「随分と、遅いんだな」 「起きてたのかい?」 眠れず起き上った時、隣にお前はいなかった。 しばらく月を眺めていたら扉がゆっくりと開き、そこから彼がこちらへ歩いてきた。月明かりに照らされた彼の頭髪はとても綺麗で、だけど真っ青な瞳は恐ろしいくらい冷えきっていた。自分の方へ近づいて来る足取りさえもどこか恐怖を感じた。彼が夜な夜などこへいっているのか知らないし知ってもどうにもならないと知っていたから、知らないふりをしていたんだ。だからガイもばれない様に嘘をつく。この距離は踏み出すことも離れることも許されない、境界線なのだ。 「すまない、急に用事を思い出してね」 「…別に、かまわん」 その手の口実は聞き飽きたと自然と顔をしかめると優しく抱き込まれる。言い訳を考えるのが嫌らしい彼はこうやってごまかすしか術をたまに使う。そのたびどうすればいいのかわからないのだ。軽く捕まれていただけの腕をそっと外し再びベッドへ滑り込むように潜る。拒絶されたことにガイは驚いたような表情だった。 「アッシュ?」 「…寝る」 「そうか、おやすみ」 ガイは布団からはみ出た髪へ唇をひとつ落とすと隣のベッドへ潜る。 この時間だけはせめて自分だけのものだと暗示したくて、ガイのことを考えていたら全然眠れる気がしなくて、ただひとり嘆いた。 ------ title:へそ (そろそろ、くれてもいいとおもうけれどもね) 浮気はしてないけど夜歩きするガイ様 |