VD_こっそり覗いてる呪霊を祓う五条 見られているような気がする、とそう彼女が相談してくるから、五条は彼女の部屋へ入る口実が出来て意気揚々と上がり込んだ。 付き合っているのに数える程しか部屋へ入れてくれなかった彼女が、すんなり部屋へ入れてくれるものだから、普段は面倒だと思うような不可思議な出来事も悪くはない。 結界の張ってある彼女の部屋へ入って、五条が窓を見つめるから、彼女が一緒にそこを見つめていると、目にも止まらぬ速さでそこに寄り、窓を開けて手を外に伸ばしている。彼は手に何か掴んで彼女の元へ戻ってくると、それを差し出してくる。 「低級呪霊?」 「にょおん」 猫のよう犬のような、もこもこしたようなそれは、どう見ても可愛い生き物にしか見えない。五条に小さな足を片足掴まれてバタバタと逃げ出そうとしている。可愛い、彼女はもこもこのそれに思わずそう呟いていた。 「よし!祓うか!」 「ちょっと待って!!」 五条の手から呪霊を奪って彼女は胸に抱いた。きゅう、と彼女が抱き締めると呪霊は尻尾のようなものを嬉しそうにパタパタと振っている。 「ちょっとちょっとぉ、その呪霊が視線送ってたストーカーだよ?」 「高専でも低級呪霊使役したりするよね?!この子も良くない?」 低級呪霊も扱い方を間違えなければそう危ないことはない。どうもこの呪霊はさほど力はないらしい。だから彼女の家の窓からこっそりと覗くことしか出来なかったのだ。そんなことは五条の六眼をもってすればわかることのはずなのに、彼は面白くなさそうにしている。 「駄目!」 「何で?!」 「そのおっぱいは僕専用だから!」 「とんでもない理由!」 ぐいぐいと彼女から五条が呪霊を引っ張って引き剥がそうとすると、にょお〜ん、と悲しそうに呪霊が愛らしく鳴いている。 「この呪霊の中身オッサンだったらどうすんの!胸に顔埋めて御満悦とか絶対エロオヤジ!」 「これだけ動物模してるんだからそんなわけないでしょ!言いがかりはやめて!」 「そんなに飼いたいなら、心配だから僕も一緒に住むからね!!」 はっ、と無意識に言った自分の言葉に五条は内心ガッツポーズをする。今の時代に珍しく真面目な彼女は、部屋にもそうそう入れてくれない。同棲などまた夢の夢だろうが、可愛い呪霊に一瞬で心を奪われた彼女ならガードが緩むのではないだろうか。ここで五条からの申し出を断れば、呪霊が消される未来しかない。 「祓わない?」 「祓わない祓わない」 「・・・じゃあ、ん〜、まあ大丈夫ってわかるまでなら」 「それでいいよ」 何言ってんの同棲するんだよ期間限定なわけない、と五条は心の中でだけ思って、彼女にはイイ顔をして笑ってやる。呪霊もたまには役に立つもんだ、と彼女の胸の中で御満悦な呪霊の憎き頭を五条がわしゃわしゃと撫でてやる。 「にょおん!」 五条へ振り向いた呪霊は、彼の雑な撫で方にも嬉しそうにキラキラした瞳を向けて純粋そうに愛想を振り撒いている。 なんだオマエ結構可愛いな・・・ このあと、彼女より五条が滅茶苦茶可愛がった。 (20220211_プラス掲載) |