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第38章【拠点探し】



木々が枯れ果てた森の中で夢子とダークは歩いていた。
お互いの距離は遠い。
白い霧は尚更濃くなり視界を奪う。
しばらくの間2人は会話もなく黙り込んでいた。
そんな沈黙を破ったのはダークだった。

ダーク「ここは…亜空間の一部だ。」
夢子「…わかるの?」
ダーク「タブー様…いや、アイツは様々な景色の亜空間を自由自在に作る能力がある。
    きっとここもアイツが作ったお遊びの空間だ。」
夢子「…出る方法は?」
ダーク「…それが知れてたらこんな苦労はしてないだろ。」
夢子「…そう…。」

しばらく進むと大きな大木がそびえ立っている場所へとたどり着いた。
すぐ側には小さな池がある。

夢子「ここで一先ず休憩しましょう。」
夢子は池へ近づくとその透明な水をすくって喉を潤した。
ダークはそんな夢子を見ると首をかしげた。
ダーク「…なぜ俺についてくる…?」
夢子「…貴方がついてきてるんでしょ?」
ダーク「…。」
夢子「…。」

再び沈黙が二人を過る。
今度は夢子が沈黙を破った。

夢子「…これから貴方はどうするの…?」
ダーク「決まってるだろ。アイツを…タブーを殺す。」
夢子「でも強いんでしょ?…貴方一人でどうにかなる相手なの?」
ダーク「やってみないと解らないだろ。俺は…絶対アイツだけは許さない。」
拳を握り締めるダークの目には殺意しか宿ってなかった。
夢子はそんなダークを見て少し考え、そしてまた口を開いた。



夢子「ねえ、一時休戦して私と手を組まない?」



ダーク「は?」
夢子の予想外な提案を聞きダークは唖然とする。
夢子「悪くない話だと思うの。今は私も貴方の力が必要だし、貴方も私の力があっても損はしないはずよ。」
ダーク「…。」
夢子「どう?…まあ時間はまだあるし焦らず考えたらいいわ。」
ダークはニヤリといつものように笑うと夢子に返事を返した。
ダーク「…いいだろう。だがそれはアイツを倒すまでだからな。」
夢子「交渉成立ね!じゃあこれからヨロシク、ダーク!」
夢子はダークに手のひらを差し出すがダークはその手を握ろうとはしなかった。
ダーク「言っとくが俺はもう人を信用しない。タブーを倒したら次は時の勇者を倒す。」
夢子「リンクさんは簡単には倒されないわ。」
ダーク「それがお前の言う【信用】か?」
夢子「ええ。そうよ。」
ダーク「…お前には信頼していた人間に裏切られる気持ちは永遠に解りっこないな。」
夢子「共感することはできる。前にも言ったけど…私は貴方を救いたい。
      こんな暗闇に独りで居させたくない。
     光の世界の居心地の良さ…温もりをわかってほしいの。」
ダーク「俺に光の世界にでろと?」
夢子「すぐに慣れる事は出来なくても少しづつ慣れていけばいいわ。」
ダーク「フン…くだらない…。」
夢子「あ…あれ見て!」
夢子は突然向こう側を指さして叫ぶ。
ダークが振り向くと大木のすぐ横に小さな小屋が経っていた。
夢子「…あれは…?行ってみましょう!」
夢子が走り出すとダークはだるそうに夢子の後をついて行った。
小屋は古ぼけており屋根や壁にはいたるところに穴が空いている。
ダーク「俺等みたいにタブーに亜空間へ飛ばされたヤツが作ったのか…。」
夢子「大分前に作られたみたいだけどまだ使えそう…入ってみましょう。」
一歩ずつ慎重に床を歩く。
床はギシギシと音を立てるが何とか歩いても大丈夫そうだ。
夢子「ここを拠点にしましょうよ。水もあるし寒さもしのげそう。後は…」
ダーク「食事か…。」
夢子「そういえば私あのまずいスープ以来何も食べてないっけ…。」
ダーク「…俺が行こう。」
夢子「!!…探してきてくれるの?!」
ダーク「食べないと力もでないだろ。仕方がない。お前はここで大人しくしてろ。」
そう告げるとダークは足早に小屋から出て行った。
夢子「なんだ…意外と優しい所もあるじゃない…。」
夢子が少し安心したその時
胸に下げてあるあのネックレスが紅い光を灯し始めた。






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