、答えは？」
「……な、ない」
「へえ？一回も？フェラは？」
「…ない、ないに決まっているだろっ」

好きになった女の子さえいるかもわからない。

ただ、そう、正直に告げれば、凌駕は口角を綺麗につりあげて、いい子だね、と頭を撫でてくる。

「そうか、相馬は誰ともしたことがないんだ」

そう嬉しそうに笑う凌駕の顔が下へと降りていく。また、凌駕の手が尻へ触れたかと思うと、穴へ指をあてて、パクリと開いた。

「じゃあこの中は処女かぁ」

そう言うなり、凌駕の顔が突然尻へ当てられる。

ひっ、と声を上げた途端、ぬめりとした暖かくて柔らかい感触が尻周りを這う。暖かいものに包まれて、アナルへより深くその濡れたものが入ってくる。

「な、なにやって…！！」

じゅる、じゅるる、と水音が大きく響いたことに、凌賀が自分の中を舐め上げていることがわかった。
相馬はそんなことされるなんて想像もつかず、凌駕の顔を必死に引き剥がそうとする。

「汚いからっ……や、やめろっ」
「相馬の中すごいピンク色〜。キツキツで、立派な処女マンだぁ。それじゃあ指だけじゃ痛かったよね？いっぱい舐めて解してあげるね？」
「や、やだっ、本当に、やめ、っああっ…！」

段違いの気持ちよさに体が震える。
暖かい凌駕の舌はたくさん濡れて、潤滑油のように相馬の後穴をたっぷり解していく。

その一方で、グチュ、グチュと尻から響いてくる卑猥な音に顔を覆いたくなってしまう。

「っはぁ、ここ舐めたのも俺が初めて？そうだよねぇ。相馬の中どんどんうねってきてるよ」

舌を引き抜いた凌駕はそう言って、指をまた突き入れてくる。先ほども柔らかくなった相馬の尻穴は指をぐんぐんと飲み込んでいく。
くりくり、と凌駕の指が内壁を擦ったり、トントン叩いては刺激を相馬の中にたくさん飛ばしてくる。

「あひぃっ……ほん、とに、やめ、やめろっ…おかしく、んいぃぃっ」
「相馬、可愛い、可愛いよ…。しかも、後ろ才能あるとか、どんだけ可愛いんだ…狙ってて正解だった」

凌駕は興奮したように、相馬の尻を弄くり回す。雌に狂った雄のように、ただ、相馬の反応を見ては息を荒くする。俺はただそれに震えて、目の前の机に縋り付くしかない。


「あぁ、俺、限界…。相馬腰を高く上げて？」

上擦った甘ったるい声が耳元に聞こえてくる。先ほど俺の頬を殴った人間と同一人物とは思えない、それぐらいの釈変ぶりだった。
しかし、俺がモタモタすれば、「早くして」と凌駕は尻に張り手をする。その暴力に、まだ凶暴性のある彼は健在していると思い知らされる。
俺は疑問や不快感も押し殺して、無理な体勢で腰を持ち上げた。



「…相馬、俺がはじめての男だよ。よく覚えておいて」
「ひっ、あああああっ」

凌駕は俺の不完全な後穴に立派に張られた性器を押し当てた。ググ、っと無理矢理、先ほどは段違いの質量の物体が中をこじ開けてくる。痛みと熱さと朦朧とした意識がぐちゃぐちゃと混ざり合って目の前を掻き乱す。

夢だと思いたい。そう思っても、身体に走る痛みは耐えられなかったし、もがく身体の節々が机にぶつかって、切り刻まれていくような感覚になる。

「っ相馬、キツイって…もっと力抜けっ」

そう言って凌駕は尻をスパンキングする。
しかしその衝撃に背中はのけ反り、より凌駕を締め付けてしまった。

凌駕から無理矢理這い出ようと相馬は机上を這おうとする。しかし、そんな相馬にいち早く凌駕は気付き、無理矢理抑え込むと顔を掴んではキスをなぶってくる。
腰を掴む腕も強く、相馬が暴れたとしても逃げられない。

身体がボロボロに擦り切れそうになりながら、凌駕の性器が相馬の中へ押し込められていった。