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【69】



ルミレとアルフレが話している。
見つかればきっと捕まってひどい目にあう。
夢子はふたりの会話を見つからないようこっそり聞いた。

ルミレ「一体なんなのでしょう!?私の何がいけないのです?!」
アルフレ「フフ、君が悪いんじゃないの?」
ルミレ「有り得ない…私は今までどの男性も魅了してきた…なのに…どうして?」
アルフレ「どうせテクニックも碌なものじゃないんでしょ?かわいそー。」
ルミレ「貴方に言われたくありませんわ。このドS王子。」
アルフレ「僕なら攻めて攻めて…泣くまで虐めるけどね〜。」


ルミレ「何故こんなにセクシーな私を目の前にしてもルフレ様は起たないの…!?」




夢子「ぷぷっ・・・」




ルミレ「…今何か聞こえました?」
アルフレ「さぁ?君のお腹の音じゃない?」
ルミレ「貴方…私に中身が無い事を自覚して言ってますの?」
アルフレ「別に態とじゃないよ?」
ルミレ「やはりルフレ様も私に中身を求めるのでしょうか…。」
アルフレ「ま、無いよりある方が気持ちイイからね?」
ルミレ「私には欠けている…造るにはどうしたら…」




夢子(中身…?彼女たちは何の事を言ってるの?)


ルミレ「じゃあ私はもう一度ルフレ様を愛でてくる…
    地下倉庫に閉まってるあの媚薬を使うときが来た…
ほんとはこんなもの使わずにイかせたいのですけどね。
    アルフレさん、貴方もさっさと夢子さんを捕まえて遊ぶと良いですわ。」
アルフレ「僕もそうしたいんだけど傷が完全に癒えてないからね。
     今の状態だと黒に負けそうで。横取りできないんだよね。どうしたもんかなー」
ルミレ「…死が怖い?」
アルフレ「まさか。」


ルミレとアルフレは別れて別々の廊下へと消えていった。




そっと甲冑の影から出る夢子。
夢子(地下倉庫…ルミレが怪しい薬取りに行ってる今がチャンスだわ。)
夢子はまた走り出した。
静かに、慎重に…



最初にルミレが歩いてきた方角の廊下を進む。

夢子「待ってて、ルフレ。今度は私が貴方を救う…!」












一方一つ上の階の階段で止血をしている黒と泣きじゃくる沙羅がいた。
ふたりの間の空気は重たい。



沙羅「私は…なんて馬鹿な事を…」
黒「さっきも言ったがお前は悪くない。
  お前の気持ちを無視し続けた俺に責任はある。」
沙羅「責任…取ってくれるの?」
黒「この国から出れたらな。」
沙羅「国を出るって…反逆者になるわ、私たち。バレたらきっとクレイジー様に酷い事される…」
黒「それでもいい。お前と夢子を守れるのなら。
  お前の手首の傷が増えるのをもう見たくないしな。」
沙羅「自分が嫌いなの。こんな醜い自分‥傷つけて当然よ。」
黒「瘴気の力は恐ろしいな。お前をここまで追い込むなんて。
  俺もこのダークというもうひとつの人格をどうにか消さないと…。」
沙羅「ダークは何故黒さんを選んだのかしら。」
黒「クレイジー様が言うにはあの英傑勇者に似てるってだけじゃないらしい。
  何かの因果関係がある。今はそれしか言えないが。」
沙羅「血…止まってきたね…」
黒「ああ、痛みも引いてきた。」
沙羅「ごめんなさい…本当に…」
黒「もう謝らなくていい。」
沙羅「この国を出たら、私たちは何処に行けばいいのかな?」
黒「日本に戻れたら一番良いけどな。
  元の国で平和に幸せに暮らす…日本に居た時はそんな事考えずに過ごしてきて
  あの日々がどれだけ平和だったのか今は身に染みる。」
沙羅「私は…黒さんの後ろをずっと追いかけて来て…
   走っても走っても追いつけなくて…
   この世界に来てから段々距離が縮まった気がした‥。
   でもそれはきっと私の度の過ぎたワガママだったのね。
   得たものもあるけど失った物も多すぎて。
   そして私は今貴方を失いかけた…自分の傲慢さが引き金に。」
黒「ありがとうな。」
沙羅「え…?」
黒「お前はずっと俺を見ていてくれてたんだな。
  ‥近くに居て遠い関係にしてたのは俺自身の過ちだ。
  俺はお前の気持ちにようやく前向きになれそうだ。」
沙羅「黒さん…。」
黒「俺たちもクレイジー様…いや、クレイジーと対立するときだ。
  この国を出よう。そしてまた笑い合おう。今度は…明るい陽の下で。」
沙羅「黒さんの行く場所に‥‥どんな場所でも着いていくわ。」


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