69

夢子とブラピは某ファミレスに辿り着いた。
意外と近場に有ったので此処まで来るのは大変ではなかった。
外の塀にわたあめを繋ぐ夢子。
ブラピは目を輝かせていた。
店に入る前から周辺にはとても美味しそうな良い匂いがしているから。






【69=天使は意外と高所恐怖症】








ふたりはレストランの中に入る。
店員が何人様か聞いてきて2人と答え、席に着く。
ブラピはそわそわしている。こういう場所は初めてなのだろう。
夢子はドリンクバーも頼んだ。
追加料金がでるが…自分も喉が渇いていたし、
ブラピにはここで大きな借りを作って置こうと考えたのだ。
こういうタイプにはきっと良く効くだろう。
夢子も考えてはいた。
ブラピはハンバーグとオムライスとトマトパスタとチーズピザを頼んだ。
…この天使、一切遠慮がない。
夢子はとりあえず、小さなデザートのアイスクリーム1つ。

暫くして運ばれてきた料理の数々を見て目を光らせるブラピ。

夢子「沢山食べてね。」
ブラピ「当たり前だ!折角だから俺がぜーんぶ食いつくしてやるんだからな!」
夢子「君が頼んだんでしょ…残さないようにね。」

ブラピは物凄い勢いで食事を平らげていく。
その勢いは…宛らカービィの様な…まあ流石にそこまではないか?
兎に角息を吸う様に食事が無くなっていく。
ある程度、料理を胃に閉まってからブラピは頬っぺたにケチャップをつけながら夢子に問う。

ブラピ「…なあ…」
夢子「何?」
ブラピ「何で奢ってくれたんだ?しかもこんな旨い飯…」
夢子「何でって、うーん…普通に困ってたから?」
ブラピ「…。」
夢子「な、なに?どうしたの急に。さっきまでの勢いは何処に行ったのよ?」

ブラピ「…と…。」

夢子「え?」



ブラピ「ありがとう、って言ってんだよ!!何度も言わせんな!!」


ブラピはバンッとテーブルを叩いて夢子にお礼を言う。

夢子「…公共の場だから大声出すのは止めようね?あとテーブル叩くのも駄目だよ。」
ブラピ「…ああ、そうだったか…俺としたことが周りが見えてなかった。」
夢子「でも貴方…本当にセミ食べるつもりだったの?」
ブラピ「…ネカフェで動画見てたら丁度セミ揚げて食う動画見かけてな。これだ!って思ったんだよ。」
夢子「セミかぁ…うーん聞いたことはあるけど…やっぱりちゃんとした食事取ったほうが良いよ。」
ブラピ「でも…もう時期所持金も底をつくんだ…。」
夢子「うーん、どうしたらいいんだろね。流石に高校生がホームレスはつらいよね。
        …あ、そうだ、ウチくる?」

ブラピ「絶対ヤダ!!」


凄い剣幕で即答するブラピ。

夢子「何で?まあ人数あるから多少煩いかもだけど居心地は良いよ?うち一等地だし。」
ブラピ「だって…あのほんわか天使がいるだろ…アイツと同じ空気常に吸うとかマジ無理だわ。」
夢子「ピット君とても良い子だよ?…あ、ライバル関係だからプライド許さない〜って感じ?」
ブラピ「…まあそんなとこ。俺等にも色々事情があるんだ。」
夢子「うーん。じゃあ他に思い当たるのは‥‥あの人たちしかいない。気は乗らないけど…」
ブラピ「ん?あの人たち?」






夢子はブラピに食事をたんまり奢ってその後自分たちの住むタワマンへとブラピを連れてきた。
高層ビルの圧を感じるブラピ。



ブラピ「で…でかい…。お前らこんなとこ住んでんのかよ…。」
夢子「さあ、いこう。」
ブラピ「待て待て!だからあの天使と同じ空気を吸うのは…」
夢子「私の家じゃないよ、目的は…最上階だから。


最上階。
そう、そこはベレトとアルフレの家。
夢子の部屋は流石にこれ以上同居人が増えるのは大変だと考えて
ベレトとアルフレの2人の住んでるあのクソ広い部屋なら
ブラピひとりくらいどうにかなるのではと考えたのだ。
只、夢子には荷が重い。
何故ならベレトは兎も角あの問題児のアルフレがいるから。
絶対自分に絡んでくる予感がして嫌でたまらない。
自ら進んであの家に行くのも恐ろしい。
関わり方次第では一歩待ちがえれば殺されるかもしれない。
でもブラピが衣食住困っているのなら
一応参戦者でありつつ味方でもあるし、手助けはしてあげたい。
くそ生意気だけど、意外と素直な所もあるのだから。何だか放っておけなかった。
単に情けというものだろうか…。


80階に登るエレベーター。
ブラピは手すりに捕まって震えている。

ブラピ「何なんだこれ!!怖すぎるだろ!?」
夢子「貴方本当に天界に住んでたの?…そういえばピット君もびびってたなぁ。変な天使たち。」
ブラピ「誰が変な天使だっ!!!変なのはアイツだけだ!!俺は断じて変じゃない!!」
夢子「どうかなー?」
ブラピ「くそ…飯奢られたし何も反論できん…」


ポーン・・・


80階に着いた。
夢子は重い脚を動かし奥の部屋のインターホンを鳴らした。
するとやっぱり、アイツがいた。


アルフレ《はーい。…誰?》
夢子「…私だけど。」
アルフレ《…君か。入って良いよー。鍵なら掛かってないから。フフフ…。》


夢子(やっぱりやりにくいわこの感じ。)


夢子は部屋に入った。
ブラピはキョロキョロと辺りを見回している。
部屋は暗い。カーテンの隙間からの薄い日光しか入らない。

夢子「日中だって言ってもこの暗さは…」



アルフレ「‥‥夢子★」


ガバッ!!!



