必死に鼻血が溢れ出そうになるのを我慢するニーア。
悶え震える彼を置いて話を進める一向。
まずはやはり夢子の事だ。







【5】









カイネ「…で、夢子は何故あんな平原のど真ん中に一人で居たんだ?
    見たところ武器も持参していないようだが。」
夢子「…覚えてないんです。気が付いたらマモノに囲まれてて…襲われて…
     痛みと共に意識が無くなって、声が聞こえて。
     この声、前からなんとなく聞こえてたんです。
     でも今回ははっきり聞こえて…それがヨナちゃんと名乗る少女でした。」
ニーア「ヨナは…何処に居るんだ!?」
夢子「大きなお城に居るって言ってましたよ。寂しいって繰り返し…。」
ニーア「魔王め…ヨナに悲しい思いさせるなんて…絶対にぶち殺してやる…!」
夢子「ニーアさんは彼らの事が憎いのですね?」
ニーア「当り前だ!あいつ等には心が無い…!」
夢子は悲しそうな顔をして小さい声で呟く。
夢子「本当に、そうかな…。」
ニーア「?」
カイネ「兎に角武器を扱えるようにならないとな。
    …このメンバーに加わるという事は戦わないといけないということだ。
    夢子、武器は扱える物あるか?」
夢子「いいえ…昔は仕えてたかもしれないですが、今は…。」
カイネ「そうか…」
ニーア「夢子に危ない事はなるべくさせたくないな…。」
エミール「じゃあ魔法はどうでしょうか!僕がノウハウ教えますよ〜!」
夢子「じゃあ…エミール君にお願いしようかな?」
エミール「任せてください!戦うのが危ないのなら後方からの回復を推しますよ!
     ニーアさんの事これなら安全に支援できるかと!」
夢子「今の私にぴったりですね!」
ニーア「…夢子、俺の事守ってくれるのか…!?」
夢子「ヨナちゃんとも約束したし、それが今ここに居る理由です。」
ニーア「うう‥‥!」


ニーアは男泣きをする。


白の書「泣いたり血を吹き出したり忙しいな…。
    ニーア、先ほどから申しているがお主情緒不安定すぎるぞ…もう少し冷静に…」
ニーア「…今ならどんなマモノが現れても仕留められる自信がある!」
エミール「わ、なんか今度は急に真顔になった!」
カイネ「はぁ‥‥。本当に大丈夫か?」
エミール「じゃあもう少し傷が癒えたら魔法の使い方指導しますね!
     夢子さんの傷、かなり深かったので外傷は完璧に治せても
     内面的なダメージは少し回復するのに時間かかりますから…。」


ニーア「夢子に傷跡は残らないんだよな!?」


急に声を荒あげるニーア。
少し戸惑って答えるエミール。

エミール「あ…はい。目に見える傷は残りませんよ。僕がバッチリ綺麗に治しましたから!」
ニーア「よかった‥‥傷跡なんか残ったら嫁にいけな…いや、待て、行かなくていい。嫁なんか行かせない。うん。」
エミール「…何か言いました?」
ニーア「ふ…ふふ。ふふふ。」
エミール(…コワッ!ニーアさんコワッ!)
ニーアがブツブツと独り言を言いニヤついている。
白の書「…ニーアの今の脳内は一体どうなっておるのだ。
    今後ずっとこの調子だと思うと恐ろしい事だぞ…・」
エミール「なんかやっぱ変ですよね。シロさんの言った通り毒キノコ食べたのかも?」
カイネ「男と女の事情ってやつだ。お前たちにはきっと一生理解できん。」
白の書「どういう事だ?」
カイネ「さぁな。」
白の書「勿体ぶるでない、説明しろ下着女。」
カイネ「まあ、夢子に危機が及んだら私が身をもって守るがな。」
ニーア「いいや、俺が夢子を守る。
    男が女に守られるなんて…カッコ悪いじゃないか。」
夢子「でも私はニーアさんを支援しますよ?
      約束、ですからね。私約束はちゃんと守る主義なんで。」
ニーア「夢子…そんなに俺の事を…」
白の書「…こやつ何か勘違いし始めたぞ…。」
ニーア「俺今旅をしている中で一番幸せ感じてる。
    今までの辛い事全部忘れられそうだ!!!」
エミール「んー良い事なのか、悪い事なのか…人に寄り切りなのかな。」
カイネ「人は皆忘れられない辛い記憶というモノがあるけどな。」
夢子「…それわかる気がしますよ。なんか私死にかけた時からずっと胸が苦しくて。
     思い出したくない事あるんだなって…。」
エミール「僕も一度は過去を封印してましたから、そういうの良くわかるなぁ。
     思い出には全て思い出すキッカケというものがありますから、
     いつかは全て思いだすかもしれませんね。
     例えそれが…最も辛い思い出ばかりで今より辛くなるかもしれませんが‥‥。」


するとエミールの意味有りな言葉をかき消すように周りが揺れる。





ドスンッ・・・・・・!!!




突然地響きが鳴り響く。
辺りを見回すニーア達。
音のする方を見ると崖にへばり付くトカゲの様な形をした巨大なマモノがいた。
その見た目はとてもグロテスクで気持ち悪くこちらに対し強い殺意が感じられる。
口から長い舌をチロチロと出す。
まるで獲物を品定めするように。

カイネ「出たな…お前を殺すのは私だ。何度も逃げやがって…今度こそ息の根止めてやる!」
カイネは両腕に剣を握る。
夢子「私は…一体どうすれば…。」
エミール「まだ戦っちゃダメですよ!傷も治したばかりだし‥‥戦えない!」
ニーア「わかった、俺がなんとかしよう。」
カイネ「助かる、ニー‥‥





    ん‥‥?」


ニーアは夢子をお姫様抱っこしてその場から走り去った。


カイネが切れる。




カイネ「おま…!戦え!!!!」

ニーア「だって!夢子に被弾したら危ないだろ!俺が責任もって安全な場所に隠すから!」


ニーアは物凄い速さで走り去った。


カイネ「はぁ‥‥」
エミール「カイネさん、どうしましょうか?二人でこのマモノ討伐出来るでしょうか…。」
カイネ「…やるしかない。」
エミール「それにしてもニーアさん、あんなに足速かったんですね!僕知りませんでした!
     …やっぱりかっこいいなぁ!」
カイネ「・・・はぁ。行くぞ、エミール。この馬鹿でかいトカゲの心臓止めるぞ。」





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