64



【64】


此処は幻失国。
陽の届かないくらい国。
ルミレに連れられて夢子とルフレの二人は再びこの国に居る。
ふたりの手首には造花の茨が括られている。
ルミレが言うには抵抗すると棘が鋭くなり手首に食い込む、らしい。
ルミレの後ろを歩くルフレと夢子はずっと黙っている。
その静寂をルミレが破る。
ルミレ「…静かですわね。ルフレ様、もっとお話ししましょうよ?
    夢子さんもこれからこの国の女王になるお方、もっと喜びましょう?」
ルフレ「君と話すことなんて何もない。」
夢子「私はそんなの望んでいない‥‥。」
ルミレ「二人とも不愛想ですね。…まあ無理矢理連れてこられたから仕方ないですかね?
    …ほら、見えてきましたわ。立派なお城が。」
ルミレ達の目の前に城が見えてきた。
黒くて禍々しい雰囲気の城が。
ルフレ「…前に僕らが来た時この城の地下室に捕らえられてたんだ。」
夢子「…アルフレに最初に会った時ね…。」
アルフレ「呼んだ?」
夢子「!!!」


門の前にアルフレがいた。
その体は包帯で巻かれている。
ルフレ「そうか、当然君もいるのか…。」
アルフレ「おや?…とても残念そうだね?」
ルフレ「強がっても僕の攻撃は致命傷だったようだね?
    グルグル巻きじゃないか。無様だね。」
アルフレ「‥‥まぁね。僕も一瞬死ぬかと思ったけど僕もこれでも実験が好きでね…
     ポーションとか薬の事は詳しいんだ。
     君たちの国の傷薬、黒に入手してもらったから有難く分析させてもらったよ…フフフ。」
ルフレ「通りで僕らの国の技術が筒抜けなのか…。」
夢子「ダークにぃもいるのよね?沙羅も…。二人に会いたい。会わせて?」
ルミレ「城の中で待ってますわ。行きましょう。嫌でもこれから毎日会えますわ。」




城の門が開く。
黒い瘴気が辺りを包む。
ルフレ「くっ‥瘴気が濃い…!」
アルフレ「深呼吸してみたら?最高だよ?それに、君の奥に眠る血が騒ぐだろ?」
夢子「ルフレ…!吸っちゃだめ…!」
ルミレ「呼吸を止めても無駄です。人間は息をしないと生きてはいけないのでしょ?
    ほら、1分も我慢できなくなるはず。ウフフ。」


そしてルフレは崩れ、苦しみ始める。
夢子は駆け寄ろうとするがアルフレに腕を掴まれる。
アルフレ「ダメだよ夢子。これから面白い事が起こるから一緒に見ていよう?」
夢子「ルフレ…!ルフレ…!貴方達彼に何したのよ…!?」
ルフレ「く…ヤメロ…!僕の心に入って来るな…!」
ルミレ「さあ、ルフレ様、抵抗しないで?もう貴方は私たちの手の内にある。」
ルフレ「・・・。」
ルミレ「ほら、もう楽でしょう?」

ルフレの瞳から光が消えた。
そして感情も消えてしまった。
夢子「ルフレ!!!」
夢子の問いかけにも反応しなくなった。
アルフレは夢子の顔を掴むと視線をルフレから逸らさせないようにする。
夢子「何すんのよ…!」
アルフレ「今から素敵なシーンが訪れるよ。瞬きせずに見るんだ。ね?」
夢子「一体何を…」

ルミレがルフレに問いかける。
ルミレ「さあ、ルフレ様、私の所へ来て私にキスをして?」

夢子「!!!」

ルフレはゆっくりルミレへ近づく。
そしてルミレに自らキスをした。


夢子「いやあああああああああああああああああああああ!!!!」




夢子はその光景を見て叫び狂う。
夢子を抑えるアルフレは興奮する。
アルフレ「ああ、君の久々の叫び声、堪らない…もっと聞きたい‥!」
ルミレ「ルフレ様からこんなに美味しいご褒美貰えるだなんて‥私はなんて幸せ者なの…?」
夢子「やめて…やめて…!ルフレで遊ばないで…!!」
ルミレ「遊んでなんかいないわ。彼の本心。貴女よりルフレ様は私のを選んだ。
    これは紛れもない事実。ウフフ。なんて幸福な事でしょう。」
夢子「嫌…嫌よこんなの‥。」
アルフレ「じゃあ代わりに君は僕とキスする?クレイジー様に渡す前に少しくらい遊んでもいいでしょ?」
夢子「やめて!誰が貴方なんか…!」
アルフレ「今ね、クレイジー様は留守なんだ。ちょっとの間城を出ているんだけど…」
夢子「!?」
アルフレ「だから僕とルミレが君たちの管理任されてるんだよねェ…。」
ルミレ「私はルフレ様と愛を育んできます。‥アルフレはどうするのです?」
アルフレ「そうだね〜僕も遊ぼうかな。折角夢子もいるし。今日は楽しい一日になるよ。
     いや、1日ではなくずっと続くかも?…夢子、ルフレ、君たちは今僕らの自由だ。」
ルミレ「ではまたあとで会いましょう。ルフレ様、私の部屋へ行きましょう。
    綺麗な造花の薔薇が沢山咲いてますわ。」

生気の宿っていないような状態のルフレはルミレに腕を引かれ城の中へ消えていった。
アルフレは残った夢子を見る。
アルフレ「君は瘴気の影響無いみたいだね?…邪神の血が流れる魔女だとしても影響はないのか…。」
夢子「ウウッ・・・ルフレ・・・!」
アルフレ「悲しまないで?今は僕が君の側にいる。」
夢子「なんで…ルフレの声で…その姿で語り掛けるの…貴方なんかやっぱりキライ…!」
アルフレ「よっぽど光の僕のほうがいいんだねーなんか嫉妬しちゃうよ。」
夢子「大嫌いよ…」
アルフレ「僕は君に幾ら嫌われても構わない。無理矢理気持ちを動かせるのが好きだから。
     あっちの僕ももうルミレとお楽しみだし
     僕の部屋行く?色んな道具用意してるんだよね。君が悦ぶようなもの沢山ね。」
夢子「嫌‥!」


シュッ‥‥!!!




アルフレが夢子を連れ出そうとした瞬間
アルフレの頬を一本の矢が掠めた。



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