【2】




夢子はまた暗い場所に一人でいた。
どうせ暗いのなら目を開かなくてもいい。
夢子は意識を漂わせていた。

すると今度は一人のオンナノコ、だろうか。
声がする。



オンナノコ「お願い‥‥お兄ちゃんを助けて…。」
夢子「誰?」
オンナノコ「私はヨナ。」
夢子「貴女は何処にいるの?何故私の名前を…」
ヨナ「今は夢子お姉ちゃんの夢の中だケド、本当は大きな大きなお城にいるよ。
      …私、ずっと寂しい。早くおうちに帰りたい。」
夢子「…。」
ヨナ「また、昔みたいに笑いたい。お料理したりお花植えたり本を読んだり。
   …平和に暮らしたい。」
夢子「…私みたいな死にぞこないが人を助けるだなんて、出来るかな。」
ヨナ「大丈夫、私はわかるよ。夢子お姉ちゃんは強い人。
   だからこうしてお話も出来る。私と似ているから。だから・・・」
夢子「わかった。残り短い命だから…人の役に立てれれば私はそれでいいかもしれない。
      誰かの役に立てる存在に私はずっとなりたかったんだ。
      ありがとう、ヨナちゃん。」
ヨナ「無理はしないでね…私は誰かが不幸になることなんて願ってないから…
またあとで、お話しようね。今度は楽しいお話を、いっぱい・・・」










夢子は再び目を覚ます。
今度は先ほどより意識も痛みもハッキリしてる。




夢子「痛っ‥‥!」
反射的に脇腹を抑える夢子。
しかし、先ほどの様に手のひらは真っ赤に染まっていない。



夢子「包帯…?」



夢子は思いだした。
草原でマモノに襲われ致命傷を負った事。
そして、助けられた。

夢子「・・・。」

夢子は辺りを見回す。
ここは小さいテント小屋のようだ。
壁には鮮やかなクレヨンで描かれた不格好な絵が飾られている。
生活感は、有る。
見た感じ女性がいた形跡がある。
そして夢子は気配に気づいた。



???「気が付いたか?」


夢子は声のする方にゆっくり顔を向ける。
そこにはネグリジェと下着の間のような恰好をしている女性が立っていた。
でもあまり驚かなかった。
夢子自身もなかなか露出の高い格好をしているから。人の事など驚かない。

夢子「…貴女が手当てを?」
カイネ「私はカイネ。…包帯を巻くのは慣れてるからな。
    最も回復の魔法を使ってくれたのはエミールだがな。」
夢子「エミール?」



???「カイネさーん!」


もう一人の声がする。
カイネとは別の声。
再び声のする方を見るとそこには丸い顔をした不気味な笑みを浮かべる何かがフワフワ浮いている。
???「この小屋に近づこうとしていたマモノは全て排除しましたよ!
   あ、貴女も目覚めたんですね!出血量多かったから心配してたんですよー。
  よかったー!これでひと安心ですね!」
カイネ「っていうことだ。こいつがエミール。お前の傷を魔法で治したんだ。」
夢子「カイネさんにエミール君…本当にありがとう!」
カイネ「あ、あともう一人と1冊いるがな。」
夢子「もう一人と1冊?」
エミール「ニーアさんなら夢子さんが眠ったのを確認して今崖の村の道具屋に行きましたよ。」
カイネ「あいつ、戦いはそっちのけでお前の事ずっと見てたんだ。
    …妹の事ばかり考えてるあいつが…珍しいもんだ。」
夢子「あ、お二人のお名前聞いたのに私の名前言ってなかった…
      私は夢子。」
カイネ「見たところお前も私と似たような気配を感じるんだが…。
    マモノと似ている何かが…まさかマモノ憑きなのか?」
夢子「いえ、私はマモノ憑きではないんですが…似たような感じの‥‥存在です。」
エミール「???…夢子さんって変わった人なんですね!」
カイネ「私とお前には言われたくないセリフだろうな…。」
夢子「アハハ‥‥!って、痛たたた…。」
エミール「ああ!カイネさんが笑わすから夢子さん苦しんでますよ!」
カイネ「そういうつもりじゃなかったんだがな…すまない。」




???「どこぞの下着女から聞き慣れない謝罪発言を聞いてしまったわ…
  これは世も末期、耳が腐れる。」


カイネとエミールとは違う声がする。
カイネが暴言を吐く。

カイネ「お前の様な古本に耳などあるわけないだろ。…破るぞ?」
エミール「また痴話喧嘩ですかぁ…ほんとはふたりとても仲がいいのでは?」
カイネ「は?」
???「非現実的だな。」


カイネと喧嘩をしているのは…【本】だった。
本はプカプカ浮いて言葉を話す。
そして・・・
本の隣には青年が立っていた。
青年は夢子を見るなり持っているアイテム全て地面にぶちまけ夢子に駆け寄る。




青年「ヨナ!!!」



そして突然夢子を抱きしめる。
青年「ヨナ…無事だったんだな‥‥良かった…本当に…ほんとに…」

夢子「ちょ、ちょっと、待って!何か勘違いしてませんか!?」
青年「だってヨナだろ?声も髪色も優しい瞳も…全てヨナだ‥‥!」
カイネ「ニーア、少し落ち着け。」
どうやら青年の名前は【ニーア】らしい。
エミール「シロさんも止めてください!」
本の名前は【シロ】というらしい。
夢子はまわりの人物の名前を覚えたのは良いが…
このへばりついた青年、ニーアをどうにかしたい。
って、初対面なのにめっちゃ抱き着いてくる。
胸に顔埋めてるし…何この人。やばい。


夢子「いい加減離れてくださいよ……!カイネさん〜この人どうにかしてください!」
カイネ「ああ、では私の得意分野を見せてやろう。」



そういうと深呼吸をするカイネ。
全意識を集中させ、そしてー・・・・・









カイネ「暴力で解決!!!」




ドカッ!!!




カイネのキックはニーアのお腹に直撃した。
ニーアは高く宙に舞う。



【いいね!!】


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