65
嫌がる夢子を連れて行こうとしたアルフレの頬に一本の矢が掠めた
赤い血がアルフレの頬から流れる。
【65】
アルフレ「ねぇ…こんな手荒い事しか出来ないのかい君は。」
アルフレは黒い笑みを浮かべていつも通り笑う。
矢の飛んできた方向にある枯れた大木の横から黒が出てきた。
夢子「ダークにぃ!!!」
黒「・・・。」
アルフレ「んー兄弟の美しい再会だね。フフ、まあ、君は相当怒ってるみたいだけど。」
黒「夢子から離れろ…。」
アルフレ「怖いなぁ、そんなに怒る事かい?今は夢子はフリーなんだよ?
もう一人の僕はもうルミレの虜だし。…今ぐらい僕が少し遊んでもいいでしょ?」
黒「お前には渡せない。絶対に。」
アルフレ「おお、怖いね…これって修羅場ってやつだね?
君と僕とで夢子の取り合い、か。フフフ。」
黒「お前の事は前から嫌いだった。…何もかもが気に喰わん。」
アルフレ「奇遇だね、僕もだよ。僕も君の事大〜嫌いだよ★」
黒「その夢子に向けている頭の狂ってる性癖…許せない。」
アルフレ「んー?今僕の趣味全力で否定された気がするけど。
知れば楽しいよ。きっとハマる。」
黒「知りたくもないし考えたくもない。」
アルフレ「君とは和解出来そうにもないね…。
うーんどうしよう。僕は今全力で戦えない身だし…。」
黒「そうだな、深手を負ってる今なら俺でもお前に勝てる。
…死にたくなければ夢子から離れろ。」
アルフレ「…。」
黒「…。」
アルフレと黒のにらみ合いか暫く続く。
そして先に折れたのはアルフレだった。
アルフレ「あーあ、わかったよ。今日は諦めるよ。
でも、この国にいる以上僕は夢子の事ずっと狙うから。
夢子、また楽しい事一緒にしようね?
以前よりはきっと優しくしてあげるから。フフフ。」」
夢子の耳元で囁くとアルフレは一人で城の中へと消えていった。
涙を流して夢子は崩れる。
夢子「ルフレ…どうしてこんなことに…。」
側にゆっくり黒が歩み寄る。
そして手首の茨の手錠を剣で斬る。
夢子はあふれ出てくる涙を堪えきれない。
ただずっと泣いていた。
黒はずっと隣に立っている。
暫くして少しだけ涙が治まった夢子。
それまで黒はずっと何も言わず横に居てくれた。
夢子「ダークにぃ…なんでこんなことになっちゃったのかな。」
黒「…俺にも分からない。でも…必然だと俺は思う。」
夢子「ダークにぃはこれでいいの?…これが望んでた結果なの?」
黒「夢子、俺はお前が
好きだ。」
夢子「!!!」
黒は語り始める。低い声で淡々と。
黒「俺はずっと…子供の頃からずっとお前が好きだった。
勿論最初は家族として…兄弟としての感情だと思った。
でも成長するにつれてその本当の感情に気付いてしまった。
そして気づかないふりをずっとしていた。
そんなことを思いながらずっと過ごしてきて…この気持ちは封印しようと思っていた。
しかしそんな時日本のあの山で邪竜に出くわした。」
夢子「沙羅と二人で行ったのね…?」
黒「俺の心の奥底に閉じ込めてた思いと野望がそれで解放されてしまった。
おまけに今はダークというもう一人の自分が心に宿ってしまった。
最近はあいつが出てくる事も少なくなったが…そんな自分が醜い。
でも俺は真実の愛を手に入れたい。今まで我慢してた気持ちを出したいんだ。」
夢子「私にはわからない‥。」
黒「俺にもわからない。でもただ一つ言えるのは俺はお前の事が本気で好きだ。
兄弟ではなく異性として。」
夢子「ダークにぃ‥‥。」
黒「…なんだかはっきり言えて俺はすっきりしている。」
夢子「私は…なんて答えればいいの?」
黒「お前と血の繋がりが無かった事、今は感謝している。
しかし、まさか邪神の血を引いてるとはな。こうなると俺はただの凡人だ。
クレイジー様は何を考えているのか…俺には意味がわからん。」
夢子「ほんとに…あいつの企み知らないのね。」
黒「…?どういう意味だ?」
夢子「クレイジーは私を
妃に娶ろうとしてる事。」
黒「・・・。」
夢子「あんまり驚かないのね?」
黒「なんだか…可笑しいと思ってたんだ。そういう事か。」
夢子「私はあんな…頭の可笑しい人とくっつく気に慣らない。
大体会った事ないのよ?可笑しいわ、狂ってる。」
黒「なら…俺の元に来い。」
夢子「え…?」
黒「一緒に逃げるんだ。何もかも捨てて。」
夢子「…ダークにぃ…。」
黒「俺は何を言ってるのだろうか…自分でも変だと思うが。
…自由になれば良い話だ。」
夢子「出来ない…。無理よ…ルフレを置いて行くなんて、私は無理!」
黒「お前はそんなにアイツが好きか?」
夢子「ええ。心に決めた人だから。」
黒「なら…俺はお前を救う事は出来ない。」
夢子「ダークにぃ、前にも言ったけど…一緒に光の国、幻双国に行こう?
沙羅も連れて3人で…また一緒に…日本に居た時のように…」
黒「俺はお前の好きなルフレが嫌いだ。当然分身のようなあのアルフレという馬鹿も。
奴等は…俺から全てを奪っていく…。もうこれ以上失いたくない。」
夢子「そんなこと言わないで…」
黒「過去に家族を失って以来俺の心には穴が開いていた。
それを埋めてくれたのがお前だったんだ。
これ以上傷を広げたくない。…夢子、来い。」
夢子は黒に引っ張られて城の中へと姿を消した。
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