追憶パレード | ナノ












今からでも間に合うかもしれない。そう思わせた本人は上の空で雲が自分達の上を通り過ぎるのを静かに眺めていた。

「佐久間いくぞ。まだ終電は来てない今から走れば」

言いかけて止めた。いま言うと何かが壊れてしまう気がしたからだと思う。今日は鬼道に会う約束をしていた。たったそれだけのことで部活を抜け出すのは少し悪い気もしたが佐久間のことを考えて会いに行くことにした。午後6時。今の時期だと少し薄暗くてそれでも太陽が沈んでいなく相手の顔が赤く染まって見える。日が沈む前に会いに行くつもりがそれは叶わない夢となってしまった。

「とりあえず鬼道に電話しないと」

ズボンの後ろのポケットから携帯を取り出しアドレス帳を開こうとしたが携帯を下から奪い取られた。そして問い掛ける前に下から強引に唇を噛まれた。がちっと歯と歯がぶつかり合って浅かった口づけは深さを増し息が苦しくなり足がふらついてきた時にやっと解放された。周りはすっかり暗くなっていてその場で息を調えて相手の顔を見るとあまりよく見えないが複雑な顔をしていた。その時ようやく今までの行動の意味を理解した気がした。

「お前、鬼道さん好きなのかよ」

お前は俺を口実に鬼道に会いに行こうとしていたんだと佐久間に言われた気がした。きっかけは与えられる物でしかなくて現実は大きく覆される物であった。執着しているのは佐久間の方だと思い込んでいたがそれは勘違いで俺の世界は大きく揺れた。今の佐久間は憧れを追いかけるのではなく目の前の俺を離さないようしがみついてるように見えた。かわったのは誰でもなく元々こうだったのかもしれない。







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