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※全体的にイタイ


気付けば傍にいた。それが当たり前だと思ってた。どこで間違った?

普通の人が見たら悲鳴を上げて逃げ去るくらい酷い光景が今目の前にある。足元に転がっている源田が自分の黄金色の目に映った。その服は所々汚れていたり破れている。首元や服と肌の隙間からは時間が経ち既に変色している痣がいくつも見える。誰がこんなことをしたんだろう。俺かと目の前のものを見下ろす。じっと観察していると、目の前の物体の眉がぴくっと動いた。その口元は切れて血が固まっていてうっすらと開けた腫れた目で俺を捉らえた。その瞬間に背筋が電気を走ったような衝動に襲われ源田の腹を思いっ切り蹴る。足元に赤黒い影が広がった。部屋が薄暗くて相手の顔がよく見えない。途端に脚が、がくがくと震え出した。部屋から出ようと右足を一歩前に出したら左足が何かに引っ掛かった。引っ掛かるというよりは何かに捕まる感触。汗が額を通り冷えた床に落ちた。それを追いかけるように下を見ると左足には痣だらけの手。振り払おうとしたがその大きな手は離れようとはしなかった。

「さくま」

二人しか居ない部屋に響く少し掠れたその声。いやだ、呼ぶな。あの人以外の声で俺を呼ぶな。聴きたくなくて指で皮が擦れて血が浮き出るくらい強く耳を塞いだ。ついに身体を支えきれなくなった足が悲鳴をあげて地面になだれ込むように倒れた。それでも平常を保とうと自分の左足を掴んでいる腕を空いている右足で剥がそうとする。

「離せ」
「いや、だ、さくま佐久間」
「黙れよ」
「俺を見捨てないでくれ」

自分の存在が居た堪れなくなって源田を本気で剥がそうとしたが一度掴んだらまるで接着剤みたいにくっついてしまって今度は源田から腕が剥がれなかった。剥がれないなら剥がさせろとぐっと握る力を強くしてすんなりと源田の腕が離れる。なにかが頬を伝った。


「佐久間?」
「なんだよ」
「なんでお前が泣くんだ?佐久間」

源田は痣だらけの腕で俺の頬を伝うそれを優しくはらった。なあ源田、俺はどこで間違ったんだろう。それでも互いに依存し合うことすらない関係に終わりは来ないのだけは知っていたつもりだったよ。

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