不源佐久 | ナノ












ねぇ不動、仕事場にお嫁さん連れてこないでよ」
「は?」

きっちり着こなしたはずのスーツがずれた気がした。今日もごく普通の一日だと思っていたが、今日は最悪の日らしい。怖い顔をしている小鳥遊の後ろから、少し気まずそうな顔でそいつは現れた。ふどうと俺の名前を呼んだのは確かに俺の身内だったが嫁という選択肢は見た目上ないだろうと舌打ちをした。相変わらずの性悪女だぜそう思ったのと同時に周りの男どもが騒ぎだす。ああイライラする。手を掴みオフィスの扉を豪快に開閉した。後ろから叫び声が聞こえるが気にしないことにした。昼時の屋上はカップルだかそういうやつらでいっぱいで邪魔だったので邪気を飛ばしてやったらすぐに居なくなりやがった。

「てめェなんでここにいるんだよ」
「あの、そのだな。弁当を」
「今日は買って食べるっていったじゃねぇか」

明け暮れた怒鳴り声をあげると源田は肩をびくっと動かし下を向いて落ち込んだ素振りをみせた。先ほどまでの怒りとは違う感情が込み上げてきたとき空のペットボトルが地面に落ちた気がして後ろを振り向いた。そこには嫌そうな顔をしたいつものお邪魔虫がいて少し安心したと言えば安心した。奴の隣には空になった缶やら箱が沢山散らばっていて長らくここに居たことを意味している。通りで最近給料が少ないと頭を悩ませている姿をよく見るわけだ。佐久間はまた嫌々言葉を発した。

「いいじゃねぇかいい気分転換になったろ?不動ちゃん」

俺が呼んだんだぜと一言つけたし奴は再び眠る体制に入った(まだ寝る気かこいつ)放置されていた源田は相変わらずあたふたしていた。俺はひとつだけ深いため息をついて「後で覚えとけよ」と一言残しその場に源田を置いてそそくさと屋上を後にした。ついでに佐久間をひと睨みして。そんなことは知らないが佐久間はめんどくせぇ奴らめ、と眉間にしわを寄せた。








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