蓬けた記憶 | ナノ












今みたいな時期になるとクラスの男子どもが急にそわそわしだすので俺はその様子を隅々まで堪能して楽しんでいる。帝国サッカー部も例外ではないが貰えない人は居ないと思う(辺見あたりは貰えなくてよくベソかいてたりするが)授業中に様子が気になって源田の席をみたがそこに肝心の本人は居なかった。女子が口々に「源田くん明日くるかな」なんて言っていたが聞かないようにした。珍しく体調不良らしい。その日の部活はそれこそ何もなかったが酷く色褪せて視えた。

気付けば一メートル先も見えないほど暗い時間まで練習をしていた。急いで部室に戻ったら自分のロッカーに汚い字で「明日たのしみだな!」と書かれた張り紙が貼ってあった。(辺見の仕業だとすぐわかった)いつもこの時期になると大人しいアイツがこんな悪戯をするほど俺は明日チョコレートを貰えるか危機的な状況にいるというわけだ。しかも一番貰ったら嬉しい人が休んでいるとなれば明日はまさに地獄となるだろう。初めてその日が嫌いになった。貼り紙を手でぐしゃぐしゃに潰してごみ箱へ叩きつけるように捨てた。そして辺見が使ったであろう近場にあったペンと紙を使い(おまえの勝ちでいいぜ、ハゲ)と書いて辺見のロッカーに張り付けてやった。明日はここへ来ないつもりだ。夜遅くまで練習して疲れたんだ。そう言い聞かせた。





「さくま」

今日はいつものやかましい目覚ましではなく芯の通る声で起きた。あまりにも驚いたので勢いよく起き上がるとごつ、と鈍い音をたてて頭が何かにぶつかった。

「げん、だ?」
「おはよう佐久間」

「なんつー…石頭」と呟くと「俺も結構いたかった」と微笑まれて顔の熱が上昇するのが嫌でもわかる。すると源田が心配そうに見てきたので少し焦った(今は病人だった)なのでわざとせき込んでしたりして見せたら本気で焦り始めたので案外使えるかもと新な発見をすることできてきて満足だ。

「やはり熱があるのか?」
「おまえこそ、もういいのかよ」
「あぁ、心配かけてすまない」
「別に」
「…佐久間?」

ふと、今日のことを思い出した。昨日の体調不良で作れなかったのだったら許すつもりだがもし今日が何の日か知らなかったら襲う。そう思って「源田、今日さ」と問いかけた。源田は気まずそうな顔をして、すぐに「すまない」と言った。つくづく学校に行かなくて良かったと思う。行っていたら今頃は知らない女子のチョコレートで埋もれるだけの一日なってしまうところだった。俺は「気にしてない」とだけ言ったが源田は相変わらず申し訳なさそうにしている。俺自身そこまで欲しかったわけではないがやはり少し寂しい気持ちもある。まぁ仕方ないけれども。しかし源田の鞄の異常な膨れ具合がどうも気になって許可無しにチャックを全開に開けた。源田が「あっ」と声をあげたが無視した。鞄の中に入っていたビニル袋からは十個ほどの市販用のチョコレートが雪崩のようにでてきた。入っていた袋からするとここへ来る途中に買ってきたものだと思う。源田が気まずそうに口を開いた。

「サッカー部の皆にもあげようと思って」
「ダメ、絶対に駄目だからな」

源田の声は後半になっていくにつれて徐々に小さくなり最後の方はよく聞き取れなかったがそんなこと顔いろを見たらすぐわかると自慢げになった。チョコレートをビニル袋の中に戻してしっかりと口を縛り上げる。そして源田が取り返せないようにそれを俺の布団の中へ追いやった。

「というか、俺のだけ何でないんだよ」
「佐久間のは帰ってから作ろうと、思って、だから…、さくま!」

ほんの少し、期待して振り向いてみた。同時にちゅっと部屋に可愛らしいリップ音が響いた。すぐに離れたその唇は淡い赤色に染まっていて俺は身体の奥から来る欲望をぐっと抑えた。

「こっこれで今は許してくれ」

顔を真っ赤にさせるくらいならやらなければいいのにとか、呂律が微妙に回ってないところとか、すべてが俺を興奮させる材料になって離れていったその距離を縮めるように抱きよせた。

「超可愛い襲いたい」
「い、今か?」
「駄目か?」
「佐久間がいいのなら…」

多分、理性が持ち堪えてくれない








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