72


ルミレが夢子の首を絞めて立っていたから。




ルミレ「逃げちゃいやですわよ…?」



【72】



一瞬の隙をルミレに付かれたのだ。



ルミレ「ご機嫌ようルフレ様。さっきぶりですわね?」
夢子「カハッ…ルフレ…逃げて‥!!!」
ルミレは力を緩める気配はない。
夢子の気管は容赦なくルミレから生えた茨に締め付けられる。
ルフレ「夢子!!ルミレ…君は一体そこまでして僕を追い回す…?!」
ルミレ「さあ、なんででしょうか。
    ルフレ様、ほんとは瘴気なんかにやられてなかったのですね。
    …残念ですわ。でも瘴気の影響受けずに尚且つ私の魅了にすら耐えた…
    そこは評価しませんとね。」
ルフレ「夢子を離すんだ。…死にたくなければ…。」
ルミレ「死って何でしょう。無になるって何でしょう。
    最初から空っぽな私にはどちらも解らないままですわ。
    それよりルフレ様、今からでも遅くはないですよ、
    降伏してください。私と一緒にこの国で楽しく暮らしましょう?」
ルフレ「冗談でも笑えないな。君は僕の何を理解してる?
    僕の事何も知らないのに軽々しく愛を語ろうとするだなんて軽率だよ。」
ルミレ「そんなに雑談しててもいいのかしら?私とお話するのが楽しいのはわかりますが、
    彼女―…もう意識が飛びそうでしてよ?」
夢子「っ…!」
ルフレ(このままじゃ夢子が…どうにかしないと‥‥)




ルフレは再び魔導書を開く。
ルミレは笑いながらその姿を見て言う。




ルミレ「魔導書で攻撃するの、良いと思いますが夢子さんまで巻き添え喰らいますわよ?
    貴方は夢子さんを傷つけることなんて出来ないってそれは良く知ってますから。」
ルフレ「ああ、そうだね。このままだと夢子も傷ついてしまう。
    でも僕は軍師。今まで幾つもの戦を勝ち進んできた脳がここにある。
    ルミレ、君は僕に倒される運命だ。



   エルウインド!!!」





ルフレの放った魔法が空中でかまいたちのように飛ぶ。
その風はルミレと夢子には当たる様子がない。



ルミレ「あら、やっぱり夢子さんに当たるのが怖くて攻撃の的外したのですね?フフ。」
ルフレ「君の眼は節穴かい?」
ルミレ「…?」




ルフレの放ったウインドの風の刃はルミレと夢子の立っている入り口の近くの大木にあたると
ゆっくりメキメキと音を立ててルミレに倒れた。
突然の出来事にルミレは対処できず、そのまま大木の下敷きになった。
衝撃で夢子はルミレから逃れられた。




ルフレ「どうやら勝利の女神は僕に微笑んだようだね。」
ルフレはすぐに夢子のもとに駆け寄る。
ルフレ「夢子!大丈夫?!」
夢子「ケホケホッ…ルフレ…。」
ルフレ「ごめんよ、苦しかっただろ?」
夢子「大丈夫…ハッ、ルミレは‥?」
ルフレ「今は大木の真下さ。死んだとは思えないけど
    相当大きな大木だから重くてしばらく動けないだろね。
    さあ、夢子。この城から離れよう!」
夢子「うん…!」





二人は城から離れた。
枯れた土地は足元に何もなく走りやすい。
空が相変わらず分厚い雨雲に覆われている。
二人はしばらく走った先にある枯れた木々の生い茂る森へと逃げた。

ルフレ「前にもここに逃げた気がするけど…。」
夢子「ここ、幻双国に通じる魔法陣があったはずよ。
      きっとここからダークにぃや沙羅も偵察に来てたんだわ。」
ルフレ「そっか…。」
夢子「ルフレ、足の傷大丈夫?ルミレにやられたの…やっぱり痛そう。」
ルフレ「ああ、あの茨の鎖か…あれは悪趣味だよね。」
夢子「私傷薬持ってるから、塗ってあげるわ。」
ルフレ「ありがとう。」



夢子は痛々しい傷を見ながらつぶやく。
夢子「でもあの人…ルミレはどうしてこうもルフレに執着するのかしら。」

ルフレ「彼女、聞いてもいないのに独りで勝手にベラベラ喋ってくれたんだけど
    ルミレはクレイジーにただ遊ばれるだけの目的で造られた人形なんだけど
    彼女に血肉がない事によってクレイジーから見放され捨てられた
んだって。」

夢子「…酷い…!自分で造っておいてそれはないわ…それに遊ぶって。」
ルフレ「もちろん性的な意味だよ。でね、クレイジーのやつ、彼女に中身がないのに
    何度も子供を作ろうとしたらしいんだ。魔女の君無しで邪神を復活させようとね。」
夢子「鬼畜すぎるわそんなの。人形とはいえ人権を無視してる…!」

ルフレ「でも結果はやっぱりだめだったみたい。
    だから君の内臓と僕の愛が一番欲しかったみたいだよ。
    君の血肉と子宮を身体に取り込んで、偽りの愛で子を宿したかったみたい。
    相手が僕だったのもきっと偶然。
    あの火事の起きた時もしも僕ではなくリンクがいたらのならば
    …きっとルミレはリンクを欲したと思う。」




夢子「そうなんだ‥‥彼女も可哀そうな人なのね・・・。」
ルフレ「でも敵は敵。同情しちゃだめだ。僕らだって散々酷い目にあってるし。」
夢子「そうね…。」
ルフレ「まさか、異世界に来てこんな目に合うとはね。」
夢子「私もびっくりよ。こんなに戦うなんて想像もしてなかったわ。」
ルフレ「スマブラの世界とも結構違うとこあるからね、ここは。」
夢子「いつかスマブラの世界にも行ってみたいな。でもマスターがそれは出来ないって。」
ルフレ「ああ、歴史が変わるから、か…でも僕は君が居て歴史が変わってもいいと思うけどね。」
夢子「きっと私たちが想像するより大変なことなのよ、きっと。」
ルフレ「僕はまた日本に行きたいな。どの世界も素晴らしいけど日本は画期的だよね。」
夢子「私もまた学校とか、行きたい。」
ルフレ「デート通学とかしたいね?手繋いでさ!」
夢子「それは恥ずかしい…。」
ルフレ「でも、それもしばらくは叶いそうにないね。」
夢子「そうね、まずは幻双国に帰らないと…。
     無事帰ったらチーズケーキ作ってね?」
ルフレ「じゃあ君は僕に膝枕してね!24時間ずっと!」
夢子「…わかったわよ。」
ルフレ「ほんと!?断られるつもりで言ったけど…やったね…!」


ルフレと夢子は簡単な傷を傷薬で癒した。
さすが効能が狂ってるだけある。

夢子「やっぱりこの傷薬最高ね!マスターとクロムに感謝しなきゃ。」
ルフレ「む、クロム…。この話は僕嫌いだよ?」
夢子「ああ、ゴメン!悪気はなかったの…。」
ルフレ「まあ一応感謝はしないとね…」
夢子(あの出来事相当トラウマなのね。)




ルフレ・夢子「「あはは…。」」


二人は束の間の時を過ごす。
自然に笑みが零れた。




【いいね!!】

[ 219/508 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]