26

夢子は森に一人いた。
もう陽が落ちて暗くなり始めていた。
森の鳥が不気味な声で鳴いている。





【26章】







夢子「…私は一体…?こんな場所まで走ったの?」
夢子は切り倒された樹に座った。
そして声をころして泣いた。
夢子「リンク達に悪い事しちゃった…私、もう嫌われたかな?
      心が揺らいでる姿、ルフレにも見られたくなかったのに…。」
独り落ち込み泣き続けていた。


その時だった。
何処からか…声がする。



???「夢子…夢子…」

夢子「だ…誰!?」
夢子は驚いて声の主を探す。
しかし周りに誰もいない。生物の気配すらない。
夢子「気のせい…じゃないわよね?誰なの?」
???「私は闇の国の精霊。漆黒の精霊だ。今はダークに憑いている。」
夢子「精霊…?ダークにぃ?!」
漆黒の精霊「夢子、私たちの元に来るのだ。
      そうすればこんなややこしい人間関係から解放される。
      兄と心友もお前を待っている。」
夢子「そんな誘惑に‥私が乗るとでも…?」
漆黒の精霊「さっき見ただろう。勇者たちのあの落胆した表情を。」
夢子「!!!何で知ってるの?!」
漆黒の精霊「小さい精霊はこの世界には何万体といる。だからそれを使って透視した。」
夢子「…私は…皆に上手く説明できなかった…ルフレの事が好きだって。」
漆黒の精霊「ならばそのルフレとやらと一緒に闇の世界へ来い。
      その男には邪竜の血が流れている。
      そしてお前には邪神の血が濃く流れている。
      素晴らしい提案だと思わないか?」
夢子「・・・・。」
漆黒の精霊「良い話だと思わないか?」
夢子「私とルフレが一緒に行けば…争いは避けられるの?」
漆黒の精霊「そうだ、そしてマスターハンドとファイター達からは今後一切手を出さないと誓おう。」
夢子「皆が助かる…?」
漆黒の精霊「そうだ。」
夢子「・・・・。」



???「夢子、騙されちゃダメ!!」




突然もうひとつ声が聞こえる。
夢子はふと我に返った。
漆黒の精霊「他属性の精霊か…厄介な…漸く洗脳できるところまできたのに‥!」
漆黒の精霊の気配が消えてしまった。
そしてもうひとつの声が夢子に囁く。

シルフ「私はシルフ。風の精霊。夢子、大丈夫?」
夢子「私…危ない事考えてた…皆を守れるならって。
      あっち側に行きそうに…。」
シルフ「大丈夫、貴女の心は強い。
    今悩んでる事も自然と時間が解決してくれます。安心して?」
夢子「私皆にどうやって顔向けすればいいか…わからない…。」
シルフ「彼らはこのくらいで貴女の事嫌う事はありませんよ。
    寧、闘志がわいてやる気に満ちてるはずです。」
夢子「ほんと…?」
シルフ「私は普通人間には感じられません、が…貴女には声が届いた。
    これは神からのお告げです。
    夢子、私は貴女に憑くことにします。
    先ほどの闇の国からの刺客からも貴女を守れます。
    私と契約を結んでください。」
夢子「そうよね、ダークにぃにも精霊が憑いてるなら私も…」
シルフ「腕を貸してください。私の力の眠るブレスレットを貴女に託します。」
夢子の目の前にブレスレットがふわりと浮いて降りてきた。
夢子「これをはめるのね?」
夢子は腕にブレスレットをはめた。
埋め込まれた緑の宝石が輝く。
シルフ「貴女はウインドのような風の魔法が特に得意みたいですね。
    私が憑いたことによって風系統の魔法は更に威力が増すでしょう。
    さあ、完全に暗くならないうちに城へ戻るのです。」
夢子「うん、私…帰る!みんなの元に…。」






夢子は再び歩き出す。


【いいね!!】

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