32



【32章】

夢子とルフレは森の方角へ歩いていた。
空気が冷たくて寒い。
そして周りに広がる風景…
とても荒れ果てている。
植物は枯れ大地も枯れている。
夢子「ねえルフレ…此処って幻双国と対になってる世界だと思うの。」
ルフレ「そうだね…僕もそんな感じかなって思ってた。」
夢子「クレイジーは私たちを捕らえてどうするつもりだったのかな。」
ルフレ「君と僕の血が絶対関わってると思う。
    僕は邪竜、君にも特別な血。どっちも悪者が好みそうなものだよね。」
夢子「悪い事に利用しようとしてるのはわかってるけど…
     理由がハッキリしないから怖いわ。」
ルフレ「大丈夫、君の事は僕が守る。」
夢子「頼りにしてるね?」
ルフレ「それにしても静かだよね。これはちょっとおかしいかも。」
夢子「全然追手が来ないわよね?」
ルフレ「僕らは泳がされてるのかもしれない…。」
夢子「それってどういう…?」
ルフレ「いや、悪い考えはよそう。今はやるべきことをするまでだ。」
夢子「そうね…あ、森が見えて来たわ!」





二人はシルフの言ってた森へたどり着いた。
森と言っても木々は枯れて草の芽もない。
夢子「こんなの…森じゃない…酷い有様…。木が皆枯れてる…。」
ルフレ「僕らの国とは大違いだね…?此処まで自然が死んでるなんて。」
夢子「泉はどこだろう?…あ、ブレスレットが反応してる…!」
ブレスレットは緑色の光で方角を照らす。
夢子「きっとこっちに泉があるわ…!行きましょ!」





ブレスレットの光が示す場所…そこには枯れ果てた泉があった。
ブレスレットの光が強くなる。
そして再びシルフの声が聞こえた。
シルフ「ありがとう夢子。此処まで連れてきてくれて。
    私の力が復活するまでの間しばらくここに居て…もうすぐだから。」
夢子「うん…わかった。」
ルフレが辺りを気にし始めた。
ルフレ「‥‥何か気配を感じる…。」
夢子「え?」
ルフレ「そこにいるの…誰だい?」



すると木の陰からアルフレが出てきた。
邪悪な笑みを浮かべている。
アルフレ「フフフ、此処まで来てくれて感謝するよ。」
夢子「アルフレ…!」
ルフレ「僕らが来るの…何故知ってたんだ?」
アルフレ「さあ…なんでだと思う?
     気になるならその精霊もどきにでも聞いてみたらどうだい?」
夢子「シルフ…ま、まさか…!」
アルフレ「シルフ…?フフ、彼女は闇の精霊だよ?」
夢子「…え?!」
アルフレ「君は闇の精霊と契約をした。それが現実だ。」
夢子「シルフ‥ねえ、一体どういう事!?」
シルフ「・・・。」
アルフレ「君たちは既に僕らの手の上で転がされてたんだよ!ね?シャドウ。」
シャドウと呼ばれた夢子の精霊は言葉を発した。
シャドウ「夢子。私は貴女を騙してたの。
     貴女と契約するのが私の最終目的。
     貴女の本来の力を呼び戻す為に…ね。ウフフ。」
夢子「そんな…信じてたのに…!?あの時助けてくれたのも…もしや‥」
アルフレ「ほんと人って馬鹿だよね。簡単に信じたり…裏切られて…
     ま、そこが助かるけど。実に単純だよね。笑えちゃうよ。」
ルフレ「君の…クレイジーの本当の目的って何なんだ?!」
アルフレ「僕とクレイジー様の目的願望は違うよ?
     ただ、都合が良いからお互い協力してるだけだ。」
ルフレ「それはどういう…」
アルフレ「まあもう僕の計画は始まってる…!」
ルフレ「!?」
夢子「ル…ルフレ…なんか…フラフラする…」
ルフレ「夢子!?」
アルフレ「さあ、闇の精霊と契りを交わした、君の血の封印を開こう」

夢子は苦しみ始めた。
胸を押さえ地面に膝をつく。
夢子「く…苦しい…一体なにが…?」
アルフレ「シャドウの心の侵食が始まったね。良い頃だ。」
ルフレ「僕は…君を倒す!今度こそ…!」
アルフレ「こっちの領域では僕の方が有利だよ?そんな事も知らないの?」
ルフレ「知ってるさ‥でも今僕かここで君を止めないと、未来が変わってしまう。
    もう人の悲しむ顔は見たくない…。」
アルフレ「じゃあ相手してあげるよ。彼女の覚醒までまだ時間必要だし。
     いいよ、暇だから遊んであげるよ。」



ルフレは魔導書とサンダーソードを出して戦い始めた。
アルフレも魔導書を出した。
ルフレ「よし…頭痛も今は大分治まった…。
    ‥その魔導書…やはり君はダークマージ系か。僕とは違う魔法系統を感じる。」
アルフレ「そうだよ?じゃあ挨拶代わりに打ち込んであげるよ。」
ルフレはシールドを張りアルフレの攻撃を防いだ。
アルフレ「そうか、シールドっていう手もあったか。‥だが、こちらも同じ。」
ルフレ「ずっと戦ってなくて訛ってるから君相手にするの丁度いいよ。」
アルフレ「ふーん余裕だね?…だが、その余裕、いつまで持つかな?!」
ルフレ「自分と戦うってなんだか気持ちが悪いね…でも僕は負けない!」





夢子は目を閉じていたがルフレが戦ってるのに気づいていた。
しかし見えてる景色は漆黒の闇。
そこから声が聞こえてくる。
シャドウだ。夢子を裏切ったシャドウの声が聞こえる。
シャドウ「騙すような形になってごめんなさいね?
     こうしたら貴女を騙せると思ったの。
     そして貴女はもうすぐ力を解放する。この世界を変える力。」
夢子「何を言ってるの?私には力なんてない…」
夢子の足元から腕のような青い何かが彼女の脚を引っ張る。
抵抗しても離れない…どんどん体を沈めていく。
夢子「いや…私は自分の意志を保つの‥負けたくない…!」
シャドウ「私の提示した用件を飲むのならルフレは助けてあげてもいいのよ?」
夢子「条件…?そうやってまた私を騙すの?」
シャドウ「とんでもない。この条件は騙したりは無し。ちゃんと助けてあげる」
夢子「その条件って…?」





シャドウ「クレイジー様の【妃】になるのよ。」
 

夢子「…え?」
シャドウ「言葉そのままの意味。貴女はクレイジー様の妃になるの。
     そうしたら幻双国とファイターの命は襲わない。 
     簡単な取引でしょ?」
夢子「なんでそんな事…。」
シャドウ「クレイジー様は自分の血と邪神の血のハーフをご所望してる。
     そしたらこの世界を統べる新しい神が生まれる。」
夢子「いやよ…会った事のない誰だかわからない人…
      それに私には愛する人が出来た…私はその人としか付き合わない‥。」
シャドウ「そう言ってる間にどんどん彼の体力は減っていく一方よ?
     貴女が、彼を殺すの?そんな未来嫌でしょう?」

夢子「私は…ルフレを…この世界を…」


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