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夢子「はぁ…はぁ…」
夢子の足元に血まみれのゴブリンが這いつくばる。
そして懸命に夢子へと手を伸ばし呻く。

【43章】※微戦闘要素有。



ゴブリン「イタイ・・タスケテ・・!」
しかし夢子に以前のような迷いなどもう…なかった。
ゴブリンの頭を踏みつけ動けないようにして魔導書を開く。
夢子「ファイア!!!」
ゴブリン「ギャアアアアア!アツイ!シヌ!グワアアア・・・・」
炎の勢いは加速しゴブリンは灰になった。




夢子「私…ちゃんと倒せた。倒せたよ!?」




ルキナは剣の血を払い鞘にしまった。
そして夢子の元へ近寄る。
ルキナ「見事な援護でした!とても戦いやすかったです!」
夢子「私だってルキナさんが強かったから…。
      でもいつ聞いても鳥肌たつね、ゴブリンの呻き声。」
ルフレ「見事な戦いっぷりだったよ!大まかな指示でもこれだけ動けるなら
    この先不安はないね!ルキナもだけど夢子、成長したね!」
夢子「ゴブリンに慈悲はいらないって理解したから…。」
ルフレ「それでいいんだ。人間とモンスターは一緒に暮らせないし
    ましてや異世界では絶対に釣り合わない存在…仕方がないさ。
    それにこいつ等を野放しにしたら大変な事が起きる。
    倒せる存在が常に倒していかないとね。」
夢子「そうだよね…私も肝に銘じておくわ。」
クロム「俺らも戦って強くならないとな。」
ロイ「そうですね、もっと色々狩らないと…」
カムイ「あの‥‥私は竜に変身するの…なるべく避けたいです。
    とても体力が居るので…ピンチの時にだけ使いたくて。
    しばらくは皆さんの様に剣を握って戦う事にします。いいですか?」
ルフレ「うん、それでもいいよ。君は人の姿でも強いし。」
夢子「あ、思えば私カムイさんの竜になった姿見たことないかも。」
カムイ「大きくて厳ついので…嫌いにならないでくださいね?」
夢子「そんな事にはならないよ!どんな姿でもカムイさんはカムイさんだもん!」
カムイ「ウフフ、ありがとう!そう言ってもらえると嬉しいわ!」



夢子達は進んだ。目的の沼地を目指し。
道中何度かモンスターがいたが明らかにこちらの方が火力が上。
全く問題にはならなかった。
沼地には凶悪なモンスターが蔓延っているという噂。
夢子達は気を引き締めていたが負ける気は一切しなかった。
ここでモンスターを狩り、力にする。
6人の決意は揺るがない。
そして数時間歩いて・・・
目的の沼地へとたどり着いた。
霧が濃く、足元が不安定だ。

ルフレ「なんだか嫌な空気が流れてるね。」
クロム「ああ、モンスターの汚れたニオイがする。」
夢子「ここに一体何がいるというの…?」
ロイ「霧の向こうから何かが…こちらへ来る…!」



ロイの指さす方角を皆振り返る。
すると巨大なオーガがこちらへと前進してきた。
しかも1匹ではない。複数いる。

ルキナ「…大きいですね…。」
カムイ「きっと体だけですよ。」
ルフレ「ああ、オーガは知能はそこまで高くない。
    こちらの戦力ならば余裕で…ん‥‥?
     あのオーガ達…何かが変…?」
夢子も以前オーガに襲われたときに遭遇していたからわかるが
このオーガ達のオーラが通常ではない。
まるで邪竜の瘴気のようなオーラを纏っている。
夢子「…もしかしてクレイジーが仕向けた使者なんじゃ…。」
ルフレ「そう考えると辻褄合うね。
    彼ら…通常のオーガではない。それに居るの、オーガだけじゃないみたい。」
オーガの周りにはマーマンもいた。
オーガもマーマンも貧相な武器を持っている。
ルフレ「モンスターも武器を所持してるように見えるけど…かなり質が悪いように見た。
    こちらには神剣使いもいるし、余裕だね!行くよ!皆!」



夢子達は戦い始めた。
クロム・ロイ・ルキナ・カムイは接近戦。
ルフレと夢子は後ろから魔法で援護する。
沼地は名前の通り遮るものはない。
しかし足場が不安定だ。
それでも足場を見つけてルフレの指示通り皆は動く。
オーガは確かに知性が低い。
マーマンも大して変わりはないように見える。
ただ単純に攻撃をしてくる。
こんなもの、スマブラに出ているファイター達には簡単に避けられる。
こちらが圧倒的に有利。



しかし、突然霧が濃くなった。
ファイター達の視界を遮る。
夢子と隣にいたルフレが見えなくなった。
慌てて声をかける夢子。




夢子「ルフレ…?皆…?どこにいるの…?」

夢子の視界は塞がれたが音はしっかり耳に届く。
ルフレ「皆!これは幻影の霧だ!幻影に惑わされてはいけないよ!?」

ルフレが声を張り上げた途端目の前が真っ白になった。












夢子は歩く。白い霧の中を一人。
モンスターがいつ飛び掛かってくるかわからないこの状況。
魔導書を抱える腕に力が入る。
警戒は怠らない。
すると前から誰かがやってくる。
夢子は構えた。




そこには一人の女性。
見たことがある。見たことが無いけど見たことがある。
そう…
その人物は夢子の母親だった。
顔なんて覚えてない。でも夢子にはわかった。
あれ人は私の母親だと。

母親「夢子…こちらへおいで。
   貴女には話したいことが沢山あるのよ?お母さんとお話しましょ?」
夢子「貴女は‥私を捨てた…」
母親「あの時は仕方がなかったの。
   でも、だから今の貴女がいるのよ?
   親子の空いた時間、これから一緒に埋めましょう?」
夢子「嫌だ‥私はルフレ達とずっと一緒にいるの…
     今頃出てきて母親面しないで…!」










母親「その人たちは本当に貴女を思ってる?」






夢子「何を…」
母親「だって貴女、彼らの事何も知らないじゃない。」
夢子「そんなことない…相手の事全てわかればいいってもんじゃないわ。」
母親「そう、黒と沙羅の事も貴女は何も知らない。貴女は無知。」
夢子「!!!」
母親「結局全てが偽りなのよ。貴女自身も偽りの姿。
  だからこんな運命になった。全部貴女が悪い。
  魔族が人間との争いで戦火に呑まれたのも…



   全部貴女が原因なのよ?」



夢子「それってどういう…」
母親「貴女の血は魔族の中でも特別な物だった。
   邪神でもある貴女の父親は貴女を使い世界を手に居れようとした。
   人もまた、魔女の貴女を支柱に収め世界を手に居れようとした。
   全て貴女の奪い合い。だから私は貴女を連れてこの国を出た。
   それなのに…遠くに置いた貴女はこの場所にまた戻ってきた。
   大切な人を巻き込んで…全て貴女が壊すのよ。貴女の愛する人たちを貴女が殺すの。」
夢子「そ・・・そんな・・・」
母親「貴女はそこまでして何を守りたいの?守れるの?
   何も知らない彼らを守り切れるのかしら?
   貴女は彼らと出会うべきではなかった。
   そしてこの世界に足を踏み入れるべきではなかった。」
夢子「そんなことないわ…私は…私は…」
母親「単純な話よ。彼らの事なんか考える必要はない。
   こちら側へ来なさい。そうすれば自身が傷つくことなんてない。」
夢子「嫌だ…私は皆と一緒に居たい…。」



そして―・・・
霧が晴れた。



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