62

学校に行く前早朝の夢子。
毎日日課のわたあめの散歩をする。

今日は何故かピットもついてきた。
ふたりで他愛の無い会話をしながらほのぼのとした時間を過ごす。



ここで、まさかあんな事態になるとは
この時夢子もピットも想像していなかった。





【62=生意気クソガキ】



夢子「こうやって散歩するの久々だね!!」
ピット「夢子、色々大変だったもんねー。
    もう首は痛くない?大丈夫?」
夢子「首?」
ピット「ほら、この間ずっと首に湿布貼ってたじゃん!」
夢子「ああ、あれね…(あのキスマーク事件の事か…)」
ピット「夢子、無茶しちゃいけないよ?女の子なんだから!」
夢子「あはは…じゃあピット君に頼ろうかな?」
ピット「任せてよ!僕がどんな悪い奴もヤッツケルから!!」
夢子「ウフフ、頼もしいな!」
ピット「そういえば…パルテナ様元気かなー…?もう随分長い事会ってないや。」
夢子「幻双国に居たとき少し謁見したんだよね?」
ピット「謁見っていうか、マスターに頼んでテレパシー映像で会話させてもらっただけだけどね。
    あの時パルテナ様、最後に何か言いかけてたんだよね。」
夢子「そうなの?」
ピット「うーん、電波悪くて映像乱れたけど…《●●●を…ヨロシク》とかなんとか。」
夢子「何のことだったんだろね?」
ピット「よくわかんないけど、何か…僕…嫌な予感して。」
夢子「気のせいだと思うよ、ほら、今日だって平和だもの。」
ピット「そうだといいけど…」



夢子とピットとわたあめは運動公園についた。
水道のある場所でわたあめに水を飲ませる。
わたあめは美味しそうにぺろぺろと飲んでいる。


ピット「こんな朝早いのに運動してる人多いね?」
夢子「最近皆健康志向になってきてるみたいだからね…それでかな。」
ピット「僕も良くお菓子食べてたらルフレに怒られるなぁ。あの人もそーゆー感じかな。」
夢子「まあルフレだから…」
ピット「でも仕方ないよね?日本のお菓子美味しすぎるんだもん!」
夢子「まあでも食べ過ぎは良くないね。肥満とか虫歯とかいろんな病気あるし。」
ピット「僕はどっちでもないよ?」
夢子「でも気を付けていないと、病気ってサイレントっていうからね。」
ピット「じゃあこれからは適度にお菓子食べるね!」
夢子「若いからどうとでもなるかもだけど…って、ピット君結局何歳なの?」
ピット「おしえなーい★」



すると、その時だった。
水を飲み終わったわたあめが突然走り出した。
夢子の手からリードが外れる。

わたあめ「ワンワン!!!」
夢子「あ、わたあめ!?ああ、リードが!!??」

わたあめはどんどん遠くへと遠ざかる。
ピットが慌てて後を走って追いかける。

ピット「コラー!わたあめー!!あーもう!!夢子、僕が追いかけるからここで待ってて!」
夢子「う、うん。」


ピットは走ってわたあめを追いかけて行った。
あの脚の速さなら何れ追いつくだろう。


夢子は近くにあった木の下に腰かけた。

夢子「ふう…。」

木々の葉が風に揺られて音が鳴る。
太陽の光が葉に受け止められ影を作る。
夢子は座りながら木の根の近くに手を置いた、その時だった。


ガコッ…

何かが彼女の手に当る。
それは銀色の水筒だった。

夢子「…?忘れ物かな?」

夢子は水筒を手に取る。
ー…中身が入ってる。


夢子「うーん、名前みたいなの書かれてるけど、字が汚くて読めない‥‥小さい子の忘れ物かな。」

夢子は水筒をそっと元あった位置に戻した。

夢子「拾いに来るだろうしそのままにしとこ。」


夢子は公園の奥、わたあめとピットが走って行った先を見る。
運動をしている他人がチラチラいるだけでひとりと一匹の姿は見えない。


夢子「ちゃんと捕まえられたかな…あんまり時間も無いんだけどな。」


するとその時だった。
夢子の背後から突然声が聞こえた。


???「・・・オイ。」

夢子はびっくりして振り返る。

夢子「え?!はいィ!?」

???「お前…此処で何してんの?」

夢子「何って…座ってるだけですけど。」

突然タメ口で話しかけてくるぶっきら棒なこの人物。
夢子は不意打ちされて戸惑う。

???「…それ、取って。」

少年は夢子の横の水筒を指さす。

夢子「あ、ああ…これ貴方のだったの…」

???「いいから早く。」

夢子は少年にせかされて水筒を焦りながら渡した。
その少年は乱暴に水筒を夢子から奪い取った。

???「…まさか、飲んだりしてないよね?」
夢子「ちょっと触ったけど…」
???「はぁー!?うーわ、最悪。早く洗浄しなきゃ。」

夢子(な、何この子…すっごい生意気…!!)

顔をゆがめる夢子。少年は自分の服で水筒を拭いていた。
初対面でこの態度は何なのだろうか。

でも、次の瞬間
その少年はジッと夢子を見た。
そして驚くことを口にする。


???「お前ってさ…もしかして夢子??」

少年は彼女の名前を何故か知っていた。
驚く夢子。

夢子「なんで私の名前を…!?」

???「ふーん‥‥やっぱそうか。直ぐ分かったよ。チビで緑の義眼にウシ乳って聞いてたし。」
夢子「はぁ!?なんですって!?」
???「それに」



少年は笑顔を歪ませて夢子にこう言い放った。




???「思ったよりブスじゃん。」


夢子「…はぁ!?!?」



初対面で何て奴なんだ。
夢子は言葉を失う。
しかし、夢子の事をブス呼ばわりする人間は中々珍しい。
どちらかというと絶賛の美女なのだが?
この少年の目にはどうやらブスに移ってるらしい。


夢子(こ…コイツ…言わせておけば好き勝手言って…!!)

???「まあ、また会うだろうし。気長にいこーぜ、ブス。じゃあねー。」


少年は去り際にも彼女をディスって水筒を持って何処かへ去ってしまった。

夢子は怒りで震えていた。

夢子(ほんと何なの!?あんな生意気なショタ始めてみた…)

と、そこにわたあめを連れたピットが帰ってきた。

ピット「夢子、ただいま!わたあめ凄く遠くまで逃げて大変だったよー?
    ってあれ…どうしたの?何かあった?」
夢子「ピット君…」

やっぱりピット君の天使の笑顔は癒される。
さっきの生意気ショタと大違い‥‥


…ん?大違い?


夢子はピットを見て考える。

夢子「何か…似てる。」
ピット「ん?」
夢子「は、いけない!!もうこんな時間!!ピット君、急いで家に戻らないと!!
        学校遅刻しちゃう!!!」
ピット「わ、ほんとだ!!早く帰ろ!!??」

わたあめ「くぅん?」



ふたりと一匹は駆け出す。
今日もスクールライフが始まる。
いつも通りの‥‥はずだった?




【いいね!!】


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