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私はこの日の出来事を一生忘れない。
きっと忘れることは出来ない。
これからもずっと。







第24章〜番外編【降りしきる夜雨と君の涙。3】











ダークと夢子は森の近くを流れる川岸にいた。
夢子「……。」
ダーク「大分静かじゃねーか。王子様といるときはもっと喋るだろ?」
夢子「…貴方と話すことなんてない。」
ダーク「何怒ってんだ?せっかくの俺と二人だけでのデートなのによ。」
夢子「…タブーの所帰るんじゃないの?」
ダークはニヤリと黒い笑を浮かべながらこたえる。
ダーク「ああ…。…まだやり残した事がここにあるからな。」
夢子は言葉を飲み込みながらダークへと聞いた。
夢子「なんで…なんでいつも…私を狙うの?」
その言葉を聞き、呆れた表情でダークは言った。
ダーク「お前まだ記憶戻ってねーのか?」
夢子「思い出そうとしてのも頭が痛いの。
     …貴方…、何か知ってるんでしょ。」
ダーク「…知ってるぜ?」
夢子「…だったら話して。このまま死ぬのは嫌だ。」
ダーク「勘違いするな。お前は殺さない…これも命令だからな。」
夢子「じゃあ欠片の破片って…一体何なの!?私となんの関係があるの?!」
ダーク「…何れは解る事だからな。早かれ遅かれ…教えてやろう。 
   欠片というのは夢子、お前の事だ。」
夢子「!?」(痛いっ…!また頭痛が…っ!)
こみ上げる痛みに耐えながら夢子は話しを聞く。
ダークは止めることなく話し続ける。
ダーク「なんの欠片なのか。数ヶ月前の戦いで失ったタブーさまの翼。
    砕け、破片となり散らばってしまった。その破片が夢子、お前だ。」
夢子「!?」
ダーク「簡単に言えばお前がタブー様の一部だということだ。」
夢子「そ…そんな…私は……!あの時マスターの前でリンクさんが言ってた意味…は…ッ!」
ドサッ・・・
その言葉を聞いた途端痛みに耐え切れなくなった夢子は気を失ってしまった。
ダーク「…人ってホント脆いな。」
その時だった。
馬のひづめの音が近くで鳴り止む。
ダーク「ようやく来たか…待ちくたびれたぜ、時の勇者さんよぉ!」
馬から降りたのはリンクだった。
その手に握るマスターソードに力が入る。
ダーク「おー怖っ。そんなに怒るなよ。夢子をちょっと借りただけだろ?」
リンク「黙れ。夢子さんを開放しろ。さもないと…。」
ダーク「またボロ負けしたいのか?」
リンク「太陽が登る時間はお前の力は俺と同等のはずだ。今は17時…まだ夜じゃない。」
ダーク「ああ、そうか。だったら…」









「「殺し合おうか。」」





リンクとダークは剣を振り上げぶつかり合った。
剣のぶつかり合う音が当たりに響き渡る。
リンクが受け止めるダークの剣は一撃一撃が重い。
ダーク「クククッ…これだよこれ!俺はお前と殺し合うのをいつも夢見てたんだ!」
リンク「俺もお前を消し去りたいとどれだけ願ったことか!」
ダーク「お前に弱みがある限り影の俺は消滅しない…例え肉体が滅びてもな!!!」
リンク「だったら俺はその弱みを切り捨てるまでだ!!!!」


剣と剣が激しくぶつかり合い彈かれる。
互いの力は互角だ。
ダーク「ほお…やるな勇者さん。だがコレはどうかな?」
ダークは足元にある自分の影に手をつける。
影はあたり一面に広がりリンクの足元へ手を伸ばす。
するとリンクの足元は少しづつ沈んでゆく。
リンク「…クッ、足が動かない…!?」
ダーク「俺には影と闇を交差させ操る力がある。お前をこのまま闇の中へ引きずりこんでやる!」
リンク「夢子さん…!!」
ダーク「夢子の顔を見るのもこれで最後かもしれないな。クハハハハッ無様だな時の勇者!…今楽にしてやる!」

その時
白いモノがリンクの目の前を横切った。
そこに立っていたのは夢子の可愛がっていたわたあめだった。
リンク「わたあめ!?ダメだ、ここから離れてください!!!」
わたあめ「グルルルルルッ!」
わたあめをみたダークの手が止まる。
ダーク「なんだ?あの時の糞犬じゃねーか。殺されに来たのか?」
わたあめ「グルルルルルッ!ワンワン!」
ダーク「丁度良い。お前も一緒にあの世へ連れて行ってやろう!」
リンクは威嚇するわたあめを見て息を飲んだ。
リンク「…それは…!」
ダークがわたあめへ近寄った次の瞬間。
わたあめはある物を咥えたままダークへと突進していった。

次の瞬間














ドカアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!















爆発音と爆風が辺りを被った。
砂煙が消え、リンクが目を開けると
そこには膝を付き傷だらけになったダークと倒れているわたあめの姿があった。
リンク「…わたあめ…!!」
ダーク「…チッ…犬の癖に生意気な…!リンク…次は必ずお前を…殺してやる!」
リンク「…待て!!」
ダークは足を引きずりながら闇の歪みへと消えてしまった
ダークが去ったのを確認するとリンクはわたあめの元へと駆け寄った。
わたあめをみると口には手榴弾が銜えられていた。
リンク「わたあめ…まさかダークを追い払うために手榴弾を…!」
わたあめ「クウン……。」
リンク「でもこんなの何処から…。」
ピット「リンク!」
リンクが振り向くとピット達が息を上げて駆け込んできた。
リンク「皆さん!どうして…」
マルス「爆発音がしたからもしかしてと思って駆けつけたんだけど…。」
アイク「そういうわけか…。」
ピット「…このためにスネークの手榴弾盗んだんだね…。」
リンク「スネークさんから…?…わたあめ…。」
夢子「…わたあめ!?」
その声の主は気を失っていたはずの夢子だった。
夢子はすぐにわたあめに駆け寄り抱きかかえる。
夢子「どうしてこんな…。」
リンクは夢子に今までの状況を話した。
その話を聞いた夢子は涙を流しながら強く優しくわたあめを抱きしめた。
夢子「わたあめ…ありがとう…」
わたあめは夢子の顔を見上げ夢子の頬を舐めると目を瞑り動かなくなった。








その日の夜ー…
リンク「…これで良かったんですかね?」
リンクと夢子は城の中庭の木の下にいた。
夢子「みんなの傍に居たいんじゃないかなって思って。」
そこは夢子とわたあめが最初に会った場所。
リンク「わたあめ、幸せだったと思いますよ。」
夢子「…だといいんですけどね。」
そしてリンクと夢子は木でできた十字架を木の下に立てた。
そこにはわたあめが眠っている。
空からはポツポツと雨が降りだしていた。
過ごしてきた時間はあっという間だったが
今でもみんなの心の中で生き続けているだろう。
夢子「わたあめ、お休みなさい。」
夢子の頬を一筋の涙が伝った。


『ワンワン!』


夢子「…今わたあめの鳴き声が聞こえた…!」
リンク「きっと夢子さんに『ありがとう』って言ったんじゃないですかね。」
夢子「…わたあめ…私の方こそありがとう…。」
リンク「さあ、城の中に戻りましょう。風邪、引いちゃいますからね。」
夢子「はい…!」





これからもずっと心の中でー…






【いいね!!】

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