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第51章【絶望の淵で】












夢子はスマブラ城に来てから久しぶりに自分の部屋へ入った。
部屋は前と変わらない。
ここに来て参戦者の皆の無事な顔を見て安心した。
しかしひとつ気がかりな事がある。
サラの事だ。
サラは自分のことを『お姉さん』と呼んでくる。
しかし夢子にはサラの記憶がない。
サラとどう接すればいいのかわからないのだ。
夢子「あの子の事を妹として見てもいいの…?」
夢子はひとり悩んでいた。
彼女は本当に兄弟なのだろうか?
その答えがはっきりしない。
夢子「そうだ、リンクさんに相談してみよう…。」
夢子はリンクに話す決断をした。
そしてリンクの部屋へと向かう。
扉の前にたちノックをする夢子。
コンコン


しかし返事はない。
夢子「おかしいな…今日はトレーニングも対戦もないはずなのに…」
ドアノブを回すと鍵がかかっていないことに気づいた。
夢子「あれ…空いてる…。リンクさん?いないんですか?…入りますよ?」
扉を開いた瞬間、絶望的な光景が夢子の目に飛び込んできた。




























リンクとサラがキスをしていたのだ。


夢子はショックで呆然と立ち尽くす。
声にならない声を出す。
夢子「リ…ン…ク…さん…!」
リンクはすぐに扉の前に立っている夢子に気づき、すぐにサラを突き飛ばす。
そして必死に夢子に訴え掛ける。
リンク「 夢子さん!これは違うんです!」
夢子「酷い…っ!」
リンク「夢子さん!」
夢子「・・・・ううっ!」
夢子は泣きながらリンクの部屋を離れた。
後を追おうとするリンクをサラが引き止める。
サラ「リンクさん…行かないで…。」














・・・10分前








リンクは自分の部屋でマスターソードを磨いていた。
刃は光り、リンクの顔を映し出す。
リンク「夢子さん…最近ダークの事ばかり気にしてますね…。」
拳を握り締めるリンク。
リンク「俺…何やきもち妬いてるんでしょうか…阿呆らしい…。」
???「お姉さんはダークさんの事を愛しているのよ。」
リンク「!?誰ですか!?」
リンクが顔を上げると そこにはサラが立っていた。
リンク「…サラさんですか…いつの間に…。」
サラ「お姉さんが愛しているのは貴方じゃないの。」
リンク「…何をさっきからワケのわからないこと…。」
サラ「だってそうでしょう?現に貴方の事なんてこれっぽっちも見ちゃいない。」
リンク「貴女には関係ないですよ…。」
サラ「私は貴方の事が好きなの。」
リンク「…は?」
突然ワケもわからなく告白されたリンク。
サラを見て唖然とする。
サラ「あんな女より私のほうが魅力があるわ。」
リンク「突然何なんですか…?!」
サラ「お姉さんなんかのことなんて忘れて私と付き合って。」
リンク「さっきから意味のわからないことばかり言わないでください!怒りますよ!?」


パタパタ ・・・

リンクの部屋へ足音が近づいてくるのが聞こえた。
その足音を聞いたサラはリンクへと迫る。
リンク「…!」


夢子「空いてる…リンクさん…?いないんですか?…入りますよ?」


ガチャッ・・・








リンクとサラのキスシーンを見た夢子は走りながらボロボロと涙を流していた。
あまりの突然のことにショックが大きすぎて意識が朦朧とする。
夢子「酷い…酷い…!なんであんな…!」
夢子は城門へと出た。
外はすっかり暗くなって月明かりが足元を照らす。
夢子「酷いよぅ…私だってまだなのに…!」
声を出して泣く夢子。
こんなに泣くのはいつぶりだろうか。
その場にしゃがみ込み涙を流し続ける。
地面は涙で濡れる。







「おい、大丈夫か?」




泣きじゃくる夢子の背後から声がした。






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