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第39章【炎の力】




夢子が首から下げているネックレス。
そのネックレスに赤い光が宿り始めた。
夢子「…もしかして…ディン!?」
ディン「夢子…お久しぶりです。
    やっと我が主に力を授けられる時が来ました。
    ネックレスに誓いの口づけを…。」
夢子「こ…こう?」
夢子がネックレスに口づけをすると紅い光が夢子を包み込んだ。
そして紅い炎の渦が夢子を囲む。
余りの勢いに堪らず目を閉じた夢子だったがすぐに瞳を開いた。
夢子「あれ…この炎熱くない…!?」
ディン「これは誓いの炎です。今この瞬間からこの魔力は貴女に授けられました。
    この炎をどう扱うかすべて貴女次第です。
    幸運をお祈りします。我が主、そしてこの世界を救う綱となりし女神。
    この困難を乗り越えこの世界を再び平和へと導いてください。」
そう言いい残すとディンの声は炎と共に消え去ってしまった。
夢子「この世界を救う綱となりし女神って…どういうこと?
     ねえ、ディン、教えて?」
しかしネックレスには何の反応も無くなってしまった。
普段通りの赤い宝石の入ったハート型のネックレスに戻ったのだ。
夢子「炎の力ってどういうのなのかな?ちょっと試しに…」
夢子が小屋の中を見渡すと部屋の隅に小さな暖炉があった。
夢子「薪は入ってる…っと…よし!普段の魔法を使う要領で…!」
瞳をとじ、神経を手のひらへと集中させる夢子。



小屋の外にはダークが帰って来ていた。
その手には1羽の鳥とボロボロの水の入ったバケツを両手に持っていた。

夢子「きゃああああああああああああああ!」


突然小屋の中から悲鳴があがる。
ダーク「!?」
叫び声に驚いたダークが急いで小屋の中へと駆けつける。
そして勢いよく扉を蹴り開ける。

バンッ!!!


ダーク「どうした!?」

ダークが扉を開けたその先には暖炉に勢いよく炎の魔法を発動させている夢子の姿だった。
その炎の勢いがありすぎて暖炉から炎がはみ出て黒い煙が上がっている。
夢子「ダーク!見てないでこれ止めて!!」
ダーク「…チッ!」
涙目になりながら訴える夢子にダークは持っていたバケツの水を勢いよく被せた。


バシャアアアアン!!!!








ダーク「お前馬鹿じゃねぇの?」
夢子「だって…。」
日が暮れ辺りは夕闇へと包まれた。
昼間あった霧は更に濃さを増す。
そんな中夢子とダークは小屋の中で暖をとっていた。
夢子は濡れ、小屋にあった薄いシーツを羽織っていた。
ダーク「あのままだと折角見つけたこのボロ小屋も全焼だぜ?」
夢子「だって……!」
ダーク「…お前今日は食事抜きな。」
夢子「ええ!そんな!!!」
ダーク「馬鹿、冗談だよ。」

ダークは狩ってきた鳥と池の湧水を使ってスープを作っていた。
その姿を見て夢子はふと思い出した。







リンク『辛い時はいっぱい泣いていいですよ。そしていっぱい食べてください。
    そうしたらすっきりしますから。』







そう。リンクと初めて会ったあの日の夜。
リンクは傷だらけの私のために温かいスープを作って振る舞ってくれた。
あの時のぬくもりは今でも忘れたことはない。


夢子「私も最初は孤独と飢えで死にかけてた…。」
ダーク「なんだよ急に…。」
夢子「亜空軍に追われて記憶を失ったままのボロボロの状態の私をリンクさんは救ってくれた…。」
ダーク「ほんと白馬に乗った王子様って感じだなアイツ。」
夢子「私も最初はリンクさんの事信用できなかった…でも優しさに触れて人を信じることができた。」
ダーク「へえ…。」
夢子「リンクさんと出会った後すぐにスマブラ城のみんなとも出会えた。
     皆個性があって優しくて…そして強かった。
     そんな人達と過ごしている内に自分の居場所を作りたいと思った。」
ダーク「お前もそいつらに騙されてるんじゃねえのか?本当はお前を利用しようとしてるのかもな?タブーが俺にしたように。」
夢子「そんな事ない。皆の目を見れば分かる。真っ直ぐなあの目を見れば。」
ダーク「世の中腐りきってる。誰を信じればいいのかなんて誰にも分からないだろ。」
夢子「貴方にもきっと信用できる人が現れる…その人と一緒に過ごして温もりを貰えばいい。
      その時が来ればきっと貴方にも光の温かさが理解出来る…。」
ダーク「…。」
夢子「もうスープ出来たかな?食べましょう!」
ダーク「お前ってほんと馬鹿みたいに優しいんだな。」
夢子「え?」
ダーク「さてと、食うか。お前も冷めないうちに食え。」
ダークはスープを小屋の中のテーブルにあった皿へと入れ夢子へ渡す。
そんなダークを見て夢子は微笑んで言った。

夢子「ありがとうー・・・。」

ダーク「……人に…礼を言われたのは…初めてだ…。」
ダークの表情も何処か朗らかのように見えた。
この日二人は温かい食事を摂って連日の疲れを癒すかのように深い眠りへと付いた。

     

【いいね!!】

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