佐久源 | ナノ












靴ひもが切れたあたりから今日はついていないと諦めていたのかもしれない。その靴ひもが切れてしまった靴で買い物にいくのだからさらについていないと思ったが隣にいるあいつの間抜けな笑顔の前ではそれすらもどうでもよくなってしまった。(実際は苦笑いに近かった)

パスタが安いから今日はカルボナーラだな。といって源田は買い物かごに二人分のパスタを投げ入れる。そのことに少し満足感を抱きながらパスタの袋ををじっと見て呟いた。

「お前ナポリタンとか作れんの?」
「ああ」
「へぇ」

それから会話は途切れたがいつものことなので気にはしなかった。痛いくらいの静寂さが俺たちにはちょうどいいからだと言い聞かせた。

ちぎれた靴ひもは泥まみれになっていた。これ以上無残な姿になる前にと無理やり球結びで括ってやると源田が心配そうに見てきたので鼻で笑ってやった。すると源田は両腕に買い物袋を持ってこちらに寄ってきて歩けるか?と促した。どうやら余程その手に持った荷物が重いらしい。ついに源田が痺れを切らく一人でいそいそと帰ろうとするのを引き留めて左手に持っていた軽そうな方の買い物袋を持ち上げ源田の空いた左手に自分の泥のついた右手を重ねてやった。それだけのことでどきりとするのはまだ心が追い付いていないから。

「ナポリタンとか作れんの?」
「…今日作るか」

二度聞いたのは食べたかったからだなんて言えるはずもなく照れ隠しにぎゅっと手を握ると源田がトマトソースと呟いたので大声で笑ってやった。


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甘いのってお題だったのですが、特に甘くもない 







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