ゆめしょ | ナノ 見返りを求める高専五条


見返りを求める高専五条



 お願い五条助けて、と瞳を少々潤ませた名前は、後悔しながらこの言葉を紡ぐ。
 低級呪霊なんて一人で余裕だし、と名前が声高らかにそう言うと、泣き見せんなよ、と五条が彼女に鼻で笑ったのは少し前だった。名前の軽口に、五条はその辺の大きな岩に座り込んで成り行きをただ眺めている。名前の言葉に五条は完全に観戦モードに入っていて、膝に肘をついて頬杖をしていた。手助けするつもりは毛頭無い。

「ごめんなさい助けてください。」
「は?何て?全然聞こえねぇんだけど?」

 消え入る声の名前に、聞こえているはずの五条はまるで聞こえていないかのように振る舞っている。五条は、自信満々だった名前の傲り昂った態度を威圧的にからかって謗ってやるのが、楽しくて仕方ない。
 助けてください、に、ごめんなさい、までつけ、あまつさえ敬語で話しているのに、五条は楽に岩に座ったままだった。
 名前はどうしても助けて欲しい。何故なら呪霊の動きが怪しいのだ。もやもやした黒い何かが名前の身体にうねうねと纏わり付こうとしている。その動きが生理的に無理なのだ。気持ち悪いし怖い。
 救いなのは、呪霊が名前にそろそろと遠慮気味に触ってきていることだ。楽に座っていてもその格の違いがわかるのか、低級呪霊は五条の様子を窺っているようだった。流石五条悟、と名前は呪霊の気味の悪さをなんとか考えないようにして、五条が気に入りそうな言葉を絞り出す。

「何でも言うこと聞くから助けてください!!」
「ふーん。」

 五条は、つまらなさそうに携帯を取り出すと、ポチポチと文字盤を操作している。その、どうでも良さそうな態度に名前はどんどんと不安が煽られてくる。

「何?その敬語使っとけば良いだろ的な言い方?舐めてんの?」

 はあ、と溜め息をついて、眉間に皺を寄せて余計につまらなさそうな顔をした五条が、名前にそう言ってくる。名前は、何が正解かわからず、唇を震わせて不安に涙を堪えながら必死に五条に懇願する。

「五条、お願い、なんでもするから助けて。」

 涙が溢れそうになりながら震える声で名前が呟けば、五条は怠そうに丸めた背中をそのままに立ち上がって歩いてくる。名前は、やっと目の前に立った五条に助けてもらえると期待して胸を撫で下ろした。名前は、顎を下から掴まれ、五条に目を合わせるために上を向かせられる。

「何でも?」

 ニタァと笑っている五条に、名前は背筋からサァと血の気が引いていく。同級生として上手く付き合っているはずだから、なんでもする、という言葉はきっと缶ジュース奢るぐらいのものだと思っていたのだ。背中に控えめにもやもやと纏わり付こうとしている呪霊が名前には可愛く思えるほど、五条の笑みは気味が悪い。とんでもないことを要求される、と見越して体を縮こまらせる。一生五条の為にタダ働きさせられることも覚悟した。

「パンツ見せろ。」
「・・・?え?ごめん?聞き間違い?ぱん・・・?なんて・・・?」
「パンツ見せろ。」

 五条は寸分違わす同じことを2回言った。名前のサアと引いたはずの血の気が戻ってくる。聞き間違いだと思った要求は聞き間違いではなかった。五条の小学生のようや要求に、名前の不安に引いた血の気は戻ってきたが、だからと言ってその通り見せるのは憚られる。

「いやいやいや。どういうこと?」
「どういうこともなんもねぇけど。まあ、嫌ならいいけど。」

 五条が名前の顎から手を離して数歩後退ると、呪霊がまた彼女に纏わり付こうとしてくる。ひ、と名前は喉を引き攣らせて、呪霊の気持ちの悪さに五条の袖を指先で捕まえる。その仕草は、見せるから待って、と言っているもので、名前は意を決して制服のスカートを捲り上げる。ぱぱっ、と上げたスカートを一瞬で戻した名前の顔は恥ずかしさに赤くなっている。

「は?」
「見せた!」

 一瞬の出来事に、見せたから良いだろう、という雑な態度の名前が気に入らなくて、五条は不満そうにまた一歩後退る。

「ちょ、待って!見せた!」
「見てねえよ。俺が瞬きしてる間にすんな。」
「なんでパンツ見せなきゃいけないの?!助けてよ!」
「俺が見たいから。」

 いやだからなんで見たいの?!と名前は心の中で叫ぶが、この問いは堂々巡りにしかならない。
 五条はその場にヤンキーのように座り込むと、早くしろよ、と圧をかけてくる。再度意を決して名前がゆっくりスカートの裾を上げると、下から眺めている五条から、それが上がりきるとストップをかけられた。この状態でストップなどという羞恥に名前の頬は更に赤く染まっていく。

「ね、もういい?」
「まだダメ。」

 じろじろと五条に見られて恥ずかしさに体温が上がり、名前の身体はじわじわと汗ばんでくる。今日どんなのはいてたっけ変なのはいてないっけ、とまさか他人に見られると思ってなくて何も考えずにはいたショーツに頭がぐらぐらとしてくる。
 恥ずかしさに俯いていると、ショーツを見ていた五条が急に上を見上げてくるから、ぱちりと目があってしまった。それと同時にショーツの上から秘部を撫でられる感覚がして、びくり、と名前の体が震える。バチン、と彼女の後ろで呪霊が爆ぜると、衝撃で前につんのめって倒れる覚悟をして目を閉じた。
 地面の固い感触を覚悟していたのに、五条が受け止めてくれたらしく、そう固くないものに鼻が当たる。ツンと痛む鼻でなんとか、ありがと、と名前が呟くと、先程と似た感触が秘部を這っている。

「ちょ、え、ひぃ!やめて!」
「あ?さっきの呪霊に触らせてただろ?」
「その喜んで触らせてたような表現やめてくれる?!」

 五条がショーツの上から秘部を厭らしく撫でてくるから、彼女は思わず腰を跳ねさせると、調子に乗った五条はショーツの中に指を入れようとしてくる。流石にそれは許容出来ず、名前が滅茶苦茶にブンブンと腕を振っていると、五条の顎に運良く当たった。

「イッテ!?何してんだ暴力女!」
「煩い!パンツ見せたからいいでしょ!そんなとこ触ること許してない!!」
「あんな水玉パンツ見せてチャラとか割りに合わねぇ。もっとヒラヒラの可愛いのとか、レースで透けてるのとかにしろよ。」
「はあ?!彼氏でもないのに注文つけるのやめてよ!!」

 帳が降りてるからって屋外で何させるのよ、と名前が怒りながらツカツカと帳から出ようとするから、五条はこの遣り取りに面倒そうかつ不満そうに眉間に皺を寄せながら彼女の後ろをついていっている。

 こんなことを言っているが、この少年、この少女がめろめろに大好きである。

 水玉柄のショーツにも、恥ずかしそうに俯く姿にも、ショーツ越しに秘部を触られて腰を震わせた姿にも、大いに興奮していたりする。

(20211219プラス掲載_20220522加筆訂正)



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