71




今度はふたりで長い廊下を走る。
夢子とルフレ、ふたり。
もう、怖いものは何も無い。
その手を掴む暖かな温もりはもう何処にも迷わない。
この暗い国にも希望の光は届くはず。


ルフレ「僕らで終わらせよう。この醜い争いを。」
夢子「うん…!」


【71】







自身の部屋へ戻ってきたルミレは絶望していた。
手に持っていた薬の瓶を粉々に握りつぶす。
血の通わない彼女は手にガラスの破片が刺さろうが血は流れない。
部屋にはルフレを縛っていた茨の鎖が散っている。
茨の鎖を拾い上げるルミレ。
ふつふつと怒りが込み上げてくる。
いつも余裕な笑みを浮かべるルミレだったが
今回ばかりはそうもいかなくなってくる。
今まで誰にも見せたことのないドス黒い笑みを浮かべる。

ルミレ「ルフレ様…私から逃げようだなんて…
    あの子…夢子さんも…絶対許さない…
    絶対に捕まえる…!捕まえて夢子さんは私の中身にして…ルフレ様を…フフフフフ。」



此処から醜く恐ろしい鬼ごっこが始まる。
運命の歯車は既に狂い始めていた。







走り続けるふたり。
もう何十分走っただろうか。
夢子は息が切れてきていた。

ルフレ「夢子、大丈夫かい?苦しそうだけど。」
夢子「ちょっと…休憩させて…私長時間走ることあんまりないから…息が…。
      ごめんね、足手まといで。」
ルフレ「気にしないで。人間なら当たり前だから。
    僕らファイターがちょっと異常なだけで…」






アルフレ「そうそう。ファイターは体力バカで脳筋だからね。」





目の前にいつの間にかアルフレが立ちはだかっていた。
ルフレ「アルフレ…!君、いつの間に…。」
アルフレ「僕ってばほんと存在感ないみたい?フフ、それも好都合な時もある。」
ルフレ「今の君は僕には勝てない。それでも邪魔するのかい?」
アルフレ「別に、邪魔なんてしないよ?夢子の顔見たかっただけさ。」
夢子「…!?」
アルフレ「ルフレ、君が剣で僕の身体貫いたとき、痛みがどういうものか再認識したよ。
     与えられる側はこんなにも痛くて苦しいんだねって。」
ルフレ「何が言いたい…?」
アルフレ「僕はもうめんどくさいことはしない。」
夢子「降伏するってこと?」
アルフレ「自由に捉えていいよ。」
ルフレ「・・・本当かい?胡散臭いんだけど。」
アルフレ「…まあ仕方ないよね。今まで君たちの言う酷い事してたわけだし?
     …僕は酷いことしたってこれぽっちも思ってないんだけど。」
ルフレ「じゃあ悪いけど先に進ませてもらうよ。夢子、行こう。」
夢子「でも…。」
ルフレ「クレイジーが戻ってくるまで時間がないよ。なるべく早く外に出なくちゃ。」
夢子「う…うん。」
アルフレ「フフフ…。」







しばらく走ると大きな扉がふたりの目の前を立ちふさがる。
きっと、ここから城の外へ出れる。
ルフレと夢子は目を合わせてうなずくと一緒に扉を押す。
錆びついた扉はなかなか開かない。

ルフレ「これはもう…押してもだめならば…強行突破だね。」

ルフレは魔導書を出す。
そして光速詠唱をする。

ルフレ「今より天の怒りの雷を―・・・・

         夢子、離れて!」

夢子は扉から距離を置く。



ルフレ「トロン!!!」


ドカアアアアン!!!

凄まじい音で雷が爆発した。
辺りの空気に静電気がビリビリと音を立てる。
大きな錆びれていた扉が攻撃の威力で開かれた。
外だ。
外の冷たい空気がルフレと夢子の頬を伝う。
相変わらず暗くて痩せた土地が永遠と続く幻失国。


ルフレ「夢子、やっと僕らは外に―…」




燥いだルフレだったが振り返って夢子を見て表情を失う。



【いいね!!】

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