60

夢子は帰ってきたベレトの手に握られている容器を見る。
赤い容器に液体が入っているように見える。


【60=林檎の香り】※ちょいベレト夢



夢子「それは何ですか?」
ベレト「…ああ、これは前に女子生徒から没収した除光液だ。」
夢子「何で除光液を?」
ベレト「油性マジックのインクは大体これで落ちる。元々爪に使うから肌にも優しい。
    時間もまだ半日も経っていないしな。…見せてみろ。直ぐに落とせるはずだ。」

夢子は椅子に座った。
アルフレの描いたマジックのマークにベレトは除光液を夢子の項に垂らす。

夢子「きゃっ…凄く冷たいっ!!」
ベレト「少しの間だ、我慢しろ。」

暫く項をコットンで擦る。
夢子はくすぐったくて笑っている。

夢子「この除光液、林檎のニオイがする…!」
ベレト「俺はこの香り…甘くてあまり好きではない。」
夢子「先生って香水好きなイメージがあるなぁ。前も車の中良い匂いしたし。」
ベレト「社交的な場面で使う事があるからな。それなりに揃えてはいる。」
夢子「あはは、見た目通りですね?」
ベレト「…あまり外見ばかりで人を判断するのは良くないぞ。」
夢子「でもベレト先生はモテモテですよ?女子生徒の声が凄いもん。」
ベレト「…この世界の人間は見た目で物事を決める事が多い。
    俺が教師ではなくクレイジーの様な反グレとかだったらどうするんだ?って思う事が度々ある。」
夢子「それでも本気になったらついて行っちゃうんじゃないですかね?恋ってそんなもんですよ。」
ベレト「…。」
夢子「オンナノコが本気で恋したら無敵ですよ?まさにスマブラで言うスター状態!…なんちゃって。」
ベレト「確かに…そうなのかもしれないな。さあ、マジックの汚れ落ちたぞ。‥‥ん?」
夢子「ありがとうございます、先生。」

ベレト「・・・。」

夢子「…どうかしましたか?」

突然ベレトが黙った。真顔が怖い。
夢子は顔色を伺う。

夢子「あの…せんせ?」


ベレトは静かに夢子に問いかけた。
目つきが鋭く少し声にドスが入ってる。


ベレト「これは…一体なんだ…??」


夢子は少し考えて、考えて、考えて思い出した。


夢子(そういえば、マジックのインクの下にはルフレがつけたキスm…)


夢子の顔が再び赤くなる。
そしてわかりやすくパニックを起こす。

夢子「ヒイイイ!!!ち、ちがうんです!これはその…歩いてたら石が飛んできて当たってそれで…」
ベレト「大人を揶揄うんじゃない。‥察することは出来る。」
夢子「はい…ごめんなさい…。」
ベレト「まあ、ルフレとお前が付き合ってるのは俺も知っているが。」
夢子「付き合ってる…のかなぁ。何だか成り行きでここまで話進んじゃったけど…。」
ベレト「この他にルフレに酷い事されたりしていないか?」
夢子「うーん、酷い事はされてないですけど、最近ちょっとだけ意地悪?かな。」
ベレト「そうか。耐えがたい思いをしたのならば直ぐに言ってくれ。」
夢子「何か、先生って優しいですよね。」
ベレト「…。」
夢子「剣士男子たちは皮肉言ってますけど私は先生の事大好きですよ!
        今日だって魔球に当らない様に私の事庇ってくれたし。」





夢子『さっきは助けてくれてありがと、ベレト先生!!!!』


ベレト「…!!!」

夢子はニッコリと笑った。
保健室の開いた窓から風が入りカーテンが揺らぎ
夢子の笑顔が正に天使の様に輝いた。
いや、間違いなく彼女は天使。
こんなにも可憐で美しく清らかな女性が他にいるだろうか。
それほど彼女は輝いていた。


