亡くならないジレンマ | ナノ












彼はよく虚ろな深緑の瞳で窓の向こうを眺めている。何が楽しいのかと、彼が寝た後にその窓を覗いてみた。特に目立つものなど無かったが、畑の本当に端の方にまだ未熟で真っ赤な薔薇が一輪咲き誇っていた。俺は彼を起こさないように静かに扉を閉め、その華が咲いていた場所へ歩きだす。ちょうど満月の日のことだった。

これを引き抜いて、足で踏み付けたら、涙を知らない彼は崩れ落ちるだろうか。その手で握り潰してやろうと薔薇に触れようとすると、背後に気配を感じすぐに振り向いた。そこには花と同じ色をした彼がいた。

「ガイ…?」
「ルーク…様、」

先程かいたばかりの汗が首を伝い地面に落ちた。まだ覚醒しきっていないらしい彼は目を擦りながらこちらを見る。なんと言い訳すればいいのかわからないでいると、うっすら開いた彼の唇が微かに動いた。

「採っても、いい」
「え?」
「ガイは、それが嫌なんだろう?だったら毟ってくれても、いい」

その緑の瞳が不条理に揺れているのを見て、足元にある花を掴もうとした手を、従うべき主へ向けた。抱き上げるとそれはかなり軽い。

「風邪をひきます、帰りましょう」

彼は少し驚いた顔をしたが、こくんと頷き重たげな瞳を再び閉じた。あとでこの庭を清掃しなくては、咲くべき花も咲かなくなってしまう、と呟き屋敷へ進む足取りを速める。

その棘が自分に刺さることは無かった。


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title:暴君
(彼も俺も、矛盾している)


ガイが持ち上げられるくらい小さかった時にもう嫌われてる自覚あったアッシュ






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