ベランダランデブー | ナノ












最初は瞼の奥の闇にたそがれていた。暇を持て余した耳からはみんなの個性溢れる寝息が聞こえる。実際に目を閉じたのはずっと前だったがもうそんなことすら自分にとってはどうでもよかった。むしろ別のことでいっぱいになってしまってそれどころではない。隣に無造作に投げ出されていた手は自分の思考回路を狂わすには丁度よかった。

彼は白粉花だ。だがその肌は破裂してしまった実のように白かった。触れようとすると白い手は差し出した自分の手を握った。すっかり日に焼けてしまった自分の肌を白が浸食する気がしてゾッとした。彼は相変わらずの笑顔だった。

「どうしたの?ねむれないの?そうだなぁ、じゃあ外に行こう、外の空気を吸ったら、きっと、ぐっすり眠れるよ」

彼は顔色ひとつ変えずに喋り続けそのかわりにとびっきりの笑顔でこちらをみた。白が腕を伝い全身まで覆う。俺は思わず視線を逸らした。

「見て豪炎寺くん、空が綺麗だよ」

気付いたら白い手は隣にあるだけで自分を縛り上げてはいなかった。空は八割ほど曇天に覆われていて解放されたついでに訂正でもしてやろうかと思ったが彼の眼は曇りひとつない輝きを放っていた。わけがわからなくなってゆっくり瞼を閉じてそしてこう言った。そんな目で見られたら頷くほかなどないではないかと。吹雪は一瞬驚いた顔をして瞼を閉じた。








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