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夢子「貴方がマスターハンド?」


【14章】

玉座の上には一人の人物が座っていた。
シルバーの長い髪。
衣装は白いコートで隠れている。
そして左腕が無いように見える。
瞳の色は蒼い。何もかも見透かされるような瞳だった。

マスター「夢子、だったかな?初めまして。
     私はマスターハンド。皆からはマスターと呼ばれている。」
夢子「初めまして…!夢子です。…私の事知ってるんだ?」
マスター「知ってますよ。リンク達がこちらの世界に一時的に帰ってきた頃、
     毎日貴女の事ばかり話してましたからね。
     それはもう、どんな感情なのかは察することが出来るくらいに。
     夢子、それと諸君には話さなければいけない事がある。」
夢子「何ですか…?」


マスター「クレイジーは邪神を復活させようとしている。」

剣士組「「「!?」」」」
夢子「邪神って…邪竜ではなく?」
マスター「邪竜を復活させていくのも邪神召喚をするための下準備なんだ。
     これは、この国の人たちも隣国も勿論知らない。
     知っているとしたら遠い闇の領域のクレイジーの幹部だろう。」
夢子「ダークにぃと沙羅とか?」
マスター「気の毒だが、近いうち争いが起こるだろう。
     君のお兄さんと友達も少なくとも巻き込んで話は進むだろう。」
夢子「そんな…」
マスター「だから君たちには強くなってもらいたい。
     精神的にも肉体的にも。これから来る悪に戦う勇気も。」
夢子「・・・。」
マスター「特に夢子、君は日本という国からひとりだけ来ている異世界人だ。
     別け合ってクレイジーは君を狙っているらしいから特に気を付けてくれ。」
ルフレ「マスター、なんでクレイジーは彼女を狙うんだい?」
マスター「まだハッキリとはわからないが、彼女の持つ何等かの力を狙っている可能性が高い。」
ルフレ「うーんあやふやだなぁ…夢子は心当たりない?」
夢子「私は全然…マスターさんですら今会ったばかりで
      クレイジーとは一切関わってないもの。何が狙いなのかわからない。」
マスター「今は深刻に考えなくていい。時間はまだあるのだからな。
     まずは休む時には休んで、戦う時には思い切り戦ってくれたまえ。」
夢子「・・・。」





ファイター達はお互い部屋に戻った。
落ち込む夢子の姿を見て皆勇気づけよとしてきてくれる。
夢子はいつも通り振舞った。
心に何かが引っ掛かっている不快感は覗けぬまま。


夢子「私なんて何の力のない…ただのJKよ?
      それにダークにぃと沙羅とまた戦うなんて…嫌だ…。」
ルフレ「夢子、大丈夫かい?」
長い廊下で夢子はルフレに呼び止められた。
夢子「ルフレ…。」
ルフレ「マスターの話聞いた後から顔が真っ青だよ。…やっぱり不安なんだね?」
夢子「私、またあの2人に会ってその時戦う事になったら、戦える気がしない。
      たった1匹のゴブリンやオークですら倒せないこの貧弱な私が
     邪竜の力で覚醒したダークにぃと沙羅を倒せるのかしらって。
     ・・・なんで私がその対象に選ばれたんだろうって。
     ・・・なんで・・・なんで・・・。」
ルフレ「夢子。」

ギュッ・・・・・


ルフレが夢子をそっと抱きしめた。
温かくて優しい太陽のニオイがする。
夢子「ううっ・・・」
夢子は泣いていた。
自分の未熟さを憂いて。泣いた。

夢子「…なんでこんな酷い事になったんだろうって…ずっと考えてた‥
     もしも私が足手まといで誰かを傷つける事があったとしたら
     私は…耐えられえない…。
     ルフレだって、日本で酷い目にあったでしょ?
     あんな事は再び繰り返されたら…。」
ルフレ「大丈夫、僕も皆も瘴気に取り込まれる事もうないよ。
    この世界では力も戻ってるし、メンタルも倍に強くなってるから
    日本に居た時みたいな状態にはもうならないから。
    それに僕が君を守る。軍師として、君の共として。」
夢子「ルフレ…!」
ルフレ「皆君の事大事に思ってるけど、僕はその中でも何倍も君の事思ってるよ?」
夢子「日本でも早々なかったな、こんなに思ってくれる人がいるって。
      沙羅は心友だと思ってたけど…
      結局彼女の事とても傷つけてた。私はバカなの。」
ルフレ「大丈夫、沙羅も元通りになるよ。そして黒兄さんも。
    魔石の話したでしょ?それさえ見つければ、きっと大丈夫さ!」
夢子「ルフレ、励ましてくれてありがとう。」
ルフレ「結果オーライさ!」





夢子「で、いつまで抱きしめてるんでしょう。私はとっくに離れようとしてるのに。」
ルフレ「んー君温かいから心地よくて。」
夢子「今、真夏よ?絶対暑苦しいって!」
ルフレ「知ってるでしょ?この通り僕は真夏でもコート羽織るくらいだよ?
    寒いとか暑いとかぶっちゃけわかんないんだよね。」
夢子「それ人間的にどうなのよ…」
ルフレ「フフ♪」
夢子「ハナレテー!」

【いいね!!】

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