55


夢子は数日ぶりの温泉を楽しみ湯あがり状態でいた。
お風呂上りと言えば珈琲牛乳。
この世界にもコーヒーとかミルクが存在していた。
このほろ苦くて優しい甘味が癖になる。
夢子は珈琲牛乳の瓶をひと瓶飲み干した。


【55章】


夢子「ふー、疲れが一気にとんだ!」
夢子はバスローブを着て脱衣所の横のベンチに座る。
そしてすぐ横にある鏡に映る自分を見て戸惑う。
夢子「…私、傷だらけね。」
鏡に近づく夢子。
湯上りの体温からでる湯気で鏡は曇る。
夢子「私、馬鹿なのかも。こんな酷い目に合わされたのにアルフレに同情してる‥。」
鏡を手で拭く。夢子の身体は写らず顔だけが鏡に写る。
夢子「ルフレもアルフレも元は一人の人間なのよね…。
      …何か解決策、無いのかな…。」
夢子は呟く。
夢子「皆、救えれば良いのに…。なんで争いは起こるの…?
     平和な世界を創る事って出来ないのかしら。
     世界を運命を握るのが私のこの血だとしたのなら
     私が平和に導けるように頑張るしかないよね…?
     頑張らないとなぁ…
     あ、…傷薬、貰ってこよう。確かマスターさんが部屋に置いておくって言ってたし。」





夢子は自分の部屋へと戻った。
この部屋に出入りするのも結構久々な感覚だった。
扉を開け、早速中に入る。
すると、そこに何故かクロムが居た。
夢子「え、クロム!?何してるの!?」
クロム「‥ああ、夢子。すまない。ノックしても返事が無いし
    この傷薬をマスターから夢子の元に渡してほしいと言われてな。」
夢子「あ…そうだったんだ。ごめんね、長い間温泉に浸かってたから…
     それにしても…それ全部傷薬?!ストックやばいわね…100個くらいありそう。」
クロムが持ってる箱に傷薬が大量に詰め込まれている。
クロム「お前の傷ついた姿見てマスターは相当自分を責めてるようだったぞ。
    …勿論俺やルフレも後悔してる。
    あんなにモンスターがいる場所に行くのは少々早すぎたと。」
夢子「ううん、沼地に行こうって言いだしたの私だもん。
      皆が責任感じる必要なんてないわ…。寧ろ私が謝りたい。」
クロム「お前は正しい事をしてるだけだ。別に気にすることなんてないだろ?」
夢子「私ね、皆に迷惑かけたくない一心で気持ちだけが先走りしてたのかも。
      だから、アルフレにも捕まってしまった…反省の言葉しかないわ。」
クロム「お前は弱くはない。寧ろこれから相当伸びるタイプだと俺は踏んでいる。
    ルフレだってお前の事褒めてたからな。軍師のあいつに此処まで言わせるって相当だ。」
夢子「ルフレが?」
クロム「ああ、『何もしなくても輝いてるけど磨けば相当眩しいよ!』って嬉しそうに話してた。」
夢子「ふふ、クロムにもそんな事言ってるの?!ルフレったら…。」
クロム「あいつ、初恋の相手がお前だから張り切ってるんだ。」
夢子「そういえば元の国では相当真面目だったって言ってたね?」
クロム「まぁな。あいつに気を向ける女子もかなりいたが…あいつは知らんぷりで。
    だから余計熱しやすいのかもな。」
夢子「ルフレらしいというか、なんというか。あ、その傷薬早速見てもいい?」
クロム「ん?ああ。」
夢子はクロムの持つ箱から傷薬を1瓶取り出そうとした。
すると・・・
夢子の手に激痛が走る。



夢子「‥痛い!!!」


バリン!!!