ベレトは目を大きく開けた。

そしていつの間にか夢子を抱きしめていた。
ぎゅっと、優しく。


夢子は驚いてあたふたしていた。

夢子「ちょ、せんせ!?どうしたんですか!?」
ベレト「…。」
夢子「先生ってば!///」
ベレト「お前の担任であることを誇りに思いたいが…立場的に行動しにくくてな。」
夢子「ど、どうしたんですか!?」
ベレト「この世界に来た事一時は呪っていたが、今は喜ばしい事だと体感している。
    …ゲームの世界に居たのならばお前にこうして巡り合えなかった。」
夢子「・・・。」
ベレト「ずっと、考えていた。自分の責務を。どうしたらいいかをずっと、ずっと。
    でも分かった気がする。お前のその瞳、キラキラした子犬の様な目。
    俺はもっと近くで見ていたい。そう思ってしまった。」
夢子「先生…」
ベレト「お前が高校を卒業したら、俺はフリーの講師にでもなるつもりだ。」
夢子「先生辞めちゃうの?」
ベレト「…そしたら、教え子と教師という禁断の関係ではなくなるだろ?」
夢子「そ、それって…」


夢子の耳元でベレトが囁く。
超絶甘いイケボで。


ベレト「‥‥最近お前の事が気になって夜も眠れないんだ。」



夢子「ひっ///!?!?」



ベレト「お前が付けたこの林檎の香りならば苦手でも受け入れられそうだ。」

ベレトはゆっくりと夢子をベッドに押し倒す。
夢子は顔が絵に描いたように赤くなる。
まるでやかんの湯気がでそうな勢いで。


夢子「せ、せんせ!!!ここ、学校の保健室!!///」

慌てて抵抗する夢子。
ベレトはいつも通り真顔だ。
しかし発する言葉がいちいちエロく、口説き文句しか言わない。
ベレトは暴走していた。
彼女は恐ろしい灰色の悪魔の理性の引き金を引いてしまった。
ベレトは割とマジだった。

ベレト「…??学校じゃなければいいか?」
夢子「違う違う!!そうじゃない!!」
ベレト「…なんか…もう教師とか…どうでもよくなってきた…。」
夢子「ストップストップ!!!私は生徒ですから!!///」



ベレトの顔が夢子に近づく。
キスをする寸前まであと5センチを切った、その時だった。





キーンコーンカーンコーン・・・・




無情にも4時限目の授業が終わる音が聞こえた。
ベレトの進行が止まる。
そして腕時計を見てため息を付く。

ベレト「はあ…もうこんな時間か。昼だ。俺はこれから会議あるから…
    そろそろ教室に戻って弁当でも食べておけ。」
夢子「ぅぅ…///」


ベレトは夢子から離れて立ち上がるとカーテンを捲って出ていこうとする。
そして去り際に夢子に言葉を投げる。




ベレト「‥‥続きはまた今度。」



夢子「ひっ!?///」





ひとり残された保健室の一角で夢子は顔がずっと赤かった。

夢子「なんでスマブラの住民って皆私に絡んでくるんだろ…。」


夢子は項を触る。
するとそこには新しくガーゼが貼られていた。


夢子「…もしかして、先生って私にキスとかしたかったんじゃなくて
       これ貼ってくれただけかも‥‥しれない…よね?そうだよ、そうに違いない!」

顔を叩く。もう動機が凄くて気分が良いのは悪いのかわからないくらい変だった。
でも必死に自分に言い聞かせる。
誤魔化さないとやっていけないほど同様している夢子はゆっくりベッドから立ち上がり
皆の居る教室へと向かう。


保健室を出ていく際にベレスとすれ違う。

ベレス「あら、夢子ちゃん。もう調子はいいの?何やら顔が赤いけれども…」
夢子「な、何でもないです!!失礼しました!!」


本当に誰が見ても顔が赤い夢子だった。


ベレスはそんな彼女の後姿を見ながら微笑んでた。
…少し悪い顔で。

ベレス(あら、林檎の香り。フフ…ベレト、少しは上手く行ったかしら?)


この教員(姉弟)たちは少々おかしいかもしれない。






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