49




【49章】



夢子はアルフレに身をゆだねていた。
飴と鞭、両方とも痛くて痛くてどうしようもない。
心は完全に折れかけていた。
いや、折れすぎて既に千切れそう。

アルフレ「さあ、僕の顔を見て?痛みで苦痛かい?」
夢子「ううう…」
アルフレ「そう、その泣き顔最高だよ。
     もっと呻いて泣きじゃくるんだ。
     そして僕に身を捧げて?この先には快楽が待ってるよ?」
夢子「ルフレ…!」
アルフレ「…?今なんて?呼ぶべき名前間違えたね?…お仕置きがいるかい?」
夢子「ヒッ…!」
アルフレ「…なんてね。今のは許すよ。ルフレも僕も元は1つだし。
     君が僕の事ルフレって呼んでも気にしない。
     でも…出来ればアルフレって呼んでほしいな?」
夢子「もうやめてよ…こんなの気持ちよくもなんともない‥」
アルフレ「ごめんね、僕何も経験したこと無いから加減わからないんだ。
     愛ってなに?愛し合うって?愛されるって…何?」
夢子「アルフレ…」
アルフレ「僕は君に出会って、君となら愛を分かり合えると思ったんだ。
     その結果がこれさ。まあまあ楽しいだろ?」
夢子「こんなの愛とは言わない…愛はもっと穏やかで優しいものよ?」
アルフレ「じゃあ…君が僕に愛を教えて?」
夢子「・・・!?」
アルフレ「僕はこんな表現しかできないんだ。
     君が愛を知ってるならば、それを僕に教えてくれ。」
夢子「誰でも良いってわけじゃない…」

アルフレ「僕はルフレだよ?」
アルフレは突然優しいルフレの表情をする。まがいものの表情。

夢子「・・・!」
アルフレ「ね、優しく接すれば僕はルフレそのもの。僕になら愛をくれるでしょ?
     君が好きならば真似事してもいいんだ。僕とルフレは瓜二つ。」
夢子「やめて…その顔…!」
アルフレ「夢子、好きだよ。僕は君が世界で一番好きだ。」
夢子「イヤ……来ないで…!」
アルフレ「ああ、僕には…永遠に知りえない事なのかもしれないね。フフ。」

夢子「貴方はー・・・可哀想な人。」

アルフレ「え…?」
夢子「本当に愛を知らない‥哀れな人よ。
      でもね、アルフレ。私だって完全に愛を知ったわけじゃない。」
アルフレ「どういう意味?」
夢子「私は親の愛を知らない。」
アルフレ「・・・?」
夢子「沼地の幻影でみた母の顔はうろ覚えだった。
      声も知らない。一緒に過ごした時も‥何も…何も。
     考えてみればファイター達の事も知ってるようで知らなかった。
     私は貰ってばかりで、与えられてなかった。それは全て愛。」

夢子のその言葉を聞いたアルフレは一瞬固まる。
そして重い口を開く。


アルフレ「僕も…父にはモノ同然に扱われていた…」



夢子「!?」
アルフレ「僕がギムレー様の血を引いてるから…それだけで生かされ利用されるだけの存在で。
     いや、引いてなくともその事実は変わらなかったのかも。
     あの人が僕を子として見てくれたことなんて1度も‥‥
     愛情何て通りで分からないはずさ。」
夢子「アルフレ…。」
アルフレ「…!!はっ‥‥僕としたことが…つい話過ぎた。」
夢子「貴方は変わろうと思えば変われる。」
アルフレ「どういう意味だい?」
夢子「血なんかに縛られる必要なんてない…!
     私も自分が魔王神の血を引いた魔女って最近知ったけど‥それでも私は私。
     生まれた命に無駄な物なんて一つもないわ。」
アルフレ「無駄ではない…?」
夢子「貴方だって本当は寂しかったんでしょ?自分の存在理由がわからなくて。」
アルフレ「‥‥。」
夢子「今ならまだ間に合うかもしれない。
     邪竜を復活させないで?クレイジーから離れるの。」
アルフレ「…そうなったら僕はどこへ行けばいい?
     僕の存在理由を示せる場所がこの世界にあるのか?」
夢子「それはー・・・。」
アルフレ「君にもわからないだろ。…分かり合えることなんてないんだ‥‥。」

アルフレは表情に影を作った。
今までのような黒い笑みはない。

夢子「…ねぇ、マスター側に付く気はない?」
アルフレ「…?」
夢子「そしたら私たちと争う必要もないし、邪竜なんて復活させずに…」
アルフレ「それは無理だよ。」
夢子「…どうして…?」
アルフレ「闇の世界で生きる者の掟だ。君たちとか永遠に分かり合えない。
     でも、魔女の君となら分かり合えると僕は思ったんだ。
     ああ、ほんと僕もまだまだ甘いよね。フフ。
     …そろそろ君のお迎えが来るね。もう少し楽しい事していたかったけど
     此処がバレたみたいだ。ほんと、残念だね。」




バンッ!!!

小屋の扉が開いた。
そこにはルフレが立っていた。
夢子「ルフレ‥‥!!」


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