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第30章【忌まわしい過去】






夢子は長い階段を下りていた。
灯りが無いので部屋の暖炉から持ってきたたいまつを片手に
薄暗い階段を一歩一歩下りる。
今のところダークには見つかっていない。
歩いてる最中兵プリムを見かけたが
どのプリムも夢子を捕らえようとはしてこない。
それどころかなんの表情も変えず、普通に歩いている。
辺りを歩き回って解ったこと。
それはこの建物もスマブラ城のような『城』だという事。
囚われの身である自分を自由にさせているという事。
夢子「私、なめられてるのかな…。私だって戦えるのに…!」
夢子は魔法を使おうと手に力を込めてみた。
が…何もおこらない。
夢子「あれ…?なんで…?!魔法使えない…?!」
何度もやっても何もおこらない。
どうやら魔力が無くなってるようだ。
夢子「そんな…。だからタブーは私を自由にさせているの…?」
魔力が無くなっていることに気づいた夢子は拳を握る。
夢子「馬鹿にされてるのかな…なんだか腹が立つ…!
     とりあえず今は…この階段を下りてみよう…。」






しばらく階段を下りているとひとつの扉の前にたどり着いた。
夢子「階段長かったなぁ…。ここは誰かの部屋…?」
扉は開いていた。
鍵はかかってないようだ。
扉の隙間から中の様子を覗く夢子。
どうやら中には誰もいない様子だ。
静かに扉を開け、夢子はゆっくりと中へと入った。
部屋の中は夢子の部屋のような作り。
最初に目に入ったのが灯を灯したままの机だった。
机に近づくとその机の上には一冊の本があった。
夢子「…これはなんだろう…?」
夢子は本を開いて見る。
そこには羽ペンで書かれたような文章が連なっていた。


x月a日
まただ。
また俺のことを馬鹿にしやがった。



夢子「日記…?」


x月b日
今日は汚水を浴びさせられた。


x月c日
今日は鉄の棒で殴られた。


夢子「酷い…何てことを…」


x月d日
なんで俺ばかりこんな目に合わないといけない?
俺は何もしていない。



x月e日
俺はいつもアイツと比べられる。
姿形が似ているからか?



x月f日
俺だって好きでこんな姿をしている訳じゃない。



x月g日
絶対アイツ等を見返してやる。
こんな世界、俺がぶっ壊してやる!



夢子「これってもしかして…。」
ダーク「てめぇ…何してんだ。」
夢子が振り向くと背後にはそこにはダークが立っていた。
夢子「ダーク…これは貴方の日記…?」
今まで開いていた日記を閉じ、夢子は震えた声でダークに聞いた。
ダーク「…だったら悪いか?それよりもお前なんでこの部屋にいる?」
夢子「歩いていたらここにたどり着いただけよ…。あの…ダーク…。」
ダーク「なんだよ。」
夢子「ここに書いてる事って貴方がされた事なの…?」
ダーク「…。」
夢子「やっぱりそうなのね。」
ダークは夢子から視線をそらし窓を見つめ話し始めた。

ダーク「俺にも、記憶がない。」
夢子「え…!?」

ダーク「気がついたら俺という存在が存在していた。
    俺には時の勇者を殺せという使命だけが与えられていた。
    何度がアイツと戦ったが負けた。
    そして時の勇者が周りにいい事をすればするほど
    俺の存在価値は低くなっていた。
    …アイツとは姿形が似ていても中身は似ても似つかない醜い影だと…。
    人に見られるとその度暴力をふるわれた。」

夢子「そんな…。」
ダーク「何も言っていないのに、何もしていないのに、
    人は俺を見るとすぐに手を出そうとしてくる。
    醜いのは…お前らの方だろ…!?」
夢子「…。」
ダーク「タブー様は俺のこの気持ちを理解してくださった。
    …だから俺は亜空軍に入った。
    そしてこの醜い世界を変えて新世界を作る。」
夢子「貴方はタブーに騙されているのよ…。」
ダーク「…何も知らないくせによくそんな事が言えるな。」
夢子「だってタブーは自分の欲を満たすために大勢の参戦者達を傷つけてきた…。
     中には手玉に取られて利用されていた人もいたって聞いたわ。
     そんな人が貴方のことを理解してるとはとても思えない…。
     貴方も利用されてるのよ…!」
ダーク「うるさい!!!!お前に何が分かる!?」
夢子「ええ、私は貴方の事は今少し知っただけよ?
     でもだからと言って人を傷つけていいはずがない…。
     ダーク、貴方がやってることは今まで貴方に酷いことをしてきた人たちと同じよ?」
ダーク「っ…!」
夢子「冷静に考えて…きっと貴方を救う光が何処かにあるはずだわ。」
ダーク「…光など忌まわしいモノでしかない…。」
夢子「それは貴方が勘違いしてるだけだわ。
     光は懐かしくて温かくてとても居心地のいい場所よ?
     大丈夫、怖がらないで…暗闇にいる貴方にもきっと一筋の光が見える…」
夢子はダークに手を差し出した。
ダークの手は震えていた。
その手を少し伸ばした…
その時だった。
ひとつの聞きなれない低い声がダークの部屋を響き渡った。
???「馴レ合イハ楽シイカネ?」





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