32


地下の施設から洋館に戻ってきたニーア達。
空き部屋のベットに疲れて眠ってしまった夢子をニーアがそっと下ろす。

夢子(スーッ…)


夢子は綺麗な顔で眠っていた。


【32】



エミールが部屋を貸してくれた。
と、いうか皆疲労困憊だった。
あんなモノを見て、そして戦った後だ。それは疲労が溜まる。」


エミール「皆さん今日は僕の家に泊って行ってください。
     温かい食事も寝床も準備しますから。」
ニーア「そうだな…最近動きっぱなしで疲れてたし…
    此処はエミールの厚意に甘えるか。」
カイネ「野宿ばっかりだったからな。久々にゆっくり寝れそうだ。
    それに腹も減ってるしな。」
白の書「大飯食らいが…エミール、この屋敷の食料が無くなるぞ。覚悟はいいか?」
エミール「大丈夫です。蓄えなら沢山あるので。
     ‥‥僕、客人を泊めるの、夢だったんです!ウキウキします♪」

先ほどまで泣いていたエミール、今は別人のように元気がある。

白の書「楽しそうで何よりだな‥‥。」

すると部屋の扉が開く。
そこには執事が立っていた。


エミール「ああ!セバスチャン!一体何処に行ってたんですか!?
     折角主が久々に帰ってきたのに留守にしてるだなんて!」
執事「申し訳ございません。買い出しに行ってました。」
ニーア(よかった、事件に巻き込まれた訳じゃなかったんだな。)
エミール「まあいいけど…今日は僕のお友達をこの屋敷に泊めるから…
     丁重に扱ってくださいね。料理もとびきりのをお願いします。」
執事「かしこまりました。」


執事が部屋から去っていく。

エミール「僕たちも各自の部屋に戻りましょうか。」
カイネ「そうだな。」


そういう二人が部屋から出ようとするが…
ニーアが夢子の隣にある椅子に座ったまま動かない。


カイネ「おいニーア。何動こうとしないんだ。」
ニーア「いや、俺はもう少し此処に居たくて…」
カイネ「はァ!?貴様、まさか夢子に変な事しようとしてないだろな!?」
ニーア「ばっ…そんなこと考えてない!…ただ側に居たいだけだ。」
白の書「…本当か?」
ニーア「ェェ…シロまで俺の事そんな風に…!」
白の書「今までしてきたことを振り返るとどうも、だな。」
ニーア「その話はするなー!///」
カイネ「…?何があったか知らんが…変な事するなよ。
    私は腹が減ったから何か食ってくるから。」
エミール「確か貯蔵庫に極上の羊肉あったはずです!
     カットしてステーキにでもしてもらいましょう!」
カイネ「ああ、それ旨そうだな!良いアイディアだ!たらふく食ってやる。フフ…。」




カイネとエミールは食べ物の話をしながら部屋から去って行ってしまった。

残ったのは静かに眠る夢子と
その顔をじっと見つめるニーア。
そして心配そうな様子の白の書だった。


ニーア「夢子があの時治癒魔法掛けてくれなかったら結構危なかったと思う。」
白の書「久々の強敵だったな。慣れの果てだが兵器として実験された者…
    失敗作とは言え、戦闘力攻撃力防御力が並大抵ではなかったな。」
ニーア「人間ってなんで愚かな行為するのかな。
    普通に過ごして幸せ感じられればいいのに
    不幸を自分から作り出すなんて…可笑しいよ。」
白の書「それが人間という醜い生き物なのだ。いつの時代も変わらん。」
ニーア「シロは今までずっと色んな人間見てきたのか?」
白の書「さぁな…我も封印されてたことだし記憶も欠落している。
    だが、人の愚かさは痛いほど良く知っている。」
ニーア「争い何て無くなればいいのに。」
白の書「きっと、この世に人間が1人だけにならない限り無理だろな。」
ニーア「俺、悲しいよ。」





ニーアは眠っている夢子を手をそっと握る。


ニーア「…夢子、綺麗な顔で眠っているな。
    相当精神的に疲労が溜まったんだな。…可哀想に。」
白の書「夢子はよくやったと思うぞ。魔法覚えたてであそこまで動けたのなら‥立派だ。」
ニーア「俺たちと一緒に来て、本当に幸せなのだろうか。」
白の書「ほう…珍しく弱気だな、ニーア。」
ニーア「俺は夢子と一緒に過ごせてとてつもなく嬉しい。
    ずっと一緒に居たいと思ってる。
    …だが、それが夢子にとっては幸せになるのだろうか?」
白の書「疑っておるのか?」
ニーア「そういうわけじゃないけど…これからも危険な旅になると思う。
    そんな場所に夢子を連れて行ってしまっていいのか?」
白の書「それは、夢子本人の気持ち次第だろう。」
ニーア「…俺、本音聞くのが怖い。」
白の書「案外度胸が無いのだな。ニーアらしくない。」
ニーア「俺は…俺は一体どうすればいいんだ…。」



するとニーアが握った夢子の手に力が入る。
ふとニーアが気づくと夢子がベットから起きてニーアの手を両手で包んでいる。

夢子「ニーアさん。」
ニーアは驚き困惑する。

ニーア「…今の話聞いてたか?!」
夢子「すいません、意識が戻って…話し声聞こえたから…全部聞いてました。」
ニーア「・・・。」
白の書「この際ハッキリ本音聞いたらどうだ?」
ニーア「夢子…君は…」



夢子は握っていたニーアの手に頬を当てる。
そして、いつも通り純粋無垢な笑顔で言う。




夢子「私は、ずっとニーアさんの隣に居ます。」




ニーア「夢子…。」




夢子「例え危険な旅でも、私の居場所を、仲間を見つけられた。
      それはニーアさんのおかげです。
      命の恩人でも有り、今の私の大切な‥最愛の人です。
      ニーアさんが私の事、要らなくなったら捨てて貰って構わない…
      だから‥‥ずっと‥‥ずっと一緒に…」

ニーアは夢子を抱きしめた。
夢子はニーアの表情を見なくても涙を流しているのを察した。

ニーア「ありがとう…夢子の言葉…本当に励みになる…
    俺、こう見えてマモノと戦うのは慣れてても…孤独にはどうも弱くてさ…。」
夢子「人は支え合って生きているのですよ。
      皆、一人ぼっちは苦しいですから。」
ニーア「それに君の事、要らないなんて、俺絶対言わないから。
    死んでも言わないから…。」
夢子「私の方こそ、ありがとう、です。」



白の書がここで突っ込みを入れてくる。


白の書「オホン…あ〜そろそろイチャつくの止さないか‥?」

ニーア「あああ、シロ!邪魔するなよー!
   俺は夢子ともっとラブラブしていたい…(ぼそっ)
白の書「春だな…。」
夢子「???」



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