56



夢子は自分の部屋のベットで休んでいた。
昨晩はルフレが作ったチーズケーキを食べながら
みんなで夜中中騒いでいた。
それで就寝したのは朝方。
夢子はすっかり夢の中の住人だ。






【56章】



昼。夢子は目を覚ました。
時計を見て一瞬慌てたが、すぐに落ち着く。
夢子「日本だと学校とかあったからこんな遅くまで寝るなんてほんとあり得ないよね?」
ここは幻双国。
夢子はJKではなくファイターの仲間。今は魔導師。
ふと体を確認する。
腕も足もお腹も顔も…アルフレに付けられた傷は全て消えていた。
夢子「あの傷薬ほんと凄いわね…ある意味チートじゃない?」
マスターが言うにはあの薬は市場には出回ってない貴重品らしい。
そんな代物を箱に100個近くもマスターは渡してくれた。
夢子「あとでちゃんとお礼言わなきゃ…。」
夢子は身だしなみを整えて部屋から出た。
窓から差し込む太陽の光が眩しい。
夢子「こんな遅くまで寝ちゃったし、みんな狩りにでも行ってるのかな。
      また後れを取っちゃった…。」



そんなことを考えながら廊下を歩く。
すると前から聞き慣れた声が聞こえてくる。


夢子「あ、ピット君!」
ピット「夢子!やっと起きたんだね!」
夢子「皆狩り出発していったのかと思ったけど‥‥ピット君はいかなかったの?」
ピット「うーん、なんか今日は非番かな。あんまり戦闘モードじゃないから…。
    そうだ!夢子、これから暇?」
夢子「うん、特に用事はないわよ?」
ピット「じゃあ僕と一緒に城下町デートしてー!」
夢子「まあ、暇だから行ってもいいけど。」
ピット「あ、ルフレ達には秘密だよ?あいつ等夢子の事となるとすぐ怒るからさー。
    ほんと、短気は損気だよね?」
夢子「アハハ…!」
ピット「それじゃあ行こう♪」



夢子はピットに引っ張られ城の外へ出た。
窓から見た様に外は明るい。
雲もない晴天。
幻双国と幻失国の境界ではあり得ない程の良い天気。
夢子は目を潤す。
ピットは突然の事に驚く。

ピット「わ、夢子!どうしたの?なんか合った?」
夢子「…ううん、同じ世界にある国同士なのに
      こことあっちじゃ全然違うんだなって。」
ピット「うーん、国を治めてる頂点に立つ人の問題かなぁ?」
夢子「やっぱりそうよね。」
ピット「こっちでは誠実なマスターが上にいるから平和だけど
    あっちはクレイジーだからね…あの人頭おかしいから国を治めるって出来そうにもないし。
    ‥でもそこに黒兄さん達が居る事実だもんね…早く助けてあげないと…」
夢子「きっとこうしてる間も劣悪な環境にいるのよね…?
      なんだか私だけこんな良い思いしてていいのかなって思う。
      …沙羅が私を嫌って当然だわ。」
ピット「夢子が自分の事責める必要なんてないよ!
    夢子も、黒兄さんも、沙羅も…みんな悪くないんだから。」
夢子「ありがとう、ピット君。なんだか励まされちゃったね?」
ピット「僕は夢子の笑顔見られたらそれで十分だよ!」
夢子「フフ、ほかのメンバーと違って欲が無いわね?」
ピット「僕まだ恋愛の事よくわかんないんだよね〜。
    ただ100%言える事、僕は夢子が好き!」
夢子「あはは、なんだかほのぼのするな〜。私ももっと自分磨き頑張らなきゃ…!」
ピット「これ以上美人になったら僕は未だしも他のファイターがやばいかも。
    特にルフレとリンク‥‥あの二人は夢子の事となるとちょっと異常だから。」
夢子「そうなの?」
ピット「ええ、夢子、気づいてないの!?」
夢子「ちょっと大げさだなーとは思ってたけど…。」
ピット「夢子の魅力、恐ろしいものかもしれない…。」
夢子「?」


ピットと夢子はたわいもない言葉を交わしながら城下町を回った。
途中で屋台でご飯を買って食べ歩きをしたり、お店で道具を見たり…
久々の充実した一日を過ごしていた。
出たころに登っていた太陽も今じゃもう沈みかけてた。


ピットと夢子は城へ帰ろうと帰り道を歩いていた。
夢子は改めてピットにお礼を言う。
夢子「今日はありがとね、ピット君!
     なんだ久々に平和を感じた一日だった!」
ピット「ううん、こちらこそありがと!僕夢子とずっとこうして歩きたかったんだー!
    また一緒にデートしてね☆」
夢子「うん!…日本で沙羅とこうやって街を歩いたこと思い出しちゃった。
      食べ歩きしたりウィンドウショッピングしたりして…
      あの頃は平和だったなぁ…また沙羅とあんな風な関係に戻りたい…。」
ピット「なれるよ、夢子がその思いをずっと持っていれば叶う望みだと思う!」
夢子「そうかな?」
ピット「大丈夫だよ!僕も皆も夢子に協力する。だからそんな寂しそうな顔しないで?」
夢子「うん‥きっと…いつかは…」


するとその時だった。
城の方面からルフレが走ってピットと夢子の元へ近づく。
相当慌てた様子だ。

ルフレ「夢子!ピット君!ここに居たのか…探したよ!?」
ピット「あ、いや‥これはその…(デートって言ったら半殺しにされそう)」
ルフレ「隣の村が大変なんだ!噂だとクレイジーの配下が火を放ったって…!
    マスターの元に救命の連絡入ったんだ!二人も急いで現場に向かえって指示だよ。
    …ここからは僕が指示をするから、兎に角急いで向かおう!」
夢子「…そこに沙羅もいるかも!?」
ピット「急いで燃えてる村に行こう!」
夢子「うん‥。」



【いいね!!】

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