□人で身も心も凍てついていたのに、人の優しさで何もかもが溶けていく…そんな気がした。2【番外編】



イノシシは嵐の中、ニーアと夢子を乗せて駆け抜ける。
走って走って…走りついたその先は錆び付いた鉄橋の下だった。







【人で身も心も凍てついていたのに、人の優しさで何もかもが溶けていく…そんな気がした。2】








イノシシはニーアと夢子を下すと傍でうずくまってしまった。
夢子はイノシシの背中を撫でる。

夢子「雨の中いっぱい走ってくれてありがとう…ゆっくり休んでね。」
イノシシ「ブゴブゴ・・・」


鉄橋の下は陰となり雨粒が当たらない場所だった。
ニーアは…まだ痺れていた。
夢子は心配そうにニーアの顔を覗き込む。

夢子「…大丈夫ですか?ニーアさん。」
ニーア「ああ…俺はその…なんだ…」

ニーアは夢子をチラチラと見ては顔を赤くし再び見たり、変な行動をしている。
夢子は気づいていなかった。


雨に濡れた夢子の姿はあり得ないくらい際どいとー・・・


ニーアは悶えていた。それでなくとも夢子の服装は問題がありすぎる。
体が痺れているせいでどうしても視線が反らしずらい。
…というか…



ニーア(あぁ…このまま夢子のことずっと見つめていたい。)







・・・。




変態だ。




夢子はニーアの下心も知らず心配そうに顔を覗き込む。
夢子「顔、赤いですよ?熱あるのでは?」
ニーア「こ、これは…あれだ…」
夢子「…あれって?」
ニーア「今、俺の中で善良な俺と悪質な俺が闘っている訳で…」
夢子「…はい?」
ニーア「善良な俺がかなり負けそうな状態なんだ。負けたら、その時はごめん。」
夢子「…???…うーん、頭の中も痺れちゃったのかなぁ…。」




それから暫く経ったが雨はまだ止みそうにもない。
ニーアは普通に立てるくらいまで回復していた。

夢子「クエストで集めるはずの薬草、役に立ちましたね。」
ニーア「ああ、クエスト主には悪いが…助かったな。」
夢子「ニーアさんも元気になったしそろそろカイネさんたちと合流しますか?」
ニーア「あいつ等ならあの位のマモノ、大丈夫だろう。それにー・・・」
夢子「それに?」



ニーアは頬を赤くして言う。

ニーア「もう少し…夢子とふたりきりでいたくて。」


夢子はきょとんとしている。


夢子が答える前に横やりが入る。


白の書「ページが濡れた影響で少しの間黙っておったが…ニーア、お主下心ありすぎだぞ。」
ニーア「ああ、シロ、もう死んだかと思ったよ。復活してよかった!」
白の書「我を勝手に殺すでない!」
夢子「うん、ふたりともいつも通りですね!」
ニーア「シロがもう少し黙ってたら…良いムードになってた可能性あったのに…。」
白の書「人のせいにするでない!」
夢子「私…前にこんな出来事があったの…思い出しました。」
ニーア「…どんな事だ?」





夢子「雨の日に、人に追われて、石とか割れた瓶とか色々投げられて…
      痛くて苦しくて…。だから一人になろうって。
      誰も、誰にも触れないで、ずっと孤独に生きていこう、それが私の人生だって。
      たまに優しい人に触れて、その意思が揺らいでも…最後は裏切られて…騙されて…
      私は人を信じたい…本当は信じたいんです。人間が好きだから。
      こんな私…人にも神にも見捨てられた私を…ニーアさんは信じられますか?」



ニーア「…夢子…!?」
夢子「ごめんなさい、急に訳わからない事言ってしまって…。
      なんか感情が溢れちゃいました。」
ニーア「俺は、信じるよ。君の事。」
夢子「え…?」
ニーア「君が俺を信じてくれようとしてること、伝わってるから。
    …もう一人で苦しまないでくれ。」
夢子「・・・!!!」
ニーア「俺たち皆脳筋な奴らばかりだから、鈍感なとこあるけど…
    それでも、辛い過去を乗り越えたメンバーだから…
    だから君の心の闇も俺がいつか奪って見せる。
    信じてくれ。時間が掛かってもいいから…俺のことも…」
夢子「ニーアさん…。」
ニーア「俺は君のこと信じてるから。立派な仲間だしな!」
夢子「…はいっ!」


夢子は目を潤ませ柔らかな笑顔を浮かべた。



ニーアは…



思わず夢子を抱きしめてしまった。


あまりにも夢子が可愛すぎたのだ。





夢子は驚いて騒ぐ。




夢子「ちょ…ニーアさん!」
ニーア「…夢子、濡れてるし寒いだろ?俺が温めてやるから…こうしていよう?」
夢子「何言ってるんですか!?私は雨に濡れるのは慣れっこですから…って
     なんで余計力込めるんですかー!離してくださいー!///」
ニーア「フフフ、どうしよっかなー♪」
白の書「ニーア…悪ふざけも大概にせんと…そのうち罰か下るぞ。」
ニーア「シロってば怖いこと言うなよー♪な、夢子。今日は一緒に寝ような?なー♪」






カイネ「何が『一緒に寝よう〜』だ。寝言は寝てからにしろ。」






そこには血相を変えてイノシシに乗ってきたカイネとイノシシ酔いしてるエミールの姿があった。
カイネはイノシシから飛び降りると夢子からニーアを蹴って引き離す。

ニーア「ぇ…二人とももう来たのか…。」
白の書「危うく夢子が危ない目に遭う所だったぞ…今回は下着女には感謝だな。」
カイネ「いいか、ニーア。今日も明日も明後日も、夢子と寝るのは私だ。お前には指一本触れさせん。
    夢子もコイツと寝るなよ。何してくるかわかったもんじゃない。」
ニーア「えええ…俺ってそんなに危ない感じで見られてるのか?」
エミール「そういうことだからニーアさんは僕と寝ましょう!」
ニーア「。」










空は晴れていく。
夢子の心も少しだけ晴れた気がした。
いつかは澄み渡る大空のように、この黒雲がなくなりますように。




〜人で身も心も凍てついて〜



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