一人でいるには広すぎた | ナノ











「デザームさま?」

聞きなれていたはずのその声は音質はともかくトーンまで変わってしまった。一人過去に囚われこの孤立した世界に取り残された気がして、気分は相変わらず優れない「デザームさま」二度偽りの名を呼ばれる。自分の本当の名前など覚えているわけがなくましてや知ろうともしなかったがどうしてこんなに愛憎感が湧くのかがわからなかった。後ろへゆっくり振り向くとまるで心を解弛などさせないようにする様に圧迫感があるように希薄な穏やかさを持ち合わせた顔が映った。全身の汗腺の穴が身を縮め込むように収縮し最後には全て塞がれる様を感じた。彼は薄い唇を動かしそのままの声調で言った。

「貴方は昔のままですね」

彼にとっての昔とはたった数ヶ月前のことなのか、それとももっとずっと前からのことを表しているのか。そんなことは最早どうでもいいが彼の暗黙の中に存在する瞳がどうも気に入らなくて手元にあった灰皿を投げた。止められることは知っていたしそれで相手の行動を鈍らせて殺すこともできないことも全てがこの世の理のような気がした。

「早く貴方に会いたい」

緑川リュウジとして、と緑川はにこりと笑った。どうやらそれすらも彼にとっては遠い宇宙の中で起きた出来事だったに過ぎないらしい。私の心は絶望感に陥った。








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