突然暗闇からアルフレが夢子の背後に飛びついてきた。

夢子「ヒイッ!?」

夢子は青ざめる。
アルフレは彼女を後ろから抱きしめる。
そして彼女の首筋に顔を近づけて髪の匂いを嗅いでくる。
控えめにヤバイ。

アルフレ「ぁぁ…君から来てくれるなんて嬉しいよ…あ、もしかしてその気になった?良いよ、僕の胸の中いつでも開いてるから。」
夢子「違う違う!!そんなわけないでしょ!?何処まで勘違い男なの貴方は!?脳みそ腐ってるんじゃないの!?離れて!!」
アルフレ「…ん???じゃあ何しに来たの?」
夢子「…ブラピを連れてきたの。困っていたから…。」

アルフレ「ぁ゙?!」


ブラピ「アル兄ーーーー!!!」

ブラピはアルフレを見て目を輝かせる。
やはりあこがれの存在らしい。
アルフレは一気にシラケた。


アルフレ「君…実に…何てめんどくさいモノを…」
夢子「いいじゃない、ブラピは貴方の事好いてるのでしょう?ほら、珍しい逸材じゃない。」
アルフレ「僕は君以外の愛何て要らないんだけど。」
ブラピ「アル兄凄い場所に住んでるって聞いてたけど…こんな場所だなんて!!流石!!」
アルフレ「…僕こういうのホント嫌何だけど。疲れるんだよね。はあ…」
ブラピ「アル兄はほんとクールでカッコイイ!!憧れる!!」
夢子「…クール?何処が…いつも不気味に笑ってるだけじゃない?」
ブラピ「そこが良いんだよ!!!お前の目は節穴だな!?」
アルフレ「僕がカッコイイのは僕が一番理解してるし、夢子だって理解してるだろ?」
夢子「。」
アルフレ「…で、今日は何の用?ただ遊びに来たわけじゃないんでしょ?」
夢子「あのね…ブラピ、今衣食住に困ってるんだって。」
アルフレ「へー。それで?」
夢子「だから、お願いできないかなって…勿論ベレト先生にも許可貰うつもりでいて…。」
アルフレ「‥‥何でそんなめんどくさい事受け入れなきゃいけないの?」
夢子「ブラピ、今日何かお腹空きすぎてセミなんか食べようとしてたのよ!?それ聞いて何とも思わないの!?子分なんでしょ??」
アルフレ「虫食べようがゴミ食べようが僕には関係ないでしょ。勝手に弟分みたいになってるだけだし。」
夢子「そんな…」
ブラピ「うー‥‥。」


ブラピは珍しく涙目になっていた。
威勢が無い。わたあめより子犬になっている。

アルフレ「はあ…そんな顔されたら困るんだけど。」
ブラピ「アル兄…(うるうる)」

アルフレ「…。」
ブラピ(うるうる。)

アルフレは少し考えてから、ため息を付いて答える。

アルフレ「…しょうがないな、ちょっとだけ考えてみるよ。」
ブラピ「ほんとっすか!?」
アルフレ「うん。(非常にめんどくさそうな表情)」
ブラピ「やったあああアル兄と住めるかもしれない!!しかも一等地!!ヒャッホー!!!」
アルフレ「但し…条件があるけど。」
ブラピ「なんでもします!肩もみ掃除!!ぁ、何ならアル兄の嫌いな人間だってこの世から消しちゃいますよ!!裏仕事もどんと任せてください!!」
アルフレ「…君じゃないよ。」
ブラピ「え。」


アルフレはニヤリと笑って夢子の肩に手を置いた。
そして不気味な笑みを浮かべたまま、彼女に再度近づき耳元で囁く。



アルフレ「君に‥‥渡したいものがあるんだ。実は前から渡したかったけど…
     今回都合が良いからさ…この条件付きって事で受け取ってくれるよね?」


夢子は一気に青ざめる。
この男、やはり侮れない。

夢子「…一応聞くけど、条件って?」
アルフレ「条件って言うか、何だろう…証ってやつかな?
     これからもっと親交が深められるような素敵なアイテムだよ。」
夢子「一体何を‥‥」
アルフレ「ちょっと待っててね。取ってくるから。フフフ…。」


夢子「嫌な予感しかしない…」


夢子は震えていた。
やっぱりアルフレは苦手だ。彼のひとつひとつの動作が怖すぎる。




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