人はそれを愛と呼ぶ | ナノ











※みんなどうしようもない大人


家に帰ったら誰かが迎えてくれるって凄く羨ましい事だと思ってた。昔の自分は帰る家すらなかったが今はおかえりと迎えてくれる人がいる(まあそれが美人で可愛い奥さんとは限らないが)今思い返せば昔の自分は心底寂しかった奴だと思う。今日も健康のためだとか言って階段を駆け上がる。正直これが一番体力を使うということをまだ理解できてない。マンションはやはり高い場所に限るといって最上階に部屋を決めたのはどこのどいつだったか。そんなことを思いながらいつもの現代なのに手動式の会社のドアを開けるより控えめに家の戸を開ける。こんな時間に大きな音をたてて帰宅することが非常識だと言うことを知っているから(一応大人としてのマナーは守っているつもりだ)それでも今日溜まったストレスや怒りで開けたのはよかったが閉めるときに力一杯閉めてしまった。思わず顔が歪む。すると急に玄関の電気がついて驚いた。そして普段ならもう寝ているはずの見慣れた顔の相手が洗面所から顔をだした。

「おかえり不動」
「お前なんで起きてるんだよ」
「俺もさっき帰ってきたばかりなんだ」

そう言うとにへらと笑い風呂なら沸いてるぞと一言残し奥の居間に歩いて行った。髪の毛から落ちた水滴が地面に落ちたのを見て溜息をつきながらすぐそばに置いてあったタオルで拭く(いつも俺やってもらってるからそれのお礼だと自分に言い訳をした)その後は拭くとすぐに衣類を脱ぎ捨て浴室へ向かった。

風呂からあがると部屋の電気がまだ灯されていてそろりと物音をたてないように居間へ歩く。源田はそこに自分に背を向けるように座っていた。手にはサッカーの雑誌。自分がもう大人だということも忘れて無邪気な好奇心に負けてに近づいた。

「懐かしいもんみてんな」
「つい昔を思い出してな」

会社帰りはどうも怠い。今日もそれは例外ではなかった。目の前に丁度良いものがあったので肩に当たる部分に自分の頭をのせる。鼻で息をするとくすぐったそうに体をよじった。

「同じ匂いがする」
「洗剤とか一緒だしな」

ふんっと鼻で笑ったらその息が相手の首筋付近の髪の毛を揺らした。眠いと言うことを口実に長い時間居座っていたら苦笑いされて手を頭にのっけられた。濡れた髪を触られて嬉しい人は居ないだろうが俺は少し嬉しかったと断言する(撫でられたら嬉しい動物と一緒なだけだ)そうしたら相手と顔が凄く近いことに気が付いて(なにかよくわからないけど魔がさしたんだとおもう)空いた手で相手の腰のラインをなぞり服の隙間から手を突っ込んだ。当然相手は同性でしかもかなりの鈍感だということは承知だ。抵抗と言わんばかりに手足をじたばたさせて嫌がっているが腕の動きは止めないつもりだ。

「ま、まてっ不動!」
「なんでだよ」
「さっ佐久間が帰ってくる」
「もう帰ってきてるし何してるんだよ馬鹿共」
「あ?何ってナニだろ?」
「やるなら地べたでやれよ。俺がソファーで寝るとか有り得ねぇ」

口論は留まるどころかさらに激しさを増してとても口では言えないような言葉が両者の間を飛び交う。相手に負えなくなった源田は数分前に自室に戻ってしまった。隣の部屋の鬼道に怒られたのは言うまでもない。







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