夢子は傷薬の瓶を落とした。
クロムが驚いて箱をその辺に置き夢子に駆け寄る。
クロム「大丈夫か!?」
その時だった。
クロムは割れた傷薬の瓶から流れる軟膏で足を滑らせる。
そしてあろうことか夢子と一緒に床へ倒れこむ。
見事な壁ドン(床バージョン)が完成した。

夢子「く…クロム!?///」
クロム「す、すまない!すぐに退く…」
しかし焦ると足は余計滑る。
2回目の壁ドン。
しかもクロムの顔面は夢子の胸に。


夢子「!!!!」

クロムも顔真っ赤にする。
お互いなんと言葉を発して良いかわからない。
それどころか…クロムの様子が少々変だ。
夢子「クロム…?」
クロム「皆がお前を見るように俺もお前を自然と視界に入れているうちに
    少々気持ちが揺らいでしまう。…お前はルフレのモノなのにな。」
夢子「え?」
クロム「それに俺は既婚だが…気持ちが揺らいでしまう。
    …ルキナに気付かれたら相当どやされるだろな。
    夢子、お前は俺の事、どう見てる?」
夢子「どうって…楽しい仲間よ?」
クロム「そうか…じゃあ少しづつランク上げれると良いな。」
夢子「それってどういう…」

夢子が言いかけたその時だった。
部屋のドアが開く。
そこにはよりによってルフレの姿。


ルフレ「夢子〜チーズケーキ完成したよーって‥‥

    
    ・・・え?」


クロム「…あっルフレ‥これは…その…。」
ルフレ「クロム…?一体この状況はどういうことだい…?(イラッ☆)」
クロム「誤解だ、俺は何もしてない…。」
ルフレ「その姿勢で良くそんな白々しい事言えるね!?
    夢子はバスローブ。しかも紐がほどけ掛かってる。
    そこに君が両手をついて夢子の上に‥‥
    ・・・・許せない。(イラッ☆)」
クロム「だから誤解だ…薬の瓶で脚が滑っただけだって…。」
ルフレの黒い笑みは止まらない。
クロムは泡を吹いている。パニック状態だ。
夢子「ルフレ、クロムの言う事はほんとよ?
     決していやらしいこと考えてこんな体勢になったわけじゃないの。
     ね、クロム。」
クロム「ああ…(ほんとは少々理性やばかったが)」
ルフレ「むむ、本当かい?…信じていいんだね?」
クロム「俺がお前に何か隠し事したことあるか?」
ルフレ「今はまだ、ね。じゃあ今日は夢子の面で許すよ。
    ただし‥次こんなことあったら僕は君でも容赦なくトロン打ち込むよ?
    覚悟していてよ?」
クロム「ああ…(助かった)」
ルフレ「夢子、傷薬塗って着替えてからダイニングにおいで!
    焼きたて食べさせてあげる!
    はい、クロム、部屋から出るよ?夢子が着替えるんだから。
    ならいてもいいけどはダメだからね?」
クロム「夢子…すまなかった。すぐ出ていく。」


バタンッ・・・

ルフレとクロムは夢子の部屋から出て行った。
夢子はさっきのクロムとのやり取りを思い出すと少し顔を赤くした。
夢子「まさかクロムがあんなこと言いだすなんて…
     ルフレが真実知ったら相当な事になるだろなぁ…
     うう、昼ドラ並みね。」
傷薬のストックが大量に入った箱を持とうとする夢子。
しかし持ち上がらない。
夢子「クロム、こんな重たい箱ここまで持ってきたのね…やっぱり力あるなぁ。」
傷薬を傷に塗り込む夢子。
するとじわじわと効果を発揮する傷薬。
塗った箇所は直ぐに治った。

夢子「この傷薬がこの世界にあって、私の傷をこんなに早く治すって事は
      きっとアルフレも似たような感じで傷治してくるかも…!?
      でも、私は外傷だし‥体を貫かれたアルフレはきっとすぐには…」
色んなことを思い出す夢子。
黒と沙羅の顔が頭に浮かぶ。

夢子「ダークにぃ、沙羅…会いたいけど会うのが怖い…なんだろう、この気持ち。
     まさかこんな関係に成り果てるなんて、日本ではあり得なかった‥。」」
身体全身に傷薬を塗った夢子。
アルフレによってつけられた傷はほとんど消えてなくなった。
しかし
心の傷というか、何かがずっと引っかかってる感じがする夢子。


夢子「これ以上邪竜の犠牲者を出したくない…。」


夢子はいつもの服装のローブを羽織る。
そして静かに自分の部屋から出た。



【いいね!!】

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