40



【40章】

夢子が城下町から帰ると
ルフレが城の厨房で下準備をしていた。
夢子は青ざめ震えていた。

ルフレ「夢子!?…ちょ…どうしたのさ!?」
夢子「ルフレ‥私…」

夢子は話した。
城下町で族に騙されアジトに連れていかれ
犯される寸前で黒が助けてくれたこと。


ルフレ「そっか…遅かったと思ったらそういうことが…」
夢子「怖かった。族もだけどダークにぃも怖かった。
     人を躊躇なく殺めて…私を守る為に数十人も…
     『妹に手をだすな』って発した声もどこか冷たかった。
     邪竜はまた私の大事な人を浸蝕していくのね…。」
ルフレ「でも結果黒兄さんは君の事守ってくれた。
    それは事実だよ。そうじゃなければ君は今頃…
    そんな事したら僕はその族達を地の果てまで追い詰めるけどね。」
夢子「でも…ダークにぃの優しさも感じた。
      あの時なんであの場所に居たのか‥不思議だけど…
      そうよね、守ってくれた…いい方向に捉えよう。」
ルフレ「さ、大変だったけどおつかい成功だね!
    チーズケーキ作るよ!これ食べて元気出すんだよ?」
夢子「うん…。」

ルフレは厨房に入り浸った。
材料を取り出し調理を始める。
夢子はテーブルにつき浮かない表情。
黒は一体何を考えてあの場にいたのだろうと
夢子はずっと考えていた。
考えないなど…到底無理だった。
だって大切な兄だから。
夢子「ねえルフレ。」
ルフレ「ん?」
夢子「兄弟ってなんだろね。血の通わない兄弟って…何?」」
ルフレ「うーん、僕には兄弟いないし何とも言えないけど。
    でも、家族は大切なものっていう事は紛れもなく事実だよ。」
夢子「私に最初から力があれば…そして二人の話、もっと聞いてあげてたら
      こんなことにはならなかったんだろうなって。
      私‥自分の事ばかり考えててダークにぃと沙羅の気持ち、無視してた。」
ルフレ「よし、型に流したし後は焼いて待つだけ!
    ちょっと話しようか?
    それまで…日本で二人と仲が良かったんでしょ?
    …君は間違ったことしてないと思う。」
夢子「そうかな…」
ルフレ「そうだよ。…それに彼らの心はまだ死んでない。
    日本からこっちの世界に来る時に黒兄さんはかろうじて意識あった。
    負傷した君を逃がすタイミング作ってくれたのは彼だ。
君を傷つけたのも、救ったのも…黒兄さんってことだよ。」
夢子「私あの時貴方を助けようと必死で飛び込んだら…
     そしたら斬られて…痛くて…それよりも目の前の状況が信じられなくて。
     でも、結果…貴方の事守る事出来たのよね?」
ルフレ「…僕は君に謝らなければいけない。
    僕の為に君があんな傷負う必要なかったんだ。
    少し斬られた程度なら僕らファイターなら致命打にはならない。
    普通の生身の君があんな大きな怪我負う必要なかったんだ。
    夢子、いいかい?…もうあんな危ない事しないで?」
夢子「…好きな人が殺されかけて庇わない人はいないわ。」
ルフレ「不謹慎かもしれないけど、今僕とても嬉しい。
    君がこんなに思ってくれるだなんて。
    僕ずっと片思いだろうなって思ってたよ?」
夢子「その割には随分大胆な事するじゃない!?」
ルフレ「それは君の気持ちが通じたからだよ。」
夢子「でも、ルフレだって私が殺されかけたら守るでしょ?
      その原理と一緒よ?」
ルフレ「男性と女性だと違うよ。それに…君に傷が残ると困るし。」
夢子「うーんよくわからないわね。」
ルフレ「僕も恋愛については素人だからね。」
夢子「その割に夜凄いじゃない?色々と。」
ルフレ「ま、男だから。何も学ばなくても知識はあるさ。
    クロムともその手の会話たまにするよ?」
夢子「男って…(呆れ顔)」
クロム「ん?俺がなんだって?」
ダイニングにクロム達が入ってきた。
丁度通りかかった様子。
クロム「まさか‥ルフレ、お前俺の悪口言ってたとかじゃないよな?」
ルフレ「大丈夫。そんな陰口しないよ。僕と君との仲だろ?信用してよ。」
ルキナ「あ、良い匂い…何か作ってるのですか?」
ルフレ「うん、チーズケーキ今焼いてるよ。
    もうすぐできるから皆で焼き立て食べよう?」
カムイ「わー!今の軍師の作る料理なら何でも食べたいです!」
ロイ「日本のすき焼き…でしたっけ、あれ美味しかったですからね。」
ルフレ「本当は夢子だけにあげたかったんだよ?感謝してよ?」
クロム「お前日本に行ってこの世界に来てから大分性格悪くなったよな。
    以前のお前は女っ気も全くないし料理もクソ不味かったし…。」
ルキナ「イメチェンってやつですよ、お父様。良い事じゃないですか!」
ロイ「人間ここまで変わるものですね。」
カムイ「ほんとね〜。」
ルフレ「こら!揃いも揃って僕を何だと思ってるんだ!
    チーズケーキ…あげないよ?」
クロム「ああ、悪かったすまんすまん。」
ルフレ「ん―?ほんとに謝る気あるのかい?」